たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

八ッ場ダムの川原湯温泉でクラス会

2019-08-27 13:36:54 | Journalism

群馬県吾妻郡の八ッ場ダムの川原湯温泉に宿泊、
同年クラス会がありましたので行ってきました。
「宿泊助成」制度を利用させていただきました。



昭和20年4月に小学校に入学し8月15日に終戦でした。
以来戦後の昭和時代から平成を生き令和の時代になり、
齢80歳台になって顔合わせをしようということでした。



80余人の同年者のうち、参加できたのは男性5人。
神戸から元航海士、横浜から一人、宇都宮から一人、
上田から一人、千葉からは「たにしの爺」で5人。
5年前に開催の善光寺御開帳同年会の半数でした。



川原湯温泉は「関東の耶馬溪」と言われる名勝地、
吾妻渓谷に沿って点在した紅葉の温泉地でしたが、
八ッ場ダムが作られることによって温泉街が消滅。



八ッ場ダムは計画から70年、今夏の6月12日に、
本体工事のコンクリートの打ち込みが完了した。
「反対派」「推進派」「民主党政権」中断など、
地域、住民は、長年にわたって翻弄されてきた。



川原湯温泉街も何軒かの旅館が代替地で再開。
群馬県八ッ場ダム水源地域対策事務所では、
八ッ場ダムを中心とした地域振興策に注力。
一環として「川原湯温泉宿泊助成」事業を策定。





対象用件として①川原湯温泉に宿泊すること。
②ダム現場見学会に参加すること。
③アンケートを提出すること。
④4人以上の団体・グループであることーーで、
宿泊者は一人3,000円の宿泊代が助成されます。



同年クラス会もこの助成制度を利用し、
来春のダム湖ができる前に工事現場の現状を見て、
記憶しようと言う趣旨で計画されました。



実を申せば、吾妻渓谷・川原湯温泉は、
私たちの故郷、上田からは浅間山の裏側で道続きなんです。
四阿山を望み真田の地を経て、菅平、鳥居峠を越えれば、
あるいは小諸から湯の丸から二度上峠、鹿沢温泉経由で、
軽井沢からは白糸の滝、鬼押し出し経由で長野原草津温泉です。



私たちがお世話になった宿は「やまた旅館」。
こじんまりとした静かな宿でした。
家族経営で自家栽培の野菜料理が中心の、
和みのクラス会になりました。
とても心地よかったです。



器はすべてご主人の作陶した逸品ものです。
温泉は猛烈な熱さでたっぷり注水しないと入れない。
新設された川原湯温泉のシンボルだった「王湯」も、
宿から手拭ぶらぶら、歩いて10分ほどでした。
ダムが満水になったら、湯船の目の先が湖面という感じです。


やまた旅館からの朝の眺め

翌日、「八ッ場ふるさと館」で八ッ場ダムの概要説明会、
その後、見学用バスで工事現場を視察見学会でした。
ダムを中心とした地域振興、観光開発に必死な思いの伝わる、
地域対策事務所によるプレゼンテーションでした。



5つの集落と川原湯温泉を湖底に沈め、
永年、暮らしていた住民を「引き裂いた」ダム建設。
苦渋の思いは末代まで続くのでしょう。



草津温泉、万座・妻恋鹿沢、伊香保温泉、四万温泉など、
周辺には群馬県の誇る名湯温泉が点在しています。
ダムの底から這い上がる「川原湯温泉」を応援しよう。




八ツ場ダム水源地域対策事務所




「たにしのブログ」では八ッ場ダムについて、
これまで4回に渡って記事を書いてきました。
日付は投稿した日です。
バックナンバーのカレンダーから検索してください。



①八ッ場ダム中止へ 暴走する 前原誠司 国土交通大臣(2009-10-03)
②初秋の上州路 暮坂峠から 野反湖 尻焼温泉 そして八ッ場ダム(2010-09-23)
③秘湯の源泉かけ流し一軒宿と八ッ場ダム工事視察の旅(2016-07-10)
④お題「ダムカードを紹介してください」に参加・投稿

奇跡の実話・映画「風をつかまえた少年」を見ました

2019-08-11 10:21:48 | 劇場映画

暑中お見舞い申し上げます。

令和元年8月12日に、
「たにしの爺」gooブログが5000日目になりました。

爺がブログを開設したのはもっと前で、
gooブログに移る前にASAHIネットのブログサービス、
「アサブロ」にお世話になっていましたので、
実際のブログ経験は5000日より遡り、15年超になる。



それはそれとして、
5000日目のメモリー記事は何にするか、
爺ブログの中心は「徘徊日記」ですが、
眼の養生と酷暑のため、徘徊は避けているので、
久しぶりに「映画」ネタをメモリー記事にしました。

キウェテル・イジョフォー初監督作「風をつかまえた少年」
2018年製作/イギリス・マラウイ合作/配給:ロングライド。

何故この映画を知ったのか。
NHKの語学講座「世界へ発信 SNS英語術」
Eテレ金曜日、この番組をときどき見ているのですが、
この日、映画の原作者であり、モデルになっている、
ウィリアム・カムクワンバのインタビューが教材でした。



その中で、以下のようなフレーズがありました。
「人に魚を与えるのではなく、魚を捕る方法を教える」ということです。
今日の解決だけを考えれば、今日一日の魚は手に入ります。
だけど魚を捕る方法を学べば、未来を考えていることになります。

