曇、9度、54%
黄瀬戸という焼き物に興味が湧いたのは、かれこれ15年ほど前でした。亡くなった各務海周という方の作品でした。当時はまだご健在、うんと頑張れば私でも求めることができるお値段でした。亡くなって、この方の作品はぐんぐん遠ざかってしまいます。もう手が出ない高嶺の花になりました。いいお値段です。
黄瀬戸は、茶碗や猪口に多く見られます。私が見たのは、大ぶりな盛り鉢でした。ゆったりとした鉢に筍の炊いたものと木の芽が飾られています。ちょうど黄瀬戸の色を写すような取り合わせでした。欲しいなあ、誰にも言わず一人思い続けていたことです。
30年ぶりに日本に帰ってきたのは、2月の初旬。その私に引越し祝いとして黄瀬戸の鉢を頂戴しました。引越し祝いという忘れかけていた習慣にも驚きましたが、何と言っても黄瀬戸の鉢には大驚き。まるで私の心を読まれているようです。もちろん、小躍りして喜びました。
さて、何を盛ろうかな。器はどんなものでも飾らずに使います。食卓にのるのが一番だと心得ます。最初に盛ったのは、そら豆でした。走りのそら豆をサヤごと焼いて、 香港から戻ってきた主人との食卓にのせました。ちょっと焼き過ぎのそら豆です。
次に盛ったのが生湯葉と菜の花を薄味で炊いたものです。やはり黄瀬戸には湯葉やタケノコのような色合いのものと鮮やかな緑が似合います。
寒い日がありました。お昼には手羽先と有り合わせのお野菜でスープを作りました。 深さがあるのでスープも具もしっかり入ります。
ちょうどお雛様の時分には、三河湾でとれたすだれ貝をいただきました。酒蒸しにして、大振りな貝を盛ました。わけぎを刻んでいたのに振り忘れています。黄瀬戸には、緑のアクセントが必要です。
昨日のお昼のは冷蔵庫の整理でタコの頭やイカのゲソ、お野菜の残り物をたくさん入れてちゃんぽんを作りました。 香港にいた頃、ちゃんぽんを作るのは決まってある友人がお昼にちゃんぽんを食べたと写真をアップした次の日でした。ちゃんぽんを食べると今は亡くなった友人を思い出します。
サラダとチャーハンものせてみました。いつものように食べるのが優先して写真を撮り忘れています。自分の器と思えるまで使い込みます。贈り主とこの器を作った方は同一人物、こんな日常の使い方を赦してくださると思います。