工藤鍼灸院・院長のひとりごと2

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今日は三橋節子さんの命日です

2009年02月24日 19時22分14秒 | その他
本日2月24日は私が尊敬する日本画家・三橋節子さんの命日でございます。この時期になると毎年のように何度もご紹介しておりますが、今日は三橋節子さんの生涯についてお話しをしようと思います。

三橋節子さんは1939年生まれ。日本画家としての技量が成熟しつつあった33歳の時、鎖骨腫瘍により画家の命とも言える利き手を失いますが、彼女は残された左手に絵筆を持ち替えて創作活動を続けます。その後ガンの転移により余命幾ばくもない事実を知りながらも、彼女は残していく家族への愛に溢れた数々の作品を発表。そして1975年2月24日、夫とふたりの子ども達を残して35歳の若さで永眠・・・。

三橋節子さんは人目に触れることもなくひっそりと、それでいて力強く生きている草花を描く「雑草画家」としてその名を知られた画家でした。
昭和42年の年末から1ヶ月に渡るインド旅行を経験し、インドの街角にあふれる人々を描くようになった三橋さんは、昭和43年に29歳で画家の鈴木靖将氏と結婚。ふたりのお子さんにも恵まれ、長男には「草麻生」、長女には「なずな」という人知れず強く生きる雑草の名を与えました(ちなみに長男の鈴木草麻生さんは日本代表経験もあるほどのバドミントン選手で、現在は実業団の監督をしています)。

画家として脂がのって来た昭和48年。右鎖骨に腫瘍が見つかり、画家の命とも言うべき利き手(右上肢)を切断。手術の前に夫から大変難しい病気である事、腕を切断しても完治する確率は相当低い事を告げられ、全てを受け入れた上で手術前の最後の作品を「右肩鎖骨がまりのように腫れた(鈴木氏談)」右手で描きます。
その絵には死に対する恐怖と不安、そしてその病と戦う強い意志が描かれています。これが三橋節子さんの代名詞でもある「伝説シリーズ」の最初の作品となった『湖の伝説』でございます。



その後も彼女は迫り来る死の恐怖と闘いながら、病に立ち向かう姿や家族への愛を表現した数多くの作品を残しました。

死の恐怖に怯えながら、愛する家族との別れを惜しんだ作品『三井の晩鐘』。

夫婦愛の素晴らしさを通して出会いと別れの感情を描いた『田鶴来(でんづるぐる)』。

自らの死を受け入れ、周囲への感謝の気持を描いた『鷺の恩返し』。

残してゆくふたりの子ども達へのメッセージを込め製作した絵本『雷の落ちない村』。

激しく咳き込みながら描いたという、死への絶望と再生への希望を描いた『花折峠』。

そして死の1ヶ月前に病院のベッドで描いた絶筆の作品『余呉の天女』では、当時3歳だった長女に手を振りながらにこやかに天に昇る天女の姿を描きました。
この絵を描く1ヵ月半前に滋賀県の余呉湖に最後の家族旅行をしたそうで、家族との最後の思い出と自らの死期を悟った三橋さんの穏やかな気持ちが描かれています。





彼女の作品は一見すると暗く、死への恐怖がにじみ出ています。しかしそれと同時に再生への願いが込められており、最後まで病と闘おうとする強い意志が感じられます。そして何よりも家族への愛、感謝の気持ちにあふれています。
彼女のように病と闘おうとする、その前向きな姿をサポートする事が医療のあるべき姿だと、そう私は思うのです。当院のいたるところに三橋節子さんの絵(って言ってもポストカードですが)を飾ってあるのはそういう理由からでございます。





これは当院のトイレに飾ってある『母子像』という作品でございます。亡くなる2ヶ月前に年末のチャリティー展に出品するために描いた作品で、長男の草麻生さんが生後20日頃に夫がスケッチしたものをもとに描いた作品だそうでございます。
この頃から肺のレントゲンに影が写るようになったそうで、絶えず咳が出るような苦しい病状の中、最愛の息子との別れを惜しみながら描いたのではないかと。画集の中で夫の鈴木氏はそのように語っています。



三橋さんのアトリエがあった滋賀県大津市には三橋節子美術館という常設美術館がございます。ここは私の大好きな場所で、関西へ行った際にはできる限り立ち寄るようにしています。そして、3月1日(日)にはびわ湖ホールで『雷が落ちない村』を題材とした演奏会がございます。大津はのどかでいいところですよ。



三橋さんの画集、そして哲学者・梅原猛氏の著書『湖の伝説~画家・三橋節子の愛と死』は当院の待合室に置いてあります。三橋さんの作品に興味のある方はぜひご覧ください。
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