岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

社会保障と財政(財源)を考える前提。

2008-05-20 18:55:29 | 国民と国会と政治
この大きな課題について、私自身あまり書いてこなかったように思います。
それは、財源論(財政)を語れば、現在の制度の維持、すなわち
「持続可能な社会保障制度」という政府の得意技に引き込まれると
思っているからでもあります。
それが政権政党の最大の強みです。
国の財政の根っこの部分は、政権と省庁が握っているわけですし、
われわれ国民に十分な情報が開示されているとも思われない。

現在の低負担低福祉政策については、国民のコンセンサスがここにあるのだ、
という論評を聞くことが多い。
本当にそうなのだろうか。
われわれはそのような議論をしたのだろうかと思う。
もちろん、してはいない。

どのような社会福祉制度を持つべきか。
考える場を持ってもいなかったと思う。
(これは、なぜ今、75才以上医療制度が混乱していることを見れは明白だ。
当事者がいつ決まったのかと怒る制度が存在していることこそ議論の場が
なかったことの証ではないか)

政府は、このことを政策論議として、国民に提示したことはなかったと
言わざるをえない。
政府は、自ら進めたい政策を進めてきただけではなかったのか。

ならば、今、財政(財源)について考えることは最低限は必要としても、
根本的なことにはならない。
それはつなぎでしかないといえる。
とりあえず時間を稼ぐという程度のものしかならない。

ここで必要なのは、これからどのような社会保障が必要なのかを
論議することだ。
それは、政党の理念でもあり、選択されれば、国の理念となるものについてで
ある。

政党には、どのような社会保障を目指すのかという「理念」の提示をすることが
求められる。
それは、国民が政党に求めることであるはずだ。
政党は抽象的ではなく、可能性のある具体的な社会保障を国民に提示することが
使命だ。
国民はその社会保障が絵に描いた餅なのか、それとも国民の理念に沿いながら、
実現の可能性が高いものかどうか、判断しなくてはならない。
そして、ここで政党は財政的にどの程度の負担が求められるかを提示する
必要がある。
国民には、低負担で高福祉がよいはずだが、そのようなことが現実的でない
ことを理解しなくてはならない。

単に負担の額で、世論が政党から離れるなら(政党はそれを恐れている)、
それこそ、民意は低いといわざるをえない。

しかし、今の時点で民意が低いと決め付けることも適当ではない。
高負担は高受益でもあるから、このことを説明すれば理解が得られるかも
しれないし、そのように説明することが責務である。
現在、日本の社会保障は米国とともに、欧米諸国の中ではかなり特異なものに
なっていることも知っておかなくてはならない。

財政(財源)について考える際に留意しておきたいことは、
数字は、利用するものにとってコントロールしやすいということ。
都合のよい数字をピックアップすることが簡単にできるということだ。
そして、一旦、発表された数字は一人歩きする。
数字にはその能力がある。
魔力といってよい力がある。
その数字を一人歩きをさせる術もある。

今まで官製の数字には疑問に思わざるを得ないことが多かった。
出生率や人口予測でさえ、政策の都合を考えた数字だった。
医療費予測も眉唾ものだし、公共事業の見積もりも当初計画と実際の費用が
数倍違うこともあたりまえだ。
道路計画の車通行量予想など、作為的としか思えない。

政策遂行のために表舞台に出ていた数字が、結果や実績時には裏に隠れてしまう。
このような例を山ほど見てきたのではないだろうか。

わたしたちが社会保障について考え、選択をする時に多くの時間を
費やすこともできない。
政党の理念を知り、政策や制度設計そして実行は専門家に任せるしかない。
(政党自体にその機能はない。シンクタンクや官僚、そして研究者の力が
政党をサポートすることになるが、官僚が野党に力を貸すことは考えられない)

方向性の決定こそ、国民の判断である。
(目の前には甘い数字や、脅迫的な数字が並んでいる)

裁判員制度も同じように国民の判断の場である。
裁判員には、担当をする裁判の詳細を知るだけの時間は与えられない。
その時間があるのは専門家である裁判官や検察官、弁護士であろう。
裁判員は、専門家が準備した材料を短時間が読み込んで、人の一生に関わる
結論を導き出すことが求められる。
このようなことが、間違いの許されない裁判でできるのか、疑問に思うところだ。

実は、国政選挙の一票もこのような決断なのだが、現実はどうだろう。
そのように考えているだろうか。

今、われわれの前に、年金制度の数字が大量に現れた。
実は私はこの数字を読み込んではいないが、上記のような考えを基盤として
読んでみようと思う。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
物事の順序 (bonn1979)
2008-05-21 16:15:37
ご指摘の通り
「持続可能」の土俵にあがれば
(いまの日本では)
官僚組織の手のひらにのってしまいますね。

そうではなくて
やはり
原理・原則から入るべきであり
それは政治が決めることですね。

タケシが番組の終わりにふっと
「お年寄りを大切にという話がいつのまに75歳以上からも取りますってなったのかな?」
とつぶやいていたように聞きました。

あの公的医療保険を作らなかったアメリカでさえ、低所得者と高齢者には特例の公的保険を作った。

行政組織は
大きなところ、常識から入らずに
袋小路を走り回るので
ややこしくなるばかり。
返信する
アリバイづくり。 (岩清水)
2008-05-21 18:35:35
今日は与党である公明党から、税方式は
無理だとという話が出ていました。
考える時間も与えないでしょうね。

しかしどのようなデータなのか、
しっかり読みたいと思います。
返信する