見もの・読みもの日記

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台湾旅行余話2・故宮博物院(台北)一日遊

2016-05-10 22:20:23 | ■中国・台湾旅行
國立故宮博物院(台北)(2016年5月5日)

 見て歩いた順に、記憶をたどりながらレポートする。

【103,104室】「唵嘛呢叭咪吽(オンマニペメフン)-国立故宮博物院所蔵チベット仏教文物特別展」
朝イチだったので人がいなかった。はじめに、あまりチベットふうでない色鮮やかな羅漢図(清代?)が並んでいた。仏像や仏具もあったが、展示の中心は経典。チベット式の経典は、横長の長方形の紙に経文を書き(または刷り)、積み重ねる。綴じはしない。上下に飾り板を当ててバンドで固定し、黄色い布でくるむ。さらに美麗な飾り版を当て、バンドで縛って布でくるむことを繰り返す。展示では、経文や飾り板の豪華な装飾に注目するとともに「包みかた」を実演するビデオが放映されていて面白かった。ビデオの最後には「北京故宮博物院技術指導」への謝辞が出た。

【101室】「慈悲と知恵-宗教彫塑芸術」
あまり大きくない展示室だが、古代(北魏、北斉)から明清まで、全時代の様式を通覧できるのが面白い。やっぱり日本人には隋唐の仏像が親しみ深く感じられる。室外の展示ケースに明代(?)の大きな三尊像もあった。

【102室】オリエンテーション・ギャラリー
壁の年表で中国史の概略をおさらいする。室外に館蔵「清明上河図」の複製&デジタルアニメーション展示があった。

【106室】「集瓊藻-故宮博物院所蔵珍玩精華展」
比較的新しい時代の工芸、文具、装身具など。超絶技巧の「集瓊藻」(象牙製の多層球)や皇帝のおもちゃ箱「多宝格」もこの部屋。中国人の団体客でものすごく混んでいた。

【108室】「貴族の栄華-清代家具展」
大きな展示ケースの前後二面に「書斎」と「居間(客間?)」のしつらえが展示されていた。卓上や書棚には文房具や書籍などが置かれていて、雰囲気を出していた。

【105,107室】特別展室(閉室)

【203室】「朝星の如く貴き-清朝宮廷に収蔵された12~14世紀の青磁特別展」
「貴似晨星(朝星の如く貴き)」は乾隆御製の詩句。清朝の歴代皇帝に愛された宋代の官窯磁器を展示する。見ものは汝窯の水仙盆。はじめに(1)縁つき足あり (2)縁なし足あり (3)縁なし足なし、の三種が並んでいた。(1)(3)は青が強く、(2)は少し緑がかっている。(3)はかなり大きく、カレー皿になりそう。究極の名品といわれる乾隆帝鍾愛の水仙盆は出ていないのか?と思ったら、別の展示ケースにひとつだけ単独で飾ってあった。あ~美しい!! 日本で好まれた「青磁」よりも青みが強い磁器が多い。龍泉窯の磁器も、日本で見るものより緑色っぽくないと感じた。

【201,206,207室】中国歴代陶磁器展
古代から明清まで歴代の陶磁器を展示。明代の絵入り磁器がかわいい。『五彩魚藻盤』(正徳)(※画像あり:典蔵台湾)や『青花五彩百鹿尊』(万暦)(※画像あり:中国語サイト)がお気に入り。龍も可愛かった。中国の陶磁器というと、一分の隙もない芸術品が思い浮かぶのだが、あれは満洲族の好みで、漢族は意外と可愛いもの好きなんだろうか。清代陶磁器の粋『粉彩桃紋天球瓶』はやっぱり好きだ。10年以上前も特別待遇の展示をされていたが、現在も独立のケースに展示されている。四方から鑑賞できるのが嬉しい。そう言えば、以前は写真を撮り放題だったが、今は完全に禁止だった。

お腹がすいてきたので、ここで早めのランチ。4階のカフェ「三希堂」が閉まっていたので、一時退出(手の甲にスタンプを押してもらう)して、1階入口横の「居賦」で簡単に済ませる。待たずに済んで、ありがたかった。

【210室】「清明上河図特別展」(※特設サイト:日本語
今回、最も楽しみにしてきた特集展示。同館が所蔵する8点の「清明上河図」を展示する。「清明上河図」といえば、北京故宮博物館が所蔵する張択端の作品が有名であるが、多数の模作・類作が存在する。それぞれ絵画的・風俗資料的に独自の価値を持つことは、日本の「洛中洛外図屏風」によく似ている。台北故宮博物院のイチ推しは「清院本」と呼ばれ、陳枚、孫祜、金昆、戴洪、程志道という5名の画家による合作。冒頭に乾隆帝の御題詩、御印、「繪苑璚瑶」の四文字が記されている。穏やかな農村風景に始まり、川(運河)に沿って、次第に人の姿が増え、虹橋を経て、城内に入る。城外には豊かな水をたたえた湖と幽玄の風景を楽しむ貴人の別荘(王宮)がある。こういう明清の絵画は、なかなか日本に来てくれないと思うので、見に来てよかった! もちろん図録もゲット。

【202,212室】「造形と美感-明清山水画の精粋」
だんだん明清の山水画が好きになっているので、日本で見られない作品が見られて嬉しかった。「山水画」と言いながら、人物や人家が描き込まれているのが多いのは中国人の好みかな。私は、李世倬筆『画連理杉』や鄒一桂筆『太古雲嵐』のような、人物を描かない清代の山水画が好きだ。

【202室】「巨幅名画」
回廊の壁の大きなケースを使って、大判の絵画を展示。濃彩、淡彩、墨画などいろいろ。ほぼ明清の作で、張大千が寄贈した伝・董源筆『江堤晩景』だけは、元代前後の作と考察されている。ところで同館は軸物を飾るとき、上から吊るすだけでなく、下の軸棒を受ける台を添えて、全体が伸び切らないようにしていた。あれは中国式なんだろうか。

【208室】「国立故宮博物院寄贈書画展」
現代物かと思ったら、張学良氏寄贈(!)の王守仁(陽明)筆『山水』なんてのがあって、びっくりした。大好きな朱耷(八大山人)の書『行書芸韞帖』はすぐ分かった。

【204,206室】「書中の龍なり-歴代十七帖法書名品展」
「書中の龍」と呼ばれる王羲之「十七帖」の臨本や模本、刻帖など関連作品を展示。「十七帖」といえば、京博の上野本を思い出した。乾隆帝が熱心に王羲之の書法を学んでいるのが面白かった。

【301室】「鐘・鼎の銘文-漢字の源流展」
【302室】「南北故宮 国宝薈萃」
通常は302室に例の「翠玉白菜」が展示されているらしいのだが、現在、2015年12月に開業した故宮南院(嘉義県太保市)で出張展示中のため、インドの女神像とベトナムの磁器が展示されていた。

【303室】「皇帝の鏡-清宮廷の鏡鑑文化とコレクション」
日本古代の銅鏡に比べると型が小さく文様もゴツくなく、実際に使われていた感じがした。

【306,308室】「敬天格物-中国歴代玉器展」
【304室】「水源の清らかな水が流れ来る-宋・遼・金・元玉器特別展」
【305,307室】「古代青銅器の輝き-中国歴代銅器展」
玉器と銅器は中国人が大好き。とても混んでいた。

前回、故宮博物院に来たのは10年どころか15年も前の話になる。次回はそんなに間を置かず、見たい展示があったら、さっと来てしまおう。南院(アジア芸術文化博物館)もぜひ訪ねてみたい!
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