11月3日、福大祭の最中に講演会をやらせていただきました。
題して 「まさおさまの幸福の倫理学」。
福大祭実行委員会からの御指名、御指定を受けての登壇です。
例によって前日ギリギリに福大祭の喧噪のなかで資料を作っておりました。
あいかわらずパワーポイントもなんもなし。
写真ではマインドマップを1枚手にしながら写っていますが、
これ1枚とあと感想用紙を1枚配付しただけで90分話しきりました。
感想用紙には講演前に書いてもらう1番の問いと、
講演会後に振り返ってもらう2番の問いが書かれています。
1番の問いはこんなふうにしてみました。
「幸福とは何だと思いますか。1人1人違うものなのか、人間として共通の幸福があるのか、
外からやってくるものなのか、自分でつかみ取るものなのか、あなたはどう考えますか。
どんな時にあなたは幸せを感じますか。御自分の考えをお書きください。」
これは皆さんの興味 ・関心を喚起するための問いです。
ただ座って受動的に話を聞いてもらうだけでなく、
あらかじめ自分で主体的に考えてもらうことによって、
講演を聞く前に皆さんのアンテナを立てておいてもらったわけです。
しかし、書いていただいた内容を読んでみると、
もうその問いについて考えただけで十分元が取れてるんじゃないか、
という人も数多くいらっしゃいました。
わざわざ私が話なんかしなくとも、みんなちゃんと幸福とは何かわかっていらっしゃるのですよね。
そのうち余裕があったらこの1番の答えについても、ちょっと分析して報告してみたいと思います。
私が配付したマインドマップはこんな感じです。
(画像をクリックすると拡大されます。)
このブログのことや 「てつがくカフェ@ふくしま」 の宣伝をしたあと、
有名なソクラテスの言葉 「人間にとって重要なのはただ生きることではなくよく生きることである」
から出発して、「よく生きる」 の2種類の解釈から倫理学の二大潮流が発していることを説明し、
カントによる幸福の定義を提示した上で、
そこから導き出される4パターンの 「幸せになる方法」 について説明していきます。
①欲求・欲望が満たされるのを期待する
①-1 他人や運に頼る
①-2 自分が努力する
②自分の状態にみずから満足する
②-1 欲求・欲望をコントロールする
②-2 幸せの感受性を高める
その後は 「受け止め方の問題」 に話を移し、非暴力コミュニケーションの教えも取り入れつつ、
お得意の 「本能の壊れた動物」 の話から 「ありがたい話」 を簡単にしていきます。
そうやって自分が幸福になるにはどうしたらいいかの話を一通り終えてから、
最後に自分の幸せを人に分け与えてあげる 「ノーブレス・オブリージュ」 の話をしてフィニッシュです。
質問時間を5分くらい残して講演は切り上げましたが、質問なんて出ないだろうと思っていたところ、
けっこう4名くらいの方からそれぞれとてもいい質問が出されて、
質疑応答の時間も含めて私としてはたいへん楽しく話させていただきました。
感想用紙は49枚回収できました。
講演会の途中で中座される方もけっこういらっしゃったので、
(福大祭をやってる最中ですから、90分も拘束されるのは皆さん困るでしょう)
聴衆は全部で50人以上はいたのではないでしょうか。
いつものように感想用紙の2番では満足度を5点満点で採点してもらった上で、
印象に残ったことや学びが深まったことなどを書いていただきました。
集計したところ満足度は4.62。
おそらく最後まで聞いてくださった方だけの数値でしょうからちょっと高めに出ていると思いますが、
そこそこいい評価をいただけたのではないでしょうか。
皆さんの感想をいくつか紹介していきましょう。
「快楽主義と道徳主義の生き方に関心をもった。今自分が置かれている立場がとても幸せな状況である事が分かった。」
「白馬に乗った王子様が現れないと聞いてショックでした。でも今回の講演を聞いて、自分で努力すれば、自ら幸せをつかみ取れるし、外からも幸せがまいこんでくるのかな、と思いました。私はめんどくさがりなのでものすごい努力をして、ものすごい幸福を得るのは難しいと思うので、身近な小さなことから努力して、自分なりの ”幸福” を見つけたいなと思いました。」
「幸せは待つものではなく、自分の努力によってつかみにいくものだと思いました。小さな幸せから大きな幸せまで様々に度合いはあるけれど、求めすぎないことを大切にしていきたいと思いました。」
「ヤクルトスワローズの話おもしろかったです。東京音頭みてて楽しそうだし、やってる側の人たちも楽しくやっているのだと思いました。幸せか不幸せかはものの見方によってかわってくるのだと思いました。」
「面白かったです。やっぱり、ありがたいとか、何度も思い出すことが大事ですね。忘れちゃうので…。感謝できる人でありたいと思います。ありがとうございました。」
「『幸福は感じられた人の勝ち』 という言葉を聞いて、なんでこんな不幸なんだろう…と考えるのをやめて、前向きに生きようと思いました。」
