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歳を取らないと分からないことが人生には沢山あります。若い方にも知っていただきたいことを書いています。

ワークシェアリング

2018-05-30 06:59:53 | 日記

「ワークシェアリング」は労働者一人当たりの労働時間を短縮して雇用者数を増やす仕組みです。ワークシェアリングの類型には雇用維持型、雇用創出型、多様就業対応型があります。オランダ・ドイツ・フランスなどで導入され、オランダでは失業率を大幅に低下させた実績があります。

雇用維持型ワークシェアリングは、景気の変動や産業構造の変化によって企業がそれまでの雇用者数を必要としなくなった場合、一人当たりの労働時間を短縮して仕事を分け合い、雇用を維持して解雇者を出さなくするものです。

雇用創出型は過剰な超過勤務による過労死がある一方で失業による自殺者も出る矛盾に対して、超過勤務を減らして労働時間を適正なレベルに抑え、超過勤務分の労働を補う新たな雇用を創出します。

多様就業対応型は働き方の自由度を高めるために正規の労働時間の他に短時間労働の選択肢を設け、高齢者や子育て中の女性が仕事を継続しやすくするものです。

 

オランダは天然ガスの大産出国で1970年代の石油ショックの際、エネルギー価格の高騰で大きな収益を上げました。国家財政が潤って高レベルの社会福祉制度が構築され労働賃金も上昇しましたが、為替レートの上昇と高賃金による生産コストの上昇で輸出競争力が急速に低下しました。

資源エネルギーブームが去ると高レベルの社会福祉制度は国家財政を圧迫し、雇用者数が減って失業率が14%に達し、経済成長率がマイナスに転じる大不況となります。

1982年政府は雇用確保を目指して、政府の負担で労働者の収入減を補う減税を行い、企業の社会保障負担を低減して、雇用者団体と労働者団体との間で賃金削減・労働時間短縮・雇用者数増加を合意させました。

1996年の「労働法」改正で、フルタイム労働者とパートタイム労働者の間の時給・社会保険制度・雇用期間・昇進などの労働条件の格差を禁じ、2000年の「労働時間調整法」では、労働者が週35時間以上のフルタイムと35時間未満のパートタイムを自由に選択できるようにしたのです。

年間労働時間は1979年の約1,600時間から2005年には1,345時間に減り、パートタイム労働者の比率は1983年の18.5%から2001年には33.0%に上昇し、失業率は1983年の14%から2001年の2.4%にまで低下しました。

オランダは週38時間労働で残業は法律で禁止です。フルタイムもパートタイムも年齢・性別を問わず「同一労働同一賃金」で時給は約2,000円と高く、子育て中の女性にもパートタイムで働きやすい労働環境を達成しました。

フランスは1982年に労働時間を週40時間制から39時間制に改め、2000年からはさらに35時間制に短縮して、雇用の維持・拡大のためのワークシェアリングを実施しました。

フランスでも給与の減額が問題になり、39時間制に移行する時点では給与がカットされなかったため企業が新たな雇用拡大には応じず、35時間制への移行の際にも労働組合が給与カットに抵抗しました。政府はワークシェアリング実施企業に助成金を出すことで解決しました。

北欧諸国ではいずれも厳密な意味でのワークシェアリングではありませんが、同一労働同一賃金を基本とした強い労働規制が行われていて、オランダと似た労働環境を構築しています。

日本企業は1998年頃から正規雇用者の解雇を進めて総賃金を抑制してきましたが、2001年からはより厳しいリストラが進み雇用収縮が歴然としました。2001年8月に失業率が5.0%となって世間を驚かせその年5%台が定着しました。

平成不況では解雇を避ける目的で政府がワークシェアリングを推奨しましたが、ワークシェアリングに成功した国々のように政府主導で残業が禁止されることはなく、フルタイムとパートタイムの給与格差も禁じられず、雇用保険・労災保険などの雇用者側の経費増にも配慮しなかったため、我が国でワークシェアリングは根付きませんでした。

我が国の労働組合は正社員が中心で、正社員と非正社員との格差をなくす政策には労働組合の反発が強く、政治的に格差をなくすのは困難と見られています。企業が過去の景気後退期に削ったのはパート労働者でしたが、現在では賃金格差を狙って正社員をリストラし非正規労働者を増やしています。

