新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

6月26日 その2 アメリカの家経営者たちは猛烈に働く

2021-06-26 15:45:41 | コラム
チャーリー「祝祭日ならスタッフ・ミーティングをやろう」と言った:

我がW社の嘗ての#2、チャーリーは極めて猛烈に働く人だったとは昨日述べた。そこで、チャーリーについては色々と思い出した事があったので、あらためて回顧してみよう。因みに、彼はハーバードのLaw school出身で、木材部門を統括する上席副社長であると同時に、実質的にCEOに次ぐ#2であると衆目が認めていた。なお、私は紙パルプ部門の所属だったので、彼の配下にはいなかった。

*祝祭日にスタッフ・ミーティングを招集:
1980年代になってからだったか、チャーリーが彼の下で製材品とチップを担当する彼の信任厚い切れ者と言われていたマネージャーと共に、東京にやって来たときのことだった。超多忙なスケジュールを消化したチャーリーがアメリカに戻った後に、私は本部に出張した。その時に空港で同じ便で帰国する切れ者と出会った。私には当人が全く意識していない特技(と言って良いのかが解らないが)があって「何で、あんたにこんな際どいことを喋ってしまうのだろうか」と、多くの人に不思議がられた「特別な情報を聞き出してしまうこと」が無意識に出来るのだった。

その時の、この切れ者のドン(Don)とシアトルまでの8時間の半分以上もの間語り合って、色々とチャーリーに関わる興味深い物凄い働きぶりと、部下に対しても苛烈な要望を突きつける話を語らせてしまったのだった。この出張の際は、チャーリーたちは東南アジアから香港を経由してきたのだが、日程に不手際で東京に夕方に着いた翌日が祝祭日だったのだそうだ。チャーリーとの強行スケジュールでの行動に疲れ切っていたドンは、この東京側のミスを香港で知って「有り難い。東京で1日休める」と密かに来して、チャーリーに報告したそうだ。

すると、チャーリーは顔色一つ変えずに「それは良い。それならば直ちに東京事務所にその休日にはスタッフ・ミーティングを開催すると指令しろ。当日はまる1日誰にも邪魔されずに会議が出来る」と言ったのだそうだ。ドンは「『何と言う無慈悲なことを言うのか』と心中で嘆いたが、口から出たのが『チャーリー。それは素晴らしいアイデアです。直ちにその旨を電話します』だったのには、我ながら驚いた」と語ってくれた。

こういう調子でドンが内輪話を聞かせてくれたのだったが、シアトルまで4時間を切る頃には「ここからは、今回の出張報告を纏めなければならないので失礼する。チャーリーは私が帰国した当日には彼のデスクの上にタイプアウトされた出張報告を置いておくのが決まりになっているのだから」と言って、当時のことで手書きで原稿を書き始めた。勿論、チャーリーの出張報告も彼の秘書の手に渡っているはずなのだそうだ。彼は言しみじみと「君たちはチャーリーの指揮下にいないのが羨ましいのだ」と言った。

*チャーリーは言った「それは多くの有能な者が生まれた年だ」と:
我々東京事務所の者たちは「あの頭が禿かかっている、老人のように見えるチャーリーは一体何歳なのだろうか」と、常に疑問に感じていた。上記の出張とは別の機会のことだったが、彼の到着前に皆で語り合って、じゃんけんに負けた者が日本の現況報告会の後で、チャーリーに直接に訊きに行こうとなった。

それが、何としたことか負けたのは私だったのだ。私も覚悟を決めてチャーリーに歩み寄って「個人的な質問をお許し下さい」と切り出して「具体的な質問の前に申し上げておきますが、私は1933年生まれです。皆が貴方は何歳なんだろうと言っていて、私がその質問をすべく代表でやって来ました。是非ともお答えを」と恐る恐る尋ねてみた。すると彼はニッコリと微笑んで「それは多くの有能な者が生まれる年だ。君も良い年に生まれたな」と切り返されてしまった。何とも巧みな答え方に圧倒されたと同時に、私と同い年だったとは驚き以外の何物でもなかった。矢張り、彼は天才だと思い知らされた。

*チャーリーは小声で語るのだった:
低音ではなく小さな声でしか語らないので、聞き取るのが一苦労だった。そのチャーリーがスエーデンが誇る多国籍企業T社の日本法人を訪問して、スエーデン人の社長と懇談した。この社長も大変な能力者で、後にスエーデンの本社のCEOに昇進していた。その時同席された日本人の副社長K氏が語ってくれたチャーリーの印象が興味深かった。

K氏はチャーリーが小声でボソボソと語るところに、彼が#2であることが如実に現れていると言うのだ。それは「T社のオウナー兼CEOも非常に小声なので、全員が一言半句聞き漏らさないように真剣に聞いている。オウナーは自分の会社内で上司はいないのだから、小声でも誰からも苦情はでない。聞き損なったのならば、それはその者の責任であると言っておられるのと同然だ。チャーリー氏は今や上司はCEOのジョージだけだから、それ以外の人には何も大きな声で語りかける必要がない地位にあると良く解った」という解説だった。ユニークな見方だと感心した。

そのチャーリーは実はジョージが65歳で会長に退いた後に、CEOに任じられずに木材部門統括のExecutive vice presidentを命じられただけに終わった。我々は「まさか」と呆気にとられ、彼は辞めてしまうのではないかとの声まで上がった。だが、彼はチャンとその任務をリタイアするまで立派に果たしたのだった。余談になるかも知れないが、ジョージの後任には会社全体の売上高の10%だった不動産部門の社長が選ばれたのだった。

