折にふれて

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まつやで出すものは何でもうまい

2017-07-23 | 味処

その日、仕事を終えたらぜったいに行くと決めていた場所があった。

神田・須田町、蕎麦の老舗「まつや」である。

というのも、ついひと月ほど前に友人に誘われて初めて訪れたのだが、

そのとき食べた「もり蕎麦」の味が忘れられなくて、

東京出張の時はかならず行くと決めていたのだ。

最後の仕事を終えたのが赤坂見附。

そこから「まつや」のある淡路町駅までは地下鉄丸の内線一本で行ける。

夕方早い時間ならそう混雑もしないだろうと踏んではいたが、

それでも逸る気持ちを抑えながら地上への階段を急いでいた。

前回訪れたときは昼時、店の前まで人があふれていて、

合い席で小さくなりながら蕎麦をすすったのであるが、

今回の目的は「蕎麦」だけではない。

ここは食通として知られる池波正太郎氏が通った店としてもよく知られている。

「鬼平犯科帳」には、長谷川平蔵が酒のあてとして蕎麦をすするシーンが何度となく出てくる。

おそらくは「まつや」がモデルだと思うのだが、

「鬼の平蔵」のように粋に蕎麦と酒を楽しみたかったのだ。

 

午後6時前にもかかわらず、店内はすでに宴もたけなわ状態。

まずは日本酒を注文。

つけだしの蕎麦味噌をなめながら、ひと肌の燗酒をちびりと。

小さなお猪口なので、一合ばかりの酒にもかかわらず、

何度も継ぎ足せてなんとなく得した気分になる。

そして、お待ちかねの「もり蕎麦」。

薬味といえば白葱だけで、海苔はもちろん山葵もついてこない。

そばに七味唐辛子を直接ふりかけ、そして濃い目のつゆにくぐらせて口にはこぶ。

香り豊かな二八蕎麦に七味、そして受け継がれたつゆ。

この味の組み合わせと食べ方が新鮮でこの上なく美味いのである。

そしてまた、酒をちびりと。

思わず、鬼平のように「うめぇ」と言ってみたくなる(笑)

ところで、まつやにあるのは蕎麦だけではない。

蕎麦屋としてはメニューが豊富でうどんもあれば丼物もある。

天だねや焼き鳥などつまみも充実している。

しかし、その楽しみはさらに次回に取っておくとして、

最後に池波正太郎氏の「まつや」評を。

「まつやで出すものは何でもうまい。それでいて蕎麦屋の本道を踏み外していない。」

それがほんとうの老舗というものなのだろう。


折にふれての選曲。

「まつや」は初めてと書いたが、

実はこの界隈そのものには馴染みがある。

もう40年近くも昔の話、この近くにあった大学に通っていたので

当時の東京ではもっとも思い出深いところではあるのだ。

ところがである。

けっこう細い路地まで記憶しているにもかかわらず、

戦災を免れ、建築物としても歴史的遺産といえるこの一画がすぐ近くにあることは知らなかったわけだから、

今から思えばずいぶんともったいない過ごし方をしていたものだと思う。

さて、ノー天気に御茶ノ水界隈を闊歩してたあの頃、頻繁に聞いていたジム・クロウチの曲。

Jim Croce   I Got A Name

遅咲きの歌手として脚光を浴びたものの、

不慮の飛行機事故でわずか30歳で亡くなった彼。

日本での人気が急上昇したのは亡くなったあとのことだったと記憶している。

 

 

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