女性の社会進出は増えましたが家計の不足を補うための就労で、企業が社会保障費の負担増を避けられるパートタイマーの多いのが実情です。我が国では賞与を合わせた正社員の給与とパートタイマーの給与との格差は大きく、男性10対女性6と云う男女賃金格差も合わせると、女性パートタイマーには男性正社員の3分の1程度しか支払われていません。

政府・経営者側は現下の厳しい雇用情勢を逆手にとって、雇用確保を建前にワークシェアリングの導入を進めようとしていますが、その狙いは正規雇用者のリストラと非正規雇用者の採用による人件費総額抑制の正当化です。このことは日経連の労働問題研究委員会の報告で、雇用の維持・確保と総額人件費の抑制を両立させるためには緊急避難的なワークシェアリングが必要とされていることからも明らかです。

我が国の雇用形態では残業を前提として業務量が設定されていて、表に出ない長時間のサービス残業がまかり通っています。「霞が関国家公務員労働組合共闘会議」では霞が関の中央省庁に勤める4万5千人の国家公務員が、年間に総額132億円のサービス残業をしていると試算しています。一般企業でも解雇されることを不安視する労働者がサービス残業に追い込まれている実情があります。

我が国では国家公務員は労働争議が禁止され、一般企業の労働者は組合参加が少数で、組合は企業の御用組合と化しています。政府が形の上でワークシェアリングを唱えてみたところで、狙いが企業寄りであるのは明白です。

そんな中で昨年、女性医師だけが勤務する産院でワークシェアリングが実施されているのがテレビで紹介されました。通常病院医師の勤務体制は日勤に続いて当直に入り翌日の日勤も免除されません。女性医師も男性医師と同様の勤務を求められるので、この勤務体制下では女性医師の子育ては困難です。

産院は24時間、365日、いつでも出産には対応しなければなりませんが、産科医の過労のため産院が次々に廃業しているのが現状です。通常の勤務体制ではとても産院の勤務が務まらないとして、女性産科医が集まってワークシェアリングの産院を開設したのです。

産科医は常に的確な判断と処置を瞬時に要求される高度の専門職ですが、ワークシェアリングによってそれぞれの勤務時間を厳守しても、産院の業務が適正に遂行できています。

この場合は雇用者と非雇用者の縦の関係は存在せず、C2Cのシェアリングエコノミーのような横の関係しかないためかも知れません。いずれにしても我が国で理想的なワークシェアリングが行われている、数少ないケ-スであると思われます。

我が国にワークシェアリングは根付きませんでしたが、シェアリングエコノミーは定着しました。最近は欧米でUberなどのライドシェアリングサービスがタクシー業界を超える巨大産業になりましたが、我が国でもAirbnb(エアビーアンドビー)を利用して日本を訪れたゲストは2010年以来50万人を超えています。

我が国ではシェアリングエコノミーの将来像がまだ充分把握されていないようですが、B2Cの普及で消費者の物品購入の主流がネットショッピングに移り、デパートを始め既設の店舗群の廃業が顕在化しています。

 

昨年AIの採用で三大銀行の3万人以上の人員削減が行われるニュースが流れ、AI失業が身近な問題として社会にショックを与えましたが、銀行自体もネット決済やクラウドファンディングの普及で、金融機関としての存在意義を失いつつあります。

自動車の駈動が精密機器のエンジンから単純なモーターに替わり、自動運転車のカーシェアリングが普及すれば、世界のトヨタもこれまでの生産台数の維持が不可能なのは目に見えているでしょう。

政府は2018年4月6日最重要法案と位置付ける「働き方改革」関連法案を閣議決定しました。与党内に長時間労働の規制そのものに反対する企業寄りの声が根強くあるなかで、政府は長時間労働の規制を柱とする法案の成立を目指していますが、野党側は月100時間の残業上限設定がすでに過労死ラインだと批判しています。

年間の残業時間の上限を720時間とし違反には罰則を適用しますが、法曹関係者からは残業時間の上限設定が、長時間残業の合法化に繋がると危惧する声も聞かれます。

高収入の一部専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度」についても、野党は長時間労働を助長するものと指摘しています。裁量労働制の拡大を巡って2018年2月14日安倍首相は、「裁量労働制の方が労働時間が短くなる」とした厚労省の偽りのデータに基く過去の答弁の撤回に追い込まれました。

