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歳を取らないと分からないことが人生には沢山あります。若い方にも知っていただきたいことを書いています。

カーシェアリング

2017-11-29 06:17:25 | 日記

カーシェアリングは登録をした会員の間でを共同使用するシステムで、レンタカーよりも短い時間の利用を想定しています。発祥はスイスです。

利用者にとってのカーシェアリングのメリットは、車を使用する費用が安く済むことです。車を自己所有する場合は取得価格が高額である上、自動車取得税自動車税または軽自動車税自動車重量税駐車場代、自賠責保険代、自動車保険代、車検代、整備費用など多額の固定費が所有者に重くのしかかってきます。

近頃は若い人たちが車の所有を目指さなくなりましたが、大都会では車を所有したとしても通勤には使えず稼働率がまったく低いのです。一方公共交通機関がない地方では車がないと日常生活が成り立ちません。

歳を取って運転が出来なくなり買い物や通院に難渋している高齢者は、山間部の過疎地に多いと云われますが、実は都会の住宅地にも大勢いて、高齢者にとっては都会の真ん中も山奥と同じ過疎地なのです。

スイスでは1970年代に都市に大量の車が流入して渋滞したため、都市への車両の流入の大規模な規制が実施され、新規格路面電車バスなどの公共交通機関の充実で都市部の足を確保しました。

車を持てない都市の住民は、郊外にカーシェアリングの小さな組織をいくつも立ち上げましたが、事故の責任問題の解決やサービスの多様化などの必要性から、3つのカーシェアリング会社に次第に収斂していきました。

1997年には国家主導で3つのカーシェアリング会社を統合してレールリンク社が設立され、スイス国鉄との相互乗り入れを行うなどスイスは公的カーシェアリングの促進を図りました。

日本で初めてカーシェアリングを営業したのは1988年の株式会社シーズで、外車専門のカーシェア事業として話題になりました。その後カーシェアリングは長らく普及せず、日本で本格的に事業化されたのは近年です。国内の会員数は2015年時点で68万人いて、2020年には200万人に達するとの予測もあります。

カーシェアリングではマンションの前、住宅街の一角、スーパーやコンビニの駐車場の一角などが専用の駐車場に当てられています。利用を希望する会員はインターネット電話予約して、予約時刻に駐車場に出向いて非接触式ICカードでドアを開け、利用者認証を行うだけで車が使えます。専用の駐車場が近ければマイカーと同じ感覚になります。

無人拠点でレンタカー型カーシェアリングを行う事業者は、専用のオンラインシステムを用いた車両管理を行うように法令で義務付けられています。短時間で比較した場合はレンタカーより割安で、半日・一日のレベルではレンタカーが割安となります。

カーシェアリングは固定費を分散させるために、ある程度の会員数の規模が必要です。故障・全損事故・経年劣化による車両の入れ替えへの対処が欠かせず、2011年から2012年にはカーシェアリング事業から撤退した企業もありました。

2016年7月25日米国のEVメーカーのテスラモーターズが10年の中期経営計画の中で、カーシェアリング事業への進出を表明しました。ほとんどの車は1日の5~10%程度しか使われていません。オーナーが仕事中や旅行中など車を使わない時間帯にカーシェアリングに車を提供し、この収入を月々のローンやリースの支払いに充てると、ほぼすべての人がテスラ車を所有できるほど、実質的に所有コストが削減できると見込んでいます。テスラの主張するのは個人の所有車を他人に貸し出すカーシェアリングで、スイスの公共のカーシェアリングとは異なる発想です。

個人の所有車だけで需要をカバーし切れない場合は、テスラがシェアリング車両を用意します。テスラは「オーナーはテスラ・アプリのボタンをタップするだけで、自分の車をテスラ・シェア・フリートに加えられる。完全自動運転が法的に認められるようになれば、利用者はどこからでもテスラ車を呼び出せるようになる」とコメントしています。

確かに車は1日中走行しているわけではなく、95%は停止しています。大都市ではかなりのスペースを駐車場に取られ、ロサンゼルスでは半分近い面積が駐車場で占められていると云います。他方、交通事故による死亡者は米国だけで年間3万人、全世界で100万人います。車を巡るこのような社会的な課題を解決するために世界で今注目されているのが、「カーシェアリング」「ライドシェアリング」「自動運転」の3つです。

ドバイを拠点にするCareemは中近東で「ライドシェアリング」を提供し、モロッコからパキスタンまで7億人を抱える12か国、60都市をカバーしていて、現在20万人のドライバーと800万人のユーザーがいます。

中近東では人口の45%が携帯電話を持っていますが、公共交通は未発達で車も少なく、車以外の移動手段がありません。まだ女性が車を運転できない国もあります。同社のサービスを使えば交通手段としてだけでなく、生活の質の改善にも貢献します。

車はますます燃費が良くなり環境に優しくなっていて、自動運転テクノロジーの発展に伴い、軽率な運転による事故を未然に防げるようになり、より安全になりました。

現在はポケットサイズのコンピューターで、人間が一切操作しなくても車庫から玄関まで車を呼び出すことができ、出先の駐車場では空きスペースを車が探して自動的に駐車します。走行中も前方の車に安全に追従するだけでなく、自動で追い越すことまで実用化されています。