自家製の風力発電で未来を切り開いた14歳の少年の実話。
爺はこの映画を見たくなりました。
上映館を調べてみましたらとても少ないです。
シネコンでは上映館がありませんでした。



千葉では一館だけ「千葉劇場」がありました。
これまで行ったことがありません。
千葉駅からモノレールに乗って葭川公園駅。

街中の昔ながらの単館映画館でした。爺好みですね。
キップから場内案内まで女の子が一人で仕切っていました。
とても伝統のある映画劇場のようでした。


同映画館のホームページから

千葉劇場の前身は戦前からで、空襲で焼失したが、
戦後、再建されました。平成5年に改築し現在に至るという。
シネコンとは無縁で良質な作品を提供している。
この回の観客は30数人、女性が多く高齢者が主流でした。

前口上が長くなりました。
映画は、アフリカの最貧国のひとつマラウイ共和国。



2001年、大干ばつが襲う。枯れ立ちのトウモロコシ畑に、
熱砂の渦巻く強風が吹き渡り、乾ききった大地に水はない。
村中が飢饉に、わずかばかりのトウモロコシの粉を奪い合う。

14歳のウィリアム・カムクワンバは学費を払えず。
学校からは通学を拒絶され通学を断念するが、
図書館管理の先生の計らいで一冊の本と出会う。



「風のエネルギー」ENERGY
風力発電のできる風車で畑に水を引くことを思いつく。

祈りで雨を降らせようとする村で、誰も信じない夢の実現へ
ウィリアムの思いが周りを動かし始める。
後は映画館でどうぞ。



大昔の話ではありません。2001年のことです。
アフリカの現実、教育の大切さ、感動です。
ウィリアムは2013年タイム誌「世界を変える30人」にも選ばれました。

監督のキウェテル・イジョフォーは、
アカデミー賞作品の「それでも夜は明ける」の主演俳優で、
(このブログでもレビューしています)
初の映画監督デビューを果たした作品だという。

「風をつかまえた少年」公式サイト。

羽根藩に名君の現れ――葉室麟「草笛物語」を読む

2019-08-02 16:57:52 | 本・読書

大型活字で読む時代小説。葉室麟シリーズ―ー、
今回のレビューは「草笛物語」になりました。

これまで葉室作品は「冬姫」「川あかり」「螢草」「潮鳴り」
「蜩ノ記」「散り椿」の読みレポを書きました。
現在、NHK「BS時代劇」で「螢草」が<菜々の剣>として、
清原果耶が主演、菜々の役で放送されています。



「草笛物語」は羽根藩シリーズの最後になる作品です。
九州の豊後地方(大分県)の小藩・羽根藩の跡目騒動劇です。
シリーズの第一作になっている「蜩ノ記」の始末記と言えます。

「蜩ノ記」の主人公・戸田秋谷は蟄居を命じられ、
藩の家譜を執筆して10年後、無実の罪を承知の上、
自刃してから16年の歳月が流れていた。



向山村での蟄居中の秋谷の監視役を命じられていた壇野正三郎。
同じ家に暮らすうちに秋谷の人間性に魅せられ、師と仰ぐようになった。

そして秋谷の娘・薫と夫婦になり、桃と言う娘もいる。
藩の要職に戻ったが相原村にある「薬草園」の番人をしている。

秋谷の嫡男・郁太郎は戸田順右衛門となって中老に就いている
自己にも藩政にも厳しく律し「鵙」(もず)と呼ばれていた。



このような藩の事情を背景に物語は始まる。
江戸屋敷には元服前の世子(藩主の後継者)鍋千代が居る。
小姓役の赤座颯太は同い年で遊び仲間でもあった。

藩主の吉房は病で亡くなる。
鍋千代が若くして藩主を継ぎ吉道と名を改めお国入りとなる。
小姓役の颯太ともに豊後・羽根藩に入る。

気弱な颯太は薬草園の番人・壇野正三郎の下で、
小姓役を務めながら学業・武術を修業することになる。

若き藩主・吉道は規則ばかりのお城暮しに反発、
颯太を通じて城下に度々、野駆けをするようになる。



ある日、秋谷の残した「蜩ノ記」を見たいと言うことで。
壇野正三郎の家を訪問し正三郎から、
秋谷の生き方を聞き、藩の事情も知らされる。

藩内には若き藩主・吉道には組せず、
一門の三浦左近(月の輪様と呼ばれている)を、
藩主に担ぎ出そうと画策する一派が暗躍し出すのだった。

またしても羽根藩のお家騒動が始まる。



秋谷の遺していった姉の薫、妻とした正三郎、娘の桃。
弟の郁太郎・戸田順右衛門。慕う亡き源吉の妹・お春。
逞しくなった小姓・赤座颯太。戸田順右衛門の娘・美雪。

若き藩主・吉道と颯太をはじめ若い小姓たちが、
藩に蔓延る因縁遺恨を乗り越えて成長する姿が清々しい。。
正三郎と順右衛門「われわれはついに名君を……」

草笛が「ピーッ」と響いて、
蜩の鳴く声が空から降るように聞こえる。
羽根藩のお家騒動も大団円の模様です。

誰でも文庫「草笛物語」葉室麟
発行発売 大活字文化普及協会
2018年1月31日 印刷発行