実務家弁護士の法解釈のギモン

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訴え取り下げ合意の法的性質(6)

2016-12-15 10:24:13 | 民事訴訟法
 判決理由中の判断に訴訟法上の意思表示の擬制を認める点で、かなり論理の飛躍があることは否定しがたいが、登記手続のように、意思表示があったことを他の機関に示すことを目的としておらず、裁判体たる受訴裁判所内で完結する問題であり、義務有りと判断されれば訴え取下げですべてが完結し、その後の訴訟法律関係が積み重なっていくわけでもない。そうだとすれば、受訴裁判所の理由中の判断で義務の存否が判断されるだけで、意思表示の債務名義性にこだわらなくてもいいという理解はできないだろうか。

 あるいは、訴え取り下げの合意が私法行為だと考えるから意思表示の強制執行を問題とせざるを得なくなってしまうというのであれば、訴訟行為だと考えて、強制執行を問題とする必要がないと言う解釈は可能であろうか。
 要は、訴え取り下げ合意が成立した後に原告が任意訴えを取り下げない場合に、それでも受訴裁判所に対して原告が訴え取り下げの意思表示をしたとみなして訴え取り下げによる訴訟終了宣言が可能であるという解釈が採用できればよいのであって、別に私法行為説にこだわる必要はないだろう。ただ、考え方の筋道として、私法行為説を前提に、意思表示をする義務の履行の強制という側面から考えて見た。

 うまく説明が出来ていないかもしれないが、少しは議論を整理してみたつもりである。が、返って混乱する議論となってしまっただろうか。

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