実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

会社法改正-社外取締役設置の義務化(2)

2019-12-18 09:47:28 | 会社法
 平成26年改正において、①監査役会設置会社かつ②公開会社かつ③大会社かつ④有価証券報告書提出会社であるという4要件を満たしている会社の場合、社外取締役を設置していない会社では、社外取締役を置くことが相当ではない理由を、定時株主総会で説明しなければならないとした。当然、上場会社はこの4要件を満たす。
 ここでの説明内容は、単に社外取締役を置かなかった理由ではなく、社外取締役を置くよりも置かない方が望ましい理由だと言われていた。そのため、平成26年改正は、社外取締役設置の義務化までには至らなかったものの、社外取締役の設置に強く誘導する規定となっていた。
 そしてまた、東京証券取引所の基準として、上場会社には独立役員の設置を求めていた。これは、社外監査役でもよかったのであるが、平成26年改正と合わせて、上場会社では社外取締役の設置に大きく傾いていったようである。上場会社の多くが社外取締役を設置するようになったとのことである。
 そこで、今回の改正で上記4要件を満たす会社は、社外取締役の設置が義務づけられることになった。

会社法改正ー社外取締役設置の義務化(1)

2019-12-11 09:51:18 | 会社法
 会社法が改正される。平成26年に大きな改正がされたが、それに続く改正である。
 我々弁護士が頻繁に扱う法律の中でも、会社法は時代の変化に敏感であり、改正されることが多い。やむを得ないことなのかもしれないが、改正について行くのが大変である。

 さて、今回の改正の一つの大きな目玉に、取締役等に関する規律の見直しがある。それにもいくつかあり、社会的に関心を集めているのは、社外取締役設置の義務化かもしれない。とは言っても、問題となっている会社は、上場会社をはじめとした有価証券報告書提出会社であり、中小企業には関係がない。
 ただし、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社においては、すでに社外取締役の設置は義務化されており、問題なのは、それ以外の有価証券報告書提出会社である。

譲渡担保権設定に基づく所有権移転登記は虚偽表示(7)

2019-12-04 10:04:46 | 物権法
 なので、少なくとも被担保債権の履行遅滞前の譲渡担保権者による処分は、「所有権-設定者留保権」たる物権の処分の意味しかないと考えるべきであり、設定者は、設定者留保権(使用収益権限、債務完済による所有権の取り戻し)を譲受人に対して主張しうる法的地位があると考えている。したがって、譲渡担保権者が担保物を第三者に売却したとしても、設定者は使用収益権限を失わないし、債務を完済すれば、当該第三者から所有権を取り戻せるのである。
 さらに言えば、債務完済による所有権の取り戻しは、将来に向けた取り戻しではなく、遡及的な取り戻しと解したい。したがって、債務完済時には、譲渡担保権者に移転した所有権移転登記(その後の譲受人)に対してその抹消を求めることになる。しかし、その場合でも、いわゆる「復帰的物権変動」として対抗要件処理や94条2項類推処理をしたり、契約解除による民法5451項但書適用をしたりすることには反対で、あくまでも物権的権利として遡及的に所有権を取り戻すことができる権利であり、それを何人に対して主張しうると考えたい。
 それにもかかわらず、譲渡担保の設定における登記として所有権移転登記は虚偽表示であり、94条2項が適用されうるというのは、設定者に残されている物権的権利である設定者留保権をないがしろにする解釈でしかない。

 私は以上のように考えるのだが、違うのだろうか。