内的自己対話-川の畔のささめごと

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「技術」(« technique »)と労働(« travail »)とは違う ― シモンドン研究を読む(18)

2016-09-20 05:36:47 | 哲学

 昨日読んだ箇所の直後に、シモンドンは、「技術」(« technique »)と労働(« travail »)との区別を導入する。以下、説明的な補足を若干加えつつ原文(p. 512)をほぼ忠実に訳せば以下のようになるだろう。
 対象に直接働きかける技術と共同体(あるいは社会)の中で与えられた約束事に従って実行される労働とは違う。技術者は、単に与えられた仕事を実行する労働者ではない。
 労働は、共同体の他の成員たちには隠された自然的対象への直接的な働きかけという性格を失うことで、もはや厳密な意味では技術ではありえない。なぜなら、真正の技術者は、共同体に隠された或いは接近不可能な対象とその共同体との間の媒介者だからである。
 私たちが今日の社会で技術者と呼んでいる人々は、実のところ、専門化された労働者たちであり、彼らはもはや共同体にとって何か隠された領野との関係をその共同体にもたらす力能の所有者たちではない。すっかり解明され顕にされた技術(つまり対象と間に形成された安定的関係の維持のためのスキル)は、もはや技術ではなく、一種の労働である。一定の手続きを繰り返し行うだけのいわゆる「スペシャリスト」は、真の技術者ではなく、実のところ、労働者である。
 真正な技術的活動は、今日、科学的探究の領域に見出される。科学的探究は、まさにそれが探究であるがゆえに、未知の対象あるいは属性に向かって方向づけられている。
 自由な個体とは、探究を行う者であり、それによって非社会的(あるいは超社会的、または複数社会に通底的な)対象との関係を設立する者である。


















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