我が国の法人税は平成30年度に23.2%に引き下げられますが、38.01%だった2013年3月期に大手各社の実際に払った税金は国民の想像を絶する少額です。租税特別措置による優遇税制や国際的な節税スキームを駆使し、法定実効税率の何分の一、何十分の一と云う企業が多いのです。

法定実効税率の最も低かった三井住友フィナンシャルグループは税引き前純利益1,479億8,500万円、法人税等支払額は300万円、実効税負担率は0.002%でした。2位のソフトバンクは税引き前純利益788億8,500万円、法人税等支払額は500万円、実効税負担率は0.006%です。これだけ企業寄りの政策を取る政府の提唱する「働き方改革」が、労働者のための「働き方改善」に繋がると素直に受け取れないのは当然でしょう。

オランダでワークシェアリングが成功したのは、シェアする職業がヒトにまだ充分に残されていた時代でした。我が国でもその時代に実施されていれば現在でも大きな意義があったと思われますが、我が国にとってのワークシェアリングは正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差を狙った、目くらましに終わったと云って間違いなさそうです。

現在若い人たちを結婚もできない経済状態に追い込みながら少子化で労働力が失われると騒いでいる人たちは、生産人口はあっても働き口がなくなる将来の見通しにどう答えるのでしょう。ヒトの多くの仕事が消えてしまう時代を迎えては「働かざるものは食うべからず」の社会のしきたりを変える手段を取り、みんなが同等に食べることを保証された上で自由に自分の仕事が出来るベーシックインカムに移行することが有力な手段でしょう。

 

 


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クレサンベール

2018-05-16 06:27:42 | 日記

品質の優れた宝石は装飾用としても財産としても高く評価されますが、色調透明度・硬さ・光沢など、それぞれの石の美しさが最大に発揮できるようにカットされてはじめて価値が定まります。 古くから王侯貴族が所有し王冠などに取り付けられていた宝石は博物館に収蔵されているものが多く、特に大きな石には名前が付けられて有名になっています。

 

天然の宝石でカットや研磨以外に人の手が加わっていないものは高価で資産価値がありますが、宝石店で通常天然石と謳っている指輪やネックレスは何らかの加工が施されていて、装飾用には適していても資産価値が高いとは云えません。

ダイヤモンドルビーサファイアエメラルドアレキサンドライトが五大宝石と云われ、その他の宝石にはキャッツアイ・トパーズガーネット・翡翠・オパールスピネルムーンストーン瑪瑙・水晶・ペリドットラピスラズリトルコ石ジルコン などがあり、真珠を含めることもあります。

宝石は主として天然の無機物の結晶ですが、ラピスラズリガーネットのような数種の無機物の均質な結晶である固溶体や、オパール黒曜石のように非晶質のもの、珊瑚真珠琥珀のような生物起源のものもあります。

天然のエメラルドは通常内部に無数の傷を抱えていて、衝撃に弱くたいへん割れ易い石です。オパールやトルコ石も乾燥により割れやすく、サンゴや真珠は酸に極端に弱く、コハクは高温ですぐに溶けます。

クレサンベールは人工的な環境で天然宝石と同一の成分から創り出される結晶で、化学成分・物理特性・内部構造は天然宝石とまったく同じです。天然宝石にしばしば見られるインクルージョン(不純物)やヒビが少なく天然宝石より美しいにもかかわらず、ガラスプラスチック陶器などの模造宝石と同様に見做されて不当な扱いを受けています。

クレサンベールは京セラがセラミックスの結晶技術を用い、天然宝石と同じ成分を長い時間をかけて入念に再結晶させたものです。天然宝石には非常に稀な、高い色調と透明感を持ちます。再結晶させた原石は最高と思われる色合いを持ちインクルージョンを含まない部分だけが厳選されるので、育成された結晶の僅か数%だけがクレサンベールになります。

