たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

東 直子さん著「とりつくしま」という本を読みました

2019-10-21 15:33:20 | 本・読書

死んだあなたに、
「とりつくしま係」が問いかける。
この世に未練はありませんか。あるなら、
なにかモノになって戻ることができますよ、と。
(ちくま文庫、web 内容紹介より)

大型活字で読む本シリーズ。今回のレビューは、
たにしの爺にとって、異色の本になりました。
爺のジャンルは、時代小説とかミステリーが多いですが、
初めて手にした作者の本に「憑りつかれ」ました。
「死んだ後にとりつく」物語ですから、
まあ、一種のスリラー物と言えなくもないのですが……

東 直子さんという作家も初めて知りました。
歌人の方が本業のようです。
見当違いでしたら、ごめんなさい。

図書館で借りる「大型活字本」は一作品が、
3~4冊の分冊になっている本が多いです。
借り出し制限数にあと一冊余裕があるとき、
分冊本の1だけ借りるのも気持ち悪いです。

中には2,3刊だけ書架に残っていたり、
「下」だけ残して借りている方もいます。
爺は、そおいう並びは見たくないのです。

数少ない1冊本で目にとまったのが、
東 直子著の「とりつくしま」でした。
作者についても、内容についても全く、
予備知識のない未知の方の本でした。



前口上が長くなってしまいました。
東直子さん本「とりつくしま」は、
「もしも~だったら」を描く哀しくもあり、
ミステリーなファンタジーな世界でした。

この世に「心残り」「未練」を残して逝った人が、
「とりつくしま係」に導かれ身近な物に憑りつき、
自分亡き後の「気になる事・人」を見守っている。

話すことも助けることはできないが、
憑りついたモノの感覚は共有できる。
物に憑りついて死後の現生を見守る。
11編からなる「とりつくしま」です。



①ロージン
 母はピッチャーの息子の陽一が公式試合で使うロージンに…
②トリケラトプス
 妻は夫の好きなマグカップになって毎日、温もりを共有して…
③青いの
 ぼくは公園の青いジャングルジムになった、寒い冬が来て母の…
④白檀
 私・書道塾の講師は思慕する師匠・浜先生の使う白檀の扇になって…
⑤名前
 孤老のワシは図書館の司書、小雪さんの名札になって、胸に付けられ幸せにしていたが…
⑥ささやき
 わたしはママの補聴器になっていたが…
⑦日記
 僕は妻・希美子の付けている日記帳になっていたが、ある日庭先の炎の中に…
⑧マッサージ
 仕事人間だったおれは、仕事中に死んでマッサージ器になって家に戻ってきていた、自分が座ったこともなかったが…
⑨くちびる
 14歳だった私は、恋を成就したことがない。好きな先輩が居た。その先輩と付き合っている彩香先輩の使うリップクリームなった。私が付いた唇に…
⑩レンズ
 アタシはカメラのレンズになって孫の翔太のカメラアイになるつもりだったが…
番外篇 びわの樹の下の娘
 美しい一人娘が死んで、1本の髪の毛から生えた草木が、幼くして好きだった男に絡みつて…

たにしの爺、この小編のうち⑨「くちびる」が一番印象に残りましたね。



もし爺が棺桶に入るとき、「とりつくしま係」から、
何か「とりりつきたいモノ」がありませんかと聞かれたら、
はて、何だろう。有るような、無いような…
長文お疲れさんでした。