平川克美
KADOKAWA/角川マガジンズ
『路地裏の資本主義』(平川克美)を読んでいて、
Kindle版で60%ほど経過したところで、
「ふむふむなるほどね~」と膝を打つ。
こんなくだりだ。
デヴィッド・W・モラーの『詐欺師入門』(光文社)は、詐欺の手口の技術指南書であると同時に、詐欺師というものが、実は誰の心の中にも存在することを気づかせてくれる心理学の書としても大変興味深い文学書です。
(中略)
『詐欺師入門』が面白いのは、有能な詐欺師の条件が、有能なビジネスマンの条件とまったく同じであるということが描かれているからです。
勤勉さ、倹約、知性、仲間への忠誠、そして仕事に対する情熱。つまり、恒心です。こういったものが備わっていなければ、一流の詐欺師にはなれません。詐欺師にあって、ビジネスマンにないもの。ビジネスマンにあって詐欺師にないもの。この見分けをつけるのは、ほとんど不可能に見えます。
(中略)
もし、ひとつだけ確実な違いがあるとすれば、まっとうなビジネスマンは、自らの仕事が詐欺になるかもしれないという危険性を意識することができるところに立っているということでしょうか。詐欺師は、自らの詐欺行為の内実を批判的に検証することが原理的にできません。詐欺師にはビジネスが持っている基底がありません。
ここでの基底が意味しているのは、詐欺師はどのような意味でも商品はつくらないということです。商品をつくるために時間を使うことはしないということです。
(中略)
詐欺師とは、畢竟するところ、富の収奪を最短距離で可能にしようとする人々です。かれらは商品をつくって、市場を巡回させ、顧客に届け、顧客の返礼が自分の手元に戻ってくるというような、まだるっこしいビジネスサイクルを嘲笑します。
(Kindle版位置No.1362~No.1389/2378)
してみれば、「詐欺師という仕事」の対局にあるのが、
私たちが日々営む「土木という仕事」だ。
土木という仕事は、社会インフラ整備というモノづくりを通じて報酬を得る、という、とびきりの「まだるっこしいビジネスサイクル」のなかにある商売なのである。
だが、そういう「土木という仕事」に携わる私たちにしてからが、
ともすれば、最短距離で利益を上げよう、あるいはショートカットで技術を身につけようと、
そういう企てを図ってしまいがちである。
まっとうなビジネスマンは、自らの仕事が詐欺になるかもしれないという危険性を意識することができるところに立っている。
という平川さんの言葉は、あくまで「まっとうな」という但し書きつきであることを、
肝に銘じておかねばならんのだわ。
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