漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「耒ライ」<すき> と「耜シ」<すき>「誄ルイ」

2021年03月04日 | 漢字の音符
 ライ・すき  耒部 

解字 甲骨文字の単独字はないが、耤セキ(下欄の参考図)の字からスキの部分を抜き出した。土を掘り返すスキの形の象形で、先が二つに枝分かれし、足をのせて踏む横木がその上に描かれている。金文は神農耕作図のスキに近くなった。篆文は耤セキの金文をへて成立した形で、木(柄)の上に斜線が三本はいった形になったが、現代字は一本減った耒ライとなった。耒ライは部首となり、スキを用いる意味の漢字に用いられる。中国の伝説に神農氏がスキを発明し民に耕作を教えたとされ、神農がスキを用いて耕作する図がある。
 耒  神農耕作図   
意味 すき(耒)。土を掘り返す農具。「耒耕ライコウ」(すきで田畑をたがやす)「耒耜ライシ」(すき。耒も耜も、すきの意)「耒鍤ライソウ」(耒も鍤も、すきの意)「耒耨ライドウ」(すきで耕して雑草を除く)
参考 耒ライは部首「耒:すき・すきへん」になる。左辺に付いて土をほりかえす意を表す。主な漢字に「耘ウン(耒+音符「云ウン」)」「耗モウ(耒+音符「毛モウ」)」「耕コウ」(耒+井の会意)「耜」(耒+㠯(以)の会意)がある。

イメージ
 「すき」
(耒・耜)
 「同音代替」(誄)
音の変化  ライ:耒  ルイ:誄  シ:耜

すき
 シ・すき  耒部    

篆文第一字は「木(き)+㠯(以)」で木を以て耕す形。篆文第二字(六書通)は「耒ライ(すき)+㠯(以)」の会意で、耒を以て耕す形。いずれも䎣(耒スキで以て耕作する)の意。㠯は、以と元は同じ字で以の古い形(但し、本来は㠯の左上のタテ線が欠けた形だが、ネットでは出ない)。現代字は第二字が継承された耜になっている。どんな形のスキか興味のあるところだが、中国浙江省の新石器時代の河姆渡(かぼと)遺跡から発見されたスキが耜という名で紹介されており、耜の原初形態がわかる。
 河姆渡遺跡出土の骨耜とその復元図
意味
 すき(耜)。耕作に用いる農具のひとつ。土を掘り返す道具。「耒耜ライシ」(すき)

同音代替
 ルイ・しのびごと  言部
解字 「言(ことば)+耒(ライ⇒ルイ)」の形声。発音のルイは耒ライの転音。ルイは累ルイ(かさねる)に通じ、言葉がかさなること。葬式で人々が生前の行いを累ねて述べて死者を悼むこと。
意味 しのびごと(誄)。死者の生前の功徳をたたえること。「誄詞ルイシ」(故人の生前の功業を数え上げて述べる歌や言葉)「誄文ルイブン」(死者の生前の功徳をたたえる文章=誄辞ルイジ

<参考 耒ライのかたちの変遷が分かる字>
 セキ・たがやす  耒部 

解字 甲骨文第一字は、人が二本刃のスキを手にとり使うさま、第二字は片足をスキに当てて踏み込んでいるさまの象形。いずれもスキに脚を踏む横木が描かれている。人がスキを用いて土を掘り起こすこと。金文第一字は「人が両手をのばしてスキをもつ形+昔セキ(かさなる)」の会意形声で、人がスキで掘り起こした土を重ねるように耕すこと。第二字は、スキと手の形が一体となって右側の両腕を伸ばした人と分離した。篆文は「耒ライ+昔」の耤セキとなったが、金文で耒ライが人から分離してゆく過程が分かる。
意味 たがやす(耤す)。土を起こして重ねる。「耕耤コウセキ」(耕も耤も、たがやす意)「耤田セキデン」(古代に天子自らが耕した田畑。祭祀用の穀物を天子自らが耕作する農耕儀式。)

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