クレサンベールの種類はエメラルド・ルビー・パパラチア・アレキサンドライト・サファイアなどで、オパールはもともと天然でも結晶はつくらず、京セラでは人工的に創られたオパールを「クリエイテッドオパール」と呼んで、クレサンベールに含めています。

                  

クレサンベールのエメラルドの生成工程では、エメラルドと同じ酸化ベリリウム・酸化ケイ素・酸化アルミニウムを成分としながらも、宝石にするには色調や透明度が劣るベリル原鉱石を原料にします。

 

粒状にしたベリル原鉱石を1,410℃以上に加熱してドロドロに溶かし、地球内部のマグマと同じ状態を再現して、その中に結晶が育つ核となる天然のエメラルド結晶の小片を入れます。

マグマの温度を長期間に渡ってゆっくりと下げていくと、エメラルドの結晶を核として結晶が徐々に成長していき、最終的に親指の頭ほどの六角柱のエメラルド結晶になります。最高の結晶が得られる環境を常時コンピュータで制御しますが制御できるのは環境だけで、結晶が美しく育ってゆく過程は石そのものにゆだねられます。

天然のエメラルドは結晶になる過程で不純物が混じることが多く、インクルージョンのない結晶が採取されることはきわめて稀です。クレサンベールは原材料から不純物を出来るだけ取り除いておくためインクルージョンはほとんどありませんが、いかに厳選された原材料からであってもエメラルドである限り、まったくなくすことはできません。

 

したがって生まれた原石が最高品質の宝石となるには、原石中で最高の色合いを示すインクルージョンのない部分だけがカットされ、そのカットされた結晶が熟練した職人によって丹念な手作業で磨きあげられるのです。

最終的に宝飾品として商品化されるのは育成された原石のわずか数%です。さらにそこから熟練の鑑定士が1つ1つ品質検査を行い、GIA(米国宝石学会)に準拠した基準でグレーディングを行います。

クレサンベールが発売されて間もない頃にたまたま見る機会がありましたが、色調、透明度、輝きともに抜群でした。その当時は京セラが創ったと云う以外の知識はまったくなかったのですが、通常目にする天然のエメラルドの色調を超える深い緑色に圧倒されました。

これでは見事すぎて天然物とは見てもらえないなと思ったものですが、クレサンベールのエメラルドは人工的な環境下で、天然のエメラルドの結晶を12か月の長い時間をかけて大きく育てたものなのです。

天然に採取されるエメラルドは、カットするだけでそのまま宝石として使える結晶はきわめて稀です。現在市場に出回る天然エメラルドのほとんどは、インクルージョンやキズに対して何らかの人工的な処理が加えられていますが、よほどの高価な石でない限りクレサンベールの深い色調と輝きには及びません。

天然のオパールはシリカの球が地中の水の中に浮いていたものに熱が加わり、乾燥して硬くなってできたものです。クリエイテッドオパールも水槽の中の二酸化ケイ素の球状シリカに熱が加えられて、乾燥し硬くなってオパールが生まれます。人工のオパールは原石の誕生までに13か月の歳月を要します。

 

カラーストーンにはそれぞれ最高級にランクされる色の目安があります。エメラルドの目安はどこまでも深い透明感と鮮やかさをもつ緑色で、クレサンベールのエメラルドは良質のエメラルドの産地で知られる、コロンビアのムゾー鉱山のものと同様の色合いと云われます。ルビーはわずかに紫がかった鮮明な赤色で、その色が鳩の血に似ていることからピジョン・ブラッドと呼ばれます。

 ブルーサファイヤはコーンフラワー・ブルー(矢車草の青)と命名される繊細なやや紫の入った濃いブルーで、柔らかな光沢が特徴です。サファイアの仲間の中でオレンジとピンクの間の微妙な色のパパラチアはスリランカが唯一の天然の産地で、インド洋の朝焼けの色と呼ばれ珍重されています。

アレキサンドライトは光源によって青緑色と赤紫色に変化する石です。その変色性が重要なポイントで色の変化が顕著なほど評価も高まります。1830年ウラル山脈エメラルド鉱山で発見され、昼の太陽光下では青緑、夜の人工照明下ではへと色変化をおこす性質が見出されてロシア皇帝ニコライ1世に献上されました。献上された日が皇太子アレクサンドル2世の誕生日だったため、アレキサンドライトという名前がつけられたと云われます。