通信関連分野の調査団体であるABIリサーチによると、カーシェアリング産業は3段階に分けられると云います。まず基盤となるのが決められた場所に停めてあるクルマをネットで予約し、自分で使用するものです。次の段階はUberのようにドライバーが迎えにきて、目的地まで連れて行ってくれるタクシー型のシェアリングサービスです。

3つ目の段階はこの2つのサービスの組み合わせで、自動運転による車が指定した場所まで迎えに来てくれて、自動運転で目的地まで運んでくれるサービスに発展するものです。

完全自動運転のカーシェアリングが利用可能になれば、利用者の考え方が変わってくるでしょう。移動の目的だけで自分のクルマを所有することはなくなりそうです。ABIリサーチは2030年までに、完全自動運転型カーシェアリングの利用者が4億人になると見込んでいて、結果として1台の車がより効率的に使われることになります。
ABIリサーチのドミニク・ボンテ氏は「新たな形のカーシェアリング産業が完全に機能する状態になれば、自動運転型サービスは自動車業界に大きな変化を及ぼす。自動車オーナーの数は減少し、移動手段における公私の区別はなくなって、人々の移動はより活発になるだろう。そして自動車業界全体の統合が起こるだろう」と述べています。

今の軽自動並みに小さいルノー4CVを私が手に入れたのは1959年(昭和34年)でした。当時は交通量がまったく少なく、吉田首相のワンマン道路以外に首都高速も有料道路もなく、都会から少し離れると舗装道路すらなくて砂利道でした。その頃は確かにフルに運転を楽しむことが出来たのです。

我が国が高度成長期に入り車の台数が増え始め、東京の銀座で初めて30分間交通渋滞が起きたのもその年で、やがて一家に一台の自家用車の時代になりました。休みの日になると車に乗るのが嬉しくて仕方がないサンデードライバーが、笑いながら運転している車とすれ違うことが増えました。

高速道路も混み始めてくると、ドライバーは前を走る車と、後ろから来る無謀運転の車やパトカーを見ているだけになります。狭い曲がりくねった一般道の山道でも、見ているのは崖と路肩と対向車で、運転は楽しめても周りの景色など見る余裕はまったくありません。

ヨーロッパで高級スポーツカーを所有する金持ちは、アルプス越えではプロのドライバーを雇い、自分は運転せずにアルプスの景観とプロの運転技術の両方を楽しむのだと云われていました。

混雑する都会では移動手段としての日常の車の運転は、気を使いイライラすることはあっても運転を楽しむ余地はありません。自動運転はタクシーと同じで移動手段としては楽ができますから、自動運転車に慣れれば、都会の混雑の中で誰も自分で運転したいとは思わなくなるでしょう。

観光旅行へ行って現地で車を借りても自分では運転せず、自動運転でその土地の風景を存分に楽しむようになる気がします。自分で運転しなくなれば、自分で車を所有する意味もなくなります。経済的負担の大きい個人所有をやめ、自然にカーシェアリングを選ぶようになるでしょう。

カーシェアリングが普及する鍵は自動運転です。自動運転車が普及すると人手を使わずに配車が可能になり、使用後の返却にも問題がなくなります。酔っ払い運転や高齢者の不注意や操作ミスによる交通事故が大幅に減り、そもそも運転免許を取得する必要もなくなります。

将来自動運転カーシェアリングが、どこででも、誰にでも、利用できるようになれば、運転できない人が利用して買い物に行くことができ、シェアカーとバスや電車の組み合わせで移動時間を節約することもできます。過疎地域での移動困難者が救われるのみならず、通勤や旅行などの一般の人の生活そのものを大きく変える可能性があり、社会に与える影響は小さくないでしょう。

車の技術革新では燃費の向上やHV・ EV車の出現、安全装置の標準化、乗り心地の改善など様々な進歩が日々すでに起きていて、自動運転の実現は目前にあります。自動運転のカーシェアリングが普及すれば、電車や徒歩・自転車などの現在の交通手段を、シェアカーに変更する人が多くなることが予想され、シェアカーの台数の確保が必要です。

一般国民向けにはスイスと同じように、公的交通機関として地方自治体がカーシェアリングを管理するのが妥当でしょう。渋滞を予想しての車両台数の調整や、最寄りのバス停や駅までの限定した運用、少人数の相乗り、車体の小型化など、都市中心部の混雑緩和に繋がる対策は地方自治体なら容易にこなせるでしょうし、自動車保険の考え方も整理しやすくなるでしょう。

車を可愛がりたくて個人で車を持ち自分で運転するのも結構でしょうし、スポーツカーなど特定の車種に乗るために仲間内でカーシェアリングをするのも結構ですが、更なる高齢化社会の到来に向けてはテスラ型の個人所有の車の活用ではなく、スイス型の公的機関による秩序だったカーシェアリングの普及促進が望まれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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