実務家弁護士の法解釈のギモン

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相手方訴訟代理人の忌避(3)

2017-11-22 11:55:34 | 民事訴訟法
 この異議説の理論的問題点に対して、どうやら答えを出してくれたと思われる最高裁の判例が,つい最近登場した。

 どのような形で争われたかというと、被告の訴訟代理人となった当該弁護士が、もともと原告側に賛助していた事案である。原告が破産手続開始決定を受けたことから破産管財人が被告に対して訴えを提起したところ、当該弁護士が被告の訴訟代理人として訴訟代理行為を行ったことから、原告側が異議を述べたというものである。
 直接的な争点としては、裁判所の排除措置に対して、そのことのみを単独で不服申立をすることができるか否かが一つの問題となった。
 論点はいくつかあり、そもそも、相手方の異議とは申立権なのかそれとも単に裁判所の職権発動を促すに過ぎないのか、申立権だとして、裁判所の判断に対してそのことに対する不服申し立てが可能か、可能だとして、誰が不服申し立てできるかが問題となっている事案である。

 判例は、まず、異議は裁判所の裁判を求める申立権だとした。そして、訴訟代理人の訴訟行為を排除する裁判に対しては、自らの訴訟代理人が排除された当事者が民事訴訟法25条5項の類推適用により即時抗告をすることができると判断したのである。しかも、即時抗告は訴訟当事者がなし得るのであって、排除された訴訟代理人自身は、即時抗告することができないという。

 民事訴訟法25条は、裁判官の除斥、忌避の裁判に関する規定であり、5号は、除斥、忌避に理由がないとする決定に対する即時抗告を規定している。判例は、この条文を類推したのである。条文上は理由がない場合の即時抗告しか規定していないが、類推の仕方は、理由があっても訴訟代理人の訴訟行為が排除された側の当事者に即時抗告権を類推するという理解である。
 この、異議権が申立権であることを前提として、民事訴訟法25条5号を類推した点に、異議説の理論が隠されていると思えるのである。

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