 

カラーストーンにはダイヤモンドのような厳しい判定基準はありません。宝石業界で鑑別書をつけることは義務づけられておらず、この曖昧さがしばしば買い手に不利な状況を招いて来ました。

京セラのクレサンベールは宝石の鑑別・鑑定で、世界的に信頼されているGIAに準拠した判断基準を採用し、販売するすべてのクレサンベールの品質を保証しています。京セラは1996年に日本の宝飾業界で初めて品質管理システムに関する国際規格ISO9002の認定を受け、1997年には環境管理システムに関する国際規格ISO14001の認定を受けました。これは品質基準の徹底が国際的な要求事項に沿って運営されている証です。

 

「キズひとつないエメラルドを得ることは、欠点のない人間を探すより難しい」と云われます。市販されるエメラルドのほとんどは、クラックやインクルージョンを隠すためにオイルや合成樹脂などの含浸処理が行われていて、その効果はいつか失せます。クレサンベールはすべての石でこのような人工的な処理は一切行っていませんので、その透明度や輝きはいつまでも変わることはありません。

宝石の魅力は何と云っても色と輝きです。クレサンベールは科学の力で大自然の営みを再現し、人の手をかけたと云っても理想的な環境をつくり、丹念に核となった天然の結晶を育て、キズや不純物の少ない価値の高い宝石を得たのです。

もちろん人工的に作った宝石は、天然の宝石として販売するわけにはいきません。京セラは天然の宝石とは別の「クレサンベール・ブランド」を立ち上げ、自分達の技術で創った宝石として保証書をつけて販売しています。そこにはクレサンベールを創った技術者の誇りがあります。 

「ミキモト・パール」は養殖真珠ですが、世界中で天然の真珠に劣らない高い評価を得ています。現在養殖真珠を模造と考える人はいませんが、御木本幸吉が1905年に世界で初めて真珠の養殖に成功した時に、フランスの宝石業界は模造品と宣伝して輸入拒否を試みました。

御木本はフランスでおこした民事裁判の中で、複数の学者によって養殖真珠は天然真珠と同一であると確認されて「パリ真珠裁判」に勝利したのです。ミキモト・パールが生まれなければ、真円で、粒の大きさも、色調も、完全に揃った真珠のネックレスが、世界中の女性たちを飾ることはなかったでしょう。

クレサンベールの魅力はなんといっても色調の美しさです。同等の品質を天然の宝石で求めるとすれば、目の玉が飛び出るほどの高値なものとなるでしょう。手ごろな価格で購入できるクレサンベールは、人工ではあっても天然物と同じ成分の石なのですから、ミキモト・パールと並んで間違いなく日本が世界に誇りうる宝石です。


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IoT

2018-05-02 06:08:51 | 日記

「AI」は碁の勝負でヒトのチャンピオンに勝って誰からも知られるようになりましたが、「IoT」はAIほどよくは知られていないようです。「Internet of Things」の略で、すべての「モノ」がインターネットに繋がることを指します。

 

現在コンピュータが処理するデータは大部分ヒトが入力したものですし、多くのプロセスはヒトが起動して実行されますが、「M2M」(Machine to Machine)ではヒトの手を介さず、機械同士のやり取りだけですべてのプロセスが実行されていきます。

M2MをIoTと同じと観る人もいますが、IoTはより概念に近く、M2Mはより技術に近いニュアンスがあります。IoTに関連して「IoE」(Internet of Everything)と云う言葉もあって、P2P(people-to-people)およびP2M(people-to-machine)も含めたIoTを包含する概念です。

ありとあらゆるモノがインターネットに繋がるIoTで何がよいのか、何が出来るのかと云えば、「センサー」でモノから情報を取得する、インターネットを経由して「クラウド」にデータを蓄積する、蓄積されたデータをAIが分析し、その結果から指示を受けてモノが作動し、ヒトに結果をフィードバックするのが利益をもたらすのです。

 「センサー」には温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、人感センサー、音声を取得するもの、静止画や動画を取得するものなど様々な種類のセンサーがありますが、これらによってモノから情報を得るのがIoTのスタートです。

