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「生きろ 島田叡 ―戦中最後の沖縄県知事」 佐古忠彦監督 ○

2021-03-09 | 2021映画評


「生きろ 島田叡 ―戦中最後の沖縄県知事」 佐古忠彦監督 ○

 1945年、沖縄戦中にいきなり沖縄県知事として赴任した民主的文官の苦悩を、多くの証言でドキュメンタリー映画としてまとめました。
 アメリカからの空襲が激しくなる中、前任者が逃げるように職務から離れたがために家族と別れ単身赴任します。戦意高揚が叫ばれ、軍が牛耳る沖縄で当時としては珍しい民主的考え方だった島田叡(しまだあきら)は少しでも県民の命を守るために苦心します。しかし、軍の力が強く、できることはあまりありませんでした。戦時下の教育により、捕虜になるよりも自決や玉砕こそが美徳とされた時代、島田はそれに反し、周囲の若い人々に向かって「何があっても生き抜くのだ」と言い続けます。そして、自身は沖縄戦組織的戦闘終結直後、南部の摩文仁の軍医部壕を出てから消息を絶つのでした。

 東大野球部として活躍し、人柄も魅力的な有能な人物が「戦時下」という不条理な時代に翻弄され思うように力を発揮できず悔しい思いです。もう少し遅く生まれていたら社会のリーダーとして活躍できたであろうと思うと残念なことです。島田に限らず、多くの才能が戦火に散っていったことは大きな損失です。
 島田に関する資料は1枚の写真しかない、にもかかわらず証言のみで「人となり」を紹介できたことにこの作品の素晴らしさがあります。また、主題歌「生きろ」を作詞・作曲した小椋佳が力強く歌い上げます。

 佐古監督のドキュメンタリー映画としては、「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」(2017)、「米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯」(2019)に続く第三作目。

 タバコは、なし。無煙です。


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