私は、株主総会開催差止仮処分を無視した事例に関する高裁判例に、大いに疑問を持っている。なぜなら、事情は特許侵害行為の差し止めや、重要財産の処分の差し止めとは状況が全く異なるからである。
特許侵害行為差止の仮処分が絵に描いた餅でしかないのは、侵害物をばらまくという事実行為は如何ともしがたいからであり、重要財産の処分差し止めの仮処分が効力を持たないのは、第三者の利益を考慮する必要があるからである。
しかし、株主総会決議の有効性ということであれば、それはもっぱら会社内部の問題である上、もっぱら法的評価の問題だけである。決議無効原因があると言ってしまえば仮処分の実効性は確保できるのであり、万一株主総会決議の有無が取引の安全との関係で問題があるのなら、それは別の法理で処理すべき問題である。そのような場合にまで仮処分の効力を無視してしまってよいのだろうか。
同じことは、新株発行差止の仮処分でも言える。当該仮処分を無視した新株発行は無効原因ありと言ってしまえば、その実効性は確保できるのであり、その意味で特許侵害行為差止の仮処分と事情が違う。
株式引受人にとっては、不測の損害といえる可能性はなくはないが、新株の発行は、物の売買のような純粋な経済取引とは異なり、いったん有効に新株が発行されてしまうと、持株比率の希釈化など、既存株主にとって必ずしも好ましからざる状況が確定してしまうのである。このことは、一般にそれだけでは無効原因とは言われていない、有利発行が疑われる場合(もちろん株主総会を経ていない)に差し止めの仮処分が無視された場合など、問題は顕著であるといえる。たとえ仮の処分でも裁判所の処分を無視した新株の発行である。
以上のように考えると、最高裁判例のとおり、やはり無効原因があるというべきだと思うのである。
特許侵害行為差止の仮処分が絵に描いた餅でしかないのは、侵害物をばらまくという事実行為は如何ともしがたいからであり、重要財産の処分差し止めの仮処分が効力を持たないのは、第三者の利益を考慮する必要があるからである。
しかし、株主総会決議の有効性ということであれば、それはもっぱら会社内部の問題である上、もっぱら法的評価の問題だけである。決議無効原因があると言ってしまえば仮処分の実効性は確保できるのであり、万一株主総会決議の有無が取引の安全との関係で問題があるのなら、それは別の法理で処理すべき問題である。そのような場合にまで仮処分の効力を無視してしまってよいのだろうか。
同じことは、新株発行差止の仮処分でも言える。当該仮処分を無視した新株発行は無効原因ありと言ってしまえば、その実効性は確保できるのであり、その意味で特許侵害行為差止の仮処分と事情が違う。
株式引受人にとっては、不測の損害といえる可能性はなくはないが、新株の発行は、物の売買のような純粋な経済取引とは異なり、いったん有効に新株が発行されてしまうと、持株比率の希釈化など、既存株主にとって必ずしも好ましからざる状況が確定してしまうのである。このことは、一般にそれだけでは無効原因とは言われていない、有利発行が疑われる場合(もちろん株主総会を経ていない)に差し止めの仮処分が無視された場合など、問題は顕著であるといえる。たとえ仮の処分でも裁判所の処分を無視した新株の発行である。
以上のように考えると、最高裁判例のとおり、やはり無効原因があるというべきだと思うのである。