次にモノから得た情報をインターネットを経由して、クラウド上に蓄積します。クラウド上にデータを保存しておけばパソコン、スマホなど様々な情報機器で情報を出し入れできます。蓄積されたデータをAIが分析し、分析結果からインターネットに繋がっているモノに指示を与えて作動させ問題を解決するのです。

従来は情報を取得してもヒトが情報の問題点を分析し、ヒトがモノに指示を出して解決していました。IoTでは分析結果に応じて、ヒトを介さずに、AIがモノに直接指令して解決します。温度・湿度・外気温などの情報がスマートフォンに表示されるとともに、エアコンが自動的に最適な状態に保たれることなどが身近な例です。

IoTの特徴はモノの方からインターネットにアクセスして、情報を提供することです。世界の自動車メーカーは現在「自動運転システム」の開発を急いでいますが、自動運転システムではセンサーが提供した情報をAIが分析し、その結果でヒトの手を介さず、車は「走る」「回る」「止まる」などの動作をすべて自動で行います。

ITとはほど遠い印象がある農業でもIoT化が進んでいます。ハウス栽培における水やりや施肥の自動システムは、取り付けたセンサーで読み取った日射量や土壌の状況をもとに、タイミングを計って水や肥料を与えます。農業の担い手不足が進み効率的な生産が必要とされる日本の農業分野では、IoTの重要性が高まっています。

「見える化」という言葉は一世を風靡しましたし今でも産業界では重要なキーワードですが、組織の中で作業状況をうまく共有することで問題の発見、業務の効率化、改善に役立てていく概念です。

IoT技術が進んだことによって、これまで専用センサーがないために見える化が進んでいなかったモノについても、次々に見える化ができるようになっていますが、見える化に留っていては問題解決にはなりません。

建設機械のコマツは土木作業をデジタル化する「スマートコンストラクション」を2015年に導入しています。測量時点で3Dスキャナーやドローンを使って工事の対象となる土地をデジタル化し、建設機械の必要数や日程を最適化して、余分な土を掘り起こさずに済む細かな制御ができるようになりました。

全体の情報をクラウドで管理し、それぞれの機械のセンサーと情報をやり取りした結果を工期の最適化に結びつけ、これによってコストの削減までをシステム化することができました。

東京ディズニーランドのエレクトリカルパレードでは、入場者の購入したマジカルドリームライトがパレードの音楽に合わせて、一斉に、同じ光り方をします。パレードの山車と手元のハンドライトが同期して光るのです。

マジカルドリームライトはライトの色や光り方を一元管理して、参加者の一体感やイベントの満足度を高める仕組みです。ゲストのテンションが上がって喜ばれ、普通のライトよりも高い値段で売れるためにディズニーランドの収益が向上しています。

 

近頃は野球やサッカーのボールにセンサーを埋め込み、より正確なスポーツデータを取得できるソリューションもあります。ピッチャーの投げたボールの3次元軌道、回転数、回転軸、速度、ストライクゾーンへ入ったどうかなど、様々な情報が正確に取得でき、投球記録はクラウドに保存されていつでも確認が可能です。

ストライクゾーンにボールを投げた割合も「見える化」されるため、練習で技術が日々向上していることを数値の裏付けで知ることができます。IoTによってデータ収集は容易になり解析が可能になりますが、その解析結果を活用して初めてIoTの意義が活きるのです。

試合中のホームランの判定も塁上のセイフ・アウトの微妙な判定も、現在、ビデオ判定になってきていますが、ボール・ストライクの判定は未だに球審の判断に任されているのは不合理です。外角高めの直球を打者が自信を持って見逃した場合に、最近では真上からの画像が映されボール1個分もホームベースから外れていたのが、しばしば、示されますが、球審の判定の誤りが試合の帰趨を変えることに繋がるのは著しく試合の興味を削ぎます。

試合中のピッチャーの投げた球種・球の速さ・曲がりの度合い・ホームベースをよぎったかどうかを正確に捉える技術はすでに確立されていますから、ボール・ストライクの判定はIoTに任せ、球審はその結果をイアホンで聴いて判定のジェスチャーをするだけにすれば、球審の動作が従来と変わることなしに判定の誤りがなくなり公正な試合が成立します。

 