*暴露ものかと言われるるかも知れないが:
以上がアメリカの大手企業の経営陣には尋常ならざる能力の持ち主が人いるということを思い出して、細かく延べてみたことであり、我が社の内情を語ったつもりなど毛頭ない。


オペレーション・ワープ・スピード

2021-06-26 09:09:21 | コラム
カタカナ表記には問題点が多過ぎる:

どうしてここまでおかしくなってしまったのかと、非常に残念な例に出会った。残念だという意味は「何故、おかしなカタカナ表記に妥協されたのか」という点である。

それは、最新のPresident誌に渡瀬裕哉氏がトランプ前大統領が「対COVID-19のワクチンをワープ・スピードで創り上げよ」と指示されたことを採り上げておられた事を言う。これは、ウイルスに対して否定的だったトランプ前大統領の功績であるとの指摘であり、私でも尤もだと思う。だが、極めて残念だったのは”operation warp speed“が「オペレーション・ワープ・スピード」の表記になっていたことだ。

私にはこの辺りに長くアメリカの駐在されていると聞く渡瀬氏にして、このようなおかしなカタカナ表記をしてしまうことと(もしかして編集が手を入れたのかも知れないが)、我が国の英語教育の至らなさと、カタカナ語製造業者の無知蒙昧振りが悲しい程見えてくるのだ。

私は今日までに繰り返して「英語の発音というか読み方の中で”a“は特に要注意である」と「英語という言語は非常に不規則に出来ているので、ローマ字式の発音と読み方が通用しない場合が多い」と指摘してきた。私は言語学などとは無縁の存在なので、その不規則性が「英連邦以外の國の言語、例えばラテン語等の言葉が入っているので、同じaでも不規則なるのか」程度に勝手に解釈して、一々その単語毎に発音を記憶する以外に、その不規則性には対応できないと割り切っていた。

だが、我が国の英語教育と、それに従って育ってきたカタカナ語製造業者はそうとは考えなかったようだ。頑強にローマ字読みに固執するか、好き勝手に元の英語とはかけ離れ表記を乱発したのだと見ている。私はそれを完全に否定までしていないから「妙なカタカナ語をお使いたればご勝手に。但し、それらは本当の英語の意味と発音とは違っている場合が極めて多いし、その通りに発音してもnative speakerたちには解って貰えないかも」と述べてあった。

「オペレーション・ワープ・スピード」の何処がいけないかと言えばoperationは厳格には「アペレイション」が近いし、warpは「ウオープ」が正確なのだから。

この”a“が入った単語中でも特にテレビで濫用・乱発されている言葉に”award”がある。困ったことに、テレビ局では誰が決めて指示するのか知らないが、平然として「アワード」と言わせている。テレビ局には英和辞典の1冊もないのかと訊きたくなる。これはOxfordでもチャンと「アウオード」との発音記号が出ている。大体からして”war“=戦争を「ワー」と発音するか。この”warp”も上記のように「ワープ」ではない。余談になるが、私はwarp speedを知らなくて調べて見た。「非常にか、異常な早さ」の意味だった。

そこで見えてくるのが英語の不規則性だ。サッカーなどに出てくる”forward“は「フォアウオード」とはならずに「フォワード」とすれば原語に近くなる。ここではaは組んでチャンと「ア」と発音されるのだ。と言うよりもaは次にrが付くと「オー」になってしまうようだ。ここまで来れば、単語の発音は臨機応変に元の発音をチャンと聞いて覚えておくしかないことになる。ましてや、カタカナ表記をする場合に、恣意的にローマ字表記をするなどと言う行為は、大袈裟に言えば「以ての外」なのだ。

そういう「以ての外」のカタカナ表記は、話し言葉や文章の中に英語の単語を交えたがる似非インテリ(知性も教養も高いはずのテレビ御用達の専門家の先生方)が増える一方なので困る。先生方は何故か従順にマスコミが濫用する奇妙なカタカナ語を嬉々として使っておられるのだ。何度も指摘したがsecurityを「セキュリティ」と言い、誤りと知ってか知らずにか「フリップを出して下さい」などと曰うのだ。念の為に辞書でsecurityの発音記号をお調べ下さい。

私には最早このような奇妙なカタカナ語やその表記という弊害を正す方法など分からなくなってきた。大原則は「例えば、中学1年から教え出すとして、その際に正確のな発音と読み方を、ローマ字は忘れなさいと明示して、教え込むことから始めればと思う。ここで誤解してはならないことはnative speakerに教えさせることだ。

経験上も言えることで、彼ら外国人には「日本人が英語のどの点で苦労するか、何処が難物なのか」は理解を超えているのだ。最初は日本人で正確に英語の発音が出来て、まともに英語を理解している人が教えるのが最上である。でも、そんな人が何処に行けばいるのだろうか。私は外資というか外国の会社に勤務する同胞の中には、数多くの練達熟練の方がおられると承知している。でも、そういう方たちは恐らく教員の資格をお持ちではないだろう。私は不真面目で英文学科にいながら教職課程は避けて通ってきた。

兎に角、カタカナ語を使うと思うときには、事前に辞書で何が本当の発音かくらいを確かめよう。更に言えば「マスコミが使うカタカナ語は信用しないこと」なのだ。最後に言えば「学校の英語教師たちよ、深刻且つ真剣に反省せよ」なのだ。