実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

共同相続人間の担保責任(3)

2019-04-24 10:37:34 | 家族法
 しかし、債権法は改正され、担保責任の規定は、すべて契約不適合責任に改められ、契約責任であることが立法的に明確となった。そもそも、「担保責任」という言葉すら、改正後の契約法からは消滅したといってもいい状態である。そうすると、911条の「売主と同じ担保責任」という理屈は、もはや成り立たなそうである。
 ところが、相続法改正においては、911条は改正されないまま残ったようである。従って、改正債権法が施行になっても、911条は「売主と同じ担保責任」のままということである。
 以上の点について、相続法を解説するある本によれば、やはり、911条の文言は文言として、実際には売主の責任とは異なるものだという理解をすることになるようである。なぜなら、冒頭の事例での他の相続人の責任を、単純な債務不履行責任(過失責任であり、賠償の範囲を履行利益の賠償まで認められる)と考えるわけにはいかないからである。

 ただ、そうであれば、911条も改正すべきだったのではないだろうか。相続の場面における独自の担保責任として規定し直すべきだったように思うが、どうなのだろう。

共同相続人間の担保責任(2)

2019-04-17 14:52:59 | 家族法
 債権法改正前までは、一応これで問題はなかった。おそらく、実務は売主の瑕疵担保責任の法的性質について法定責任説で理解していたためである。最高裁の判例は、種類物につき570条が適用されるか否かにつき若干分かりにくい判旨のものがあるが、契約責任説を採用してはいないと理解できると思われる。
 そして、法定責任説では、売主の瑕疵担保責任が法定無過失責任であり、その代わり賠償の範囲は(少なくとも)履行利益には及ばず、一般的には信頼利益の賠償だといわれていた。これを遺産分割時の相続分に応じた責任に当てはめれば、前回のような結論になるだろうと思われる。のである。

共同相続人間の担保責任(1)

2019-04-10 10:04:24 | 家族法
 遺産分割協議が成立したが、遺産分割の結果、甲が相続した1000万円の価値があると思っていた建物に隠れた瑕疵があったために、700万円の価値しかないことが遺産分割成立後半年後に判明した。この場合の遺産分割協議の効力如何。
 この場合、遺産分割協議の錯誤無効が問題となる可能性もゼロではないかもしれないが、基本的には、民法911条で処理される。すなわち、各共同相続人は、他の相続人に対して、売主と同じく、その相続人に応じて担保責任を負うことになる。
 従って、例えば、相続人が子供甲、乙、丙3人で、甲が建物を相続する遺産分割協議が成立したたとすれば、1000万円から700万円を差し引いた300万円につき、相続人3人(甲も含むだろう)が相続分に応じて担保責任を負うので、乙、丙はそれぞれ100万円ずつの担保責任を負うことになるだろう。

株主代表訴訟を提起してみた(7)

2019-04-03 13:17:47 | 会社法
 私が代理人として提起した株主代表訴訟は、1審は敗訴し、2審もつい先日判決の言い渡しがあり、2審も敗訴であった。判示内容は、私が読むには、いずれも決議の内容が著しく不当とはいえないという内容にしか読めない。そして、そのような判示をすることに対して、裁判所は何の疑問も持っていないようである。控訴理由では、法律には「決議の内容」の著しい不当とは書いていないと主張したにもかかわらず、この点について控訴審は何の挨拶もしてくれなかった。

 さて、最高裁はどのように挨拶をしてくれるだろうか。