インダストリー4.0は2011年ドイツ工学アカデミーが発表しドイツ政府が推進する、製造業のデジタル化を目指す国家戦略的プロジェクトです。IoTの普及を国家プロジェクトとした初の事例です。

第二次世界大戦後1989年に東西ドイツ再統一を果たしましたが、東ドイツの生産性が低くドイツ経済は大きく改善したものの、2010年頃には生産性向上が頭打ちになりました。成果配分を求める労働者の声で賃金は上昇する一方、賃金の増加率と生産性の増加率の乖離は顕著になります。

2015年4月には政府の呼びかけに応じてドイツ国内の労働組合や商工会議所がインダストリー4.0に基づく新しいプラットフォームに参加し、ドイツ国内での理解の深まりや広がりが見られました。

インダストリー4.0ではIoTにより設備が人と協調して動くサイバーフィジカルシステム (Cyber-physical system) が実現し、拡張現実を活用したオペレーター作業支援、ビッグデータクラウドコンピューティングを活用した品質追跡管理や工程改善、消費者に合わせた商品のマスカスタマイゼーションが実現しました。

 

第一次産業革命は蒸気機関で機械を動かした生産でしたが、第二次産業革命では電気で機械を動かし分業が進んで大量生産が可能となり、第三次産業革命ではコンピュータ制御で生産工程の自動化が実現しました。インダストリー4.0はそれに続く「第四次産業革命」という意味合いで名づけられたものです。

ドイツ政府が主導するインダストリー4.0は、IoTによる産業のデジタル化を背景に取り組みが進んでいます。その中核となるのが「スマートファクトリー」で、センサーや機器から得られる膨大な量のデータを分析した結果を用いて、生産効率の向上に留まらず、設計・製造・流通・販売・保守と云ったサプライチェーン全体を革新するものです。

同様の取り組みはアメリカの「Industrial Internet」や中国の「中国製造2025」など世界各国で取り組みが進んでいます。日本でも2015年10月に総務省・経産省が産官学連携で、IoTに関する技術開発や新規ビジネス創出を推進する「IoT推進コンソーシアム」を設立しました。

経産省の「ものづくり白書2016年」では、生産プロセスで何らかのデータ収集を行っている製造業は66.6%に上りますが、そのデータを可視化しトレーサビリティ管理や生産プロセスの改善や向上に活用している企業は15~16%にとどまります。

生産プロセスの改善や向上などに活用されている事例として、ダイムラーの高級車部門メルセデス・ベンツがあります。日本の自動車メーカーは多くの部品を下請けに外注し自社工場で組み立ててコスト削減をしていますが、自動車部品の内製率が8割を超えているメルセデスは違います。

メルセデスの場合小型車でも400万、500万円の高価格のため、ドアを閉めたときの音が心地よく響くかどうかも重要です。外注で生産した部品を組み立てても、そこまでの音の質感は出せません。メルセデスは自社工場内に大きな部品プレスラインを設け精度の高い部品を生産しています。

部品の精度が高ければ、組み立ては工賃の安いアジアの工場に外注しても問題ないのだそうです。メルセデスは自社の製品で市場のどのポジションを狙うかが明確で、生産現場は何をすべきかをしっかり認識しています。

IoT開発に必要なエンジニアは組み込み系エンジニアとWeb系エンジニアです。組み込み系エンジニアは機械製品の中に内蔵する特定の機能を制御するためのコンピュータシステムを開発しますが、このシステムは組み込まれる機械になくてはならないものです。Web系のエンジニアはユーザーがIoT機器に操作を行うための画面レイアウトを作成したり、機器に内蔵された制御コンピュータに命令を送るプログラムを作成します。

中小製造業が自社でIoT化ができなくても専門のエンジニアに依頼すれば、自社製品の生産性の向上や利益率の改善に結びつけるチャンスは生まれます。ごく小規模の手作業中心の企業でない限りIoTを使わない手はありません。

このIoTもAI同様企業の人員削減に結びつきますが、IoTは人類全体の利益に叶うものです。多くの人が現在の職を失うことについては、ロボットやAIに人の職業が奪われると云っているだけでは解決しません。この問題は、これからの時代のもっとも重要な社会問題として、別途に、真剣に考慮すべき課題です。


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