「これまで、自分で幸福を感じるためには、『①-2しかない』 というか、『自分でやるしかないんだ』 と思っていました。社会人になって、どうしても①-2でやることがつらい時があると感じていました。②-1、②-2のような考えにも目をむけていく時期なんだなと思いました。『生物学的に』 という言葉が何度か出てきましたが、つくられた (つくりこまれた) 『文化』 の中で、そういう意識が少なくなってきたように思いました。もっとゆるやかに考えてみようと思います。あとは自分の問題と思って、-0.5です。」(満足度4.5点)
「今日の講演を聞いて、幸せについてあらためて考えさせられました。公演中に出てきた 『言葉のギフト』 という言葉にとても共感しました。やはり幸せというのは、誰かに幸せを与えた時に感じられるのだと思いました。」
「人の幸せ (幸福) は受け止め方の問題であり、幸福感というのは無限大である、ということにとても関心をもちました。そしてことばはある一方で銃弾であり、一方で贈り物であるということで、私自身今までそのように思いながら 『ことば』 を使ったことが無かったので、人のことを幸せにするためにもことばを ”贈り物” として使いたいと思いました。身近にあることを当たり前だと思わず、有り難いことだと感じ、幸せなことだと思えるようになりました。講演ありがとうございました。」
「小野原先生の声がとても聞きやすく良かったです。久々の講義で、とても新鮮で楽しめました。幸せは自分の感受性次第という話が印象に残り、『人が人にしてくれることであたり前のことは何もない』 という話を聞いて、日頃自分は他者に対し 『やってくれてあたり前』 と考えていることの多さにおどろきました。」(卒業して十年生)
「有り難い、当たり前ではないの話の例えで (夫婦間の役割分割の例えで)、2人で決めたルールを破るとカチンとくる。←これは私です。『有り難い』 と思うとか、よくいろいろな本に出てくるので、分かってるつもりなのですが、できない。本当に難しい よくごはんを残すと、『世界には食べれない人がいっぱい…』 とか親に言われましたが、『じゃあこんなに作らないでよ』、『じゃあ、食べれない人にあげればいいじゃん』 っと思ってしまう。小学校時代からあんまり変わってないじゃーんとちょっとスネてしまいそうです。」
「とても興味深い内容で、新しい価値観が身についた気がします。特に幸せになる方法のところの話はすばらしく、②の考え方にはとても同意できるな、と思いました。おもしろい話も多く、聞いてよかったと思います。考え方1つでたくさんのことが変わり、自分の受け止め方もとても変わるのだな、と思いました。世界を明るく考えるためには自分の考えを改めることが必要なのだな、とも思いました。私も今日聞いたことをこれからに活かしていきたいと思います。」
「今日の講演を聞いて、食べ物、住まい、お金に困ることなく暮らしていられることが幸せな事なんだと思うことができました。」
「この講演会には、幸せはどういうものであるのかを論理的に考えたいと思い来たので、その答えが知ることができたので目的を果たせた。他人を喜ばせることは自己満足なわけではなく、自分も幸せにするということを知り、もやもやが晴れた。」
「幸福に値するように生きよというカントの言葉は納得しました。世界が100人の村であったらという本を読むと自分の幸せというものを感じられると思います。しかし現実には感じられないのが残念ですよね。」
「幸福とは幸福感であるということにとても納得しました。質問でいくつかでてきましたが、幸せの感受性を高めるために、欲望・欲求をコントロールして小さくするのは、あきらめるということではないということが分かりました。本日はありがとうございました。」
「幸福について、自分の意識を改めて考え直せた。自分の思っていた幸福感を再認識できた。いろんな方にこの様な講演を聞いて欲しいと思いました。こんな風に学べる場所で勉強が出来るのをうらやましくも思う。」(福大1年生の母)
皆さん、学祭で盛り上がっているなか、しかもいい天気だというのに、
こんな辛気くさい講演会に足を運んでくださり、本当に有り難うございました。
特に最後までお聞きくださったり、質問までしていただいた方々には、
私の講演のために長い時間を割いていただいたことを心より感謝申し上げます。
また、私を講演会に招き、いろいろとご準備してくれた実行委員会の皆さまにも感謝申し上げます。
あの90分間、私は本当に幸せでした。
皆さまもこれからずーっと幸せな日々を過ごされますよう心からお祈り申し上げます。
そして私が先生の真似をしようなんぞ何百年早いか分かりませんが…
私も価値ある問いをしたいです。ただ、評価を聞くのは、恐ろしいので絶対真似出来ませんが…
高校生相手の講演がんばってください。
私の真似をする必要はないので、自分の直観を信じましょう!
これからもそういう機会をもつつもりなら、評価をしてもらい、
感想も書いてもらうといいと思いますよ。