松実ブログ

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夜霧よ今夜もありがとう

2009年12月07日 23時01分29秒 | Weblog

先週の木曜日の午後、オイラはK先生と共に志賀高原へ向かっていた。

目的はスキースノーボード教室の現地調査だ。
参加する生徒が少しでも楽しく有意義に、そして安全に活動できるように、入念な打ち合わせと確認を行うのだ。

目的地へはK先生の運転で快適に。
見慣れた埼玉の景色から群馬県、長野県へと車は快調に進む。

山々がオイラたちを迎えてくれる。
予想に反して雪を被っている山はほとんどなく、まだ木の葉が紅、黄に染まり、終わりかけの紅葉を見ることができた。

そうは言っても季節は冬の始まり。
山に住む動物たちが冬眠の準備をしているのかと考えると心が温かくなった。

目的地付近に近づく頃にはすっかり日が暮れて、夜の闇が山道を囲んだ。
外灯もほとんどなく暗い。

すると突然モヤモヤと真っ白な霧が出てきた。
「お、霧が出てきたな~。」オイラとK先生がそんな話をしていたのも束の間。
すぐに辺りは2メートル前も見えないような状態になった。
ただでさえ山道でクネクネと曲がる道が多く、運転に注意が必要なのに、
この霧は…。

霧で前が見えない山道を走る中、オイラはふとあることを思い出した。

「学校に行けなかった時期はどんな心模様だった?」
「…白い、霧の中にいた感じかな…」
いつか、オイラがある生徒に聞いた時、そう答えた時があった。

この霧は…、もしかしたら学校に行きたくても行けなかった、あの子の心の中なのかもしれない。そんなことをボ~っと思い出していた。


小学校、中学校、または高校で、毎日を一生懸命過ごす。
当たり前の生活の中、学校や家で何かしらの問題やトラブルが起き、学校に足が向かわなくなる。まるでその場で立ち止まってしまうように。
そしてその先の道のりが見えなくなる。


まさに、今オイラたちが霧に包まれて前が見えなくなっているように、この道は確かに先へと続くはずなのに…
前が見えずに怖い。悲しい。不安。しかも辺りは真っ暗だ。


K先生は、少しでも前を照らそうと、ライトを上向きにした。
しかしさっきとほとんど変わらず、ライトは2メートル前までを微かに照らすが、やはり全くと言ってよいほどその先は見えない。

ただの暗い夜道なら、ライトを照らせば見通しはつく。
つまりライトは夜の闇は消すことができても、霧は消せないのだ。

もし、学校に行けずに震えている子の心がそんな状態だとしたら、必要なのはライトではない。つまり「道具」ではなく、それとは違う何かだ。

このブログを読んでいる人、それは何だと思いますか。


オイラの考えでは…
きっと、先の見えない道を一緒に歩いてくれる存在だ。
親であり、友だちや仲間であり、教師のはずだ。つまりライトのような「光」ではなく、温かい「熱」が必要なのだ。

もちろん、一緒に歩くだけでは霧は消えない。
前が見えづらいことに変わりはない。

しかし、「一人じゃないよ」「一緒に歩こう」「ちょっとくらい立ち止まったって平気だぜ」「ちょっと休もうか」など、声をかけながら、熱を伝えながら共に歩く。

先へと続く道が右へ伸びるのか、左へ曲がるのか、それともこのまま真っすぐなのか。すぐには分からないことが多いけれど、
「道は続いているんだ」と信じてゆっくりと前に進む。


いつか、義家氏は、
「光は影を作る。教育とは子どもたちに光を与えるのではなく、熱を伝えることだ。」というようなことを言っていた。
まさにそのとおりだ。


その子の歩くペースがあまりにも遅くて、イライラしたりすることが時にあるかもしれない。
「早くしてよ」「なんでそんなに遅いの」そんな言葉で責めたくなることもあるかもしれない。
それでも、もしもその子が一生懸命なら、それは「サボり」でも「甘え」でもない。今はまだサッサと歩けないのだ。

難しいことに、時に子どもは一時的には「放っておかれること」を望んでいることもあるということ。「今はそっとしておいて」「放っておいてくれよ。付きまとわないでくれよ」など、共に歩くことを嫌がることもあることだ。
その見極めはとても大切です。


オイラたち教師も、そして親も「道は続いている」「晴れない霧はない」「止まない雨はない」そんな気持ちをいつも持っていたい。
そうすれば、まず大人の肩の力が抜けるから。

あのイチロー選手は「確かな一歩の積み重ねでしか、遠くへは行けない。」
今のオイラの心に、強く確かに響く言葉です。


霧の中、車はK先生のドライブテクニックのおかげで無事目的地へと到着。
夜ごはんを食べている時、窓の外には雪がちらついてきた。


「松実のスキー・スノーボード学校に、一人でも多くの生徒が参加してくれますように。」と独り言をつぶやき、その日は眠ったのでした。


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