岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

『近世南三陸の海村社会と海商』 斎藤善之 高橋美貴編 清文堂

2013-03-21 11:27:45 | 
岡山で東北地方の書籍を探す。
なかなか難しい。
私が探していうのは、三陸海岸の歴史を知ることができる書籍ですが、県立図書館の書棚にも数冊しかありません。
その中の1冊がこの『近世南三陸の海村社会と海商』です。
学術書ですが、とても興味深い内容になっており私のような門外漢でも読み通すことができます。

編者の斎藤善之氏による「はじめに」から少し抜粋してみたいと思います。
私が知りたいと思っているのことの導入部分が書かれています。

本書で主な研究対象とした大規模経営体は、雄勝町(現石巻市)名振浜の永沼家である。同家は、本書佐藤論文でも紹介されているように、弘治2年(1556)に下野国(栃木県)から移住し、この地の葛西氏に使えたとの伝承を有するが、同家のみならずこの地の大規模経営体の多くが、いずれも関東や西国といった東北地域外からの移住伝承を有していることは注目されなくてはならない。

ちなみに近世初期から前期にかけての東北沿岸に漁業開発が、紀州を中心とする関西漁民らの進出によってなされたことは周知の事実といえるが、実は永沼家も文禄年間に鮭の建網漁を開始している。このことは、関西や関東から来住したこの地の大規模経営体が、資金力や労働力ばかりではなく、進んだ技術力をも携えてこの地に渡来し、開発を進めながら定着していったことを示唆している。
またこの地の開発に重要な役割を果たしうるような存在であったからこそ、彼らはこの地に土着しさらに大きく成長することができたといえるであろう。


東北社会と大規模経営体について、この地の圧倒的な大自然と、そこでの複合的な生業の有りようこそが、それらを統合しつつ開発を推進しうる主体として、この地に固有の大規模経営体を生み出したのではないかと考えてきた。


※大規模経営体=豪壮な屋敷構えを有する東北特有の歴史遺産でありながらその歴史的評価は分かれている。
書名にあるように「海商」ということになるのだろう。

少しずつ、三陸が身近になってきたようです。

近世南三陸の海村社会と海商
クリエーター情報なし
清文堂出版


アマゾンで見てみると新品はなく中古のみですね。それも表示価格(7600円)の倍近い。注目されているということでしょうね。


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