弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

理由のない弁護士懲戒請求は違法-最高裁が慰謝料請求を認める!

2007年04月25日 | 法律情報
弁護士が不祥事を行った場合は、懲戒請求を受けて然るべきですが、相手方等が、単に「気にくわない」等の理由あるいは嫌がらせ目的で懲戒請求を行う事例が増えているようです。

上記のような理由のない懲戒請求を受けた弁護士は、大変嫌な思いをしますし、後々の対応に大変苦慮します(私の知り合いの弁護士も、私の目から見れば不当では?と思われる懲戒請求に対して、対応もさることながら、ちょっと精神的に参っていたような感じでした)。
そこで、不当な懲戒請求に対して、懲戒請求を行った人物及びその代理人に対して慰謝料請求を行っていた弁護士がいたところ、この弁護士に対して慰謝料を認める判決が最高裁でなされたようです。


関連するニュースへのアドレス
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070424-00000305-yom-soci


まぁ、不当な懲戒請求に対して、対抗手段として慰謝料請求を行うことができるお墨付きができたという点で、弁護士業務をやっている方からすれば、大変ありがたい最高裁判決になると思います。


ちなみに、最高裁が不当な懲戒請求を行われた弁護士のデメリットを色々と書き加えているのですが、気持ちを代弁してもらってありがたいと思う反面、ここまで書く必要があったのか?とちょっと思ったりもします。

以下、上記点に関する、最高裁判決の理由部分の引用です(一部、文章を読みやすいように改行している部分があります)。

「弁護士懲戒制度は,弁護士の活動との関係で重要な機能を果たす制度であるが,懲戒を受ける個々の弁護士にとっては,業務停止以上の懲戒を受けると,その間一切の弁護士としての業務を行うことができず(業務停止期間中に弁護士としての業務を行うと,いわゆる非弁活動として刑事罰にも問われ得る。),それに伴ってその間収入の途を絶たれることとなり,また戒告処分を受けると,その事実は,官報に掲載されるとともに各弁護士会の規定に則って公表されるほか,日本弁護士連合会の発行する機関誌に登載され,場合によってはマスコミにより報道されるのであって,それに伴い当該弁護士に対する社会的な信頼を揺るがし,その業務に重大な影響をもたらすのである。
 弁護士に対する懲戒は,その弁護士が弁護士法や弁護士会規則に違反するという弁護士としてあるまじき行為を行ったことを意味するのであって,弁護士としての社会的信用を根底から覆しかねないものであるだけに,懲戒事由に該当しない事由に基づくものであっても,懲戒請求がなされたという事実が第三者に知れるだけでも,その請求を受けた弁護士の業務上の信用や社会的信用に大きな影響を与えるおそれがあるのである。このように懲戒請求がなされることによる影響が非常に大きいところから,虚偽の事由に基いて懲戒請求をなした場合には,虚偽告訴罪(刑法172条)に該当すると解されている。
 弁護士に対して懲戒請求がなされると,その請求を受けた弁護士会では,綱紀委員会において調査が開始されるが,被請求者たる弁護士は,その請求が全く根拠のないものであっても,それに対する反論や反証活動のために相当なエネルギーを割かれるとともに,たとえ根拠のない懲戒請求であっても,請求がなされた事実が外部に知られた場合には,それにより生じ得る誤解を解くためにも,相当のエネルギーを投じざるを得なくなり,それだけでも相当の負担となる。それに加えて,弁護士会に対して懲戒請求がなされて綱紀委員会の調査に付されると,その日以降,被請求者たる当該弁護士は,その手続が終了するまで,他の弁護士会への登録換え又は登録取消しの請求をすることができないと解されており(平成15年法律第128号による改正前の弁護士法63条1項。現行法では,同62条1項),その結果,その手続が係属している限りは,公務員への転職を希望する弁護士は,他の要件を満たしていても弁護士登録を取り消すことができないことから転職することができず,また,弁護士業務の新たな展開を図るべく,地方にて勤務しあるいは開業している弁護士は,東京や大阪等での勤務や開業を目指し,あるいは大都市から故郷に戻って業務を開始するべく,登録換えを請求することもできないのであって,弁護士の身分に対して重大な制約が課されることとなるのである。弁護士に対して懲戒請求がなされることにより,上記のとおり被請求者たる弁護士の身分に非常に大きな制約が課され,また被請求者は,その反論のために相当な時間を割くことを強いられるとともに精神的にも大きな負担を生じることになることからして,法廷意見が指摘するとおり,懲戒請求をなす者は,その請求に際して,被請求者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について,調査,検討すべき義務を負うことは当然のことと言わなければならない。
 殊に弁護士が自ら懲戒請求者となり,あるいは請求者の代理人等として関与する場合にあっては,根拠のない懲戒請求は,被請求者たる弁護士に多大な負担を課することになることにつき十分な思いを馳せるとともに,弁護士会に認められた懲戒制度は,弁護士自治の根幹を形成するものであって,懲戒請求の濫用は,現在の司法制度の重要な基盤をなす弁護士自治という,個々の弁護士自らの拠って立つ基盤そのものを傷つけることとなりかねないものであることにつき自覚すべきであって,慎重な対応が求められるものというべきである。」
(引用終わり)
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