すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

雨宿り

2013-07-28 19:13:20 | エッセイ
何気ない日常の脇道に潜む非日常

 そのとき私は小学2年生だった。学校からの帰り、雨に降られて急ぎ足で家を目指した。首筋に雨がとても冷たい。思わず顔がくしゃくしゃになる。すると通りすがりの電話局(当時)からおじさんが出てきて、声をかけられた。その人は「無理せずここで雨宿りして行け」という。

 おじさんに連れられ、局の中へ入った。その人はとても親切で、ニコニコ笑いながら宿直室へ通された。そこでテレビを見せてくれたり、お茶を出してくれたりした。すごくいい人だ。

「みんな、ここで寝泊りしてるんだ」

 ふだん職員しか入れない特別なゾーンに入れて、私は非日常感をたっぷり味わった。すごくトクした気分になった。だが、やがて別れは訪れる。

 おじさんが出て行きしばらくたったが、戻って来ない。私は不思議に思い、試しに外へ出てみたら雨がやんでいた。「帰ろうか?」と思ったが、やっぱりもうしばらくおじさんを待って挨拶しようと思い直した。で、待ったが、やはり戻って来ない。

 しかたなく私は外へ出て、家路についた。空には鮮やかな虹がかかっていた。

 家に帰り、弾む声で今日の出来事を母に語った。

「なぜだかわからないけれど、すごく申し訳ない気がしたんだ」

 すると母はニコッと笑い、「それはね、お前が大人になったということだよ」と言った。
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