実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

譲渡制限特約付債権の譲渡(5)

2018-06-14 12:45:37 | 民事訴訟法
 解説書を読んで、もう一つ疑問に思うことがあった。
 それは、譲渡制限特約付債権について、悪意又は重過失の譲受人に譲渡した場合で、その後、元の債権者である譲渡人に対する債権者が、譲渡の対象となった債権を差し押さえてきた事例についての説明である。
 その解説書では、債務者は、悪意・重過失の譲受人に対する履行義務はないが、債権自体は確定的に譲受人に移転しているので、その後、元の債権者である譲渡人に対する債権者が譲渡の対象となった債権を差し押さえても、いわゆる空振りと評価されるので、(第三)債務者は差押え後も元の債権者(譲渡人)に対して弁済すれば足りるというのである。そして、どうもこの点は法制審議会の議論でもこれで問題がないという前提であったかの如くである。

 しかし、これにはかなりの違和感を覚える。
 譲渡制限特約付債権の譲渡で、譲受人が悪意・重過失であれば、債務者の立場からすれば、元の債権者である譲渡人を債権者とみなせるからこそ、譲渡人に弁済すればいいということであり、債務者からすれば、債権者は譲渡人なのではないのか。その債権が差し押さえられたのであれば、やはり債権差押えの効力としての弁済禁止効が及びそうに感じるのである。

コメントを投稿