報道によれば、安倍首相はアメリカ独立戦争の象徴となったスローガン「代表なくして課税なし」を引き合いに、消費増税の一年半延期の是非を国民に問うために衆議院を解散し総選挙を行うと宣言したと云う(11月18日)。
小黒一正・法大准教授は、これについて次の様に云う。
「「代表なくして課税なし」という意味は、「税制は国民生活に密接に関わっているもので、国民生活に大きな影響を与える税制において、重大な決断をした以上、国民の声を聞く必要がある」旨のイメージで広がっているが、これは間違い」。
「イギリスの植民地であったアメリカは、イギリス議会に代表を送ることはできず、一方的に税金だけが課税されていたためで、本来の意味は「増税するならばイギリス議会に植民地の代表者を参加させるべき」が正しい」。
「そして、この文脈でいうなら、いま日本で代表者を議会に送り込むことができずに過重な負担を押し付けられているのは、選挙権のない将来世代(20歳未満も含む)である」。
図が掲載されており、説明はないが、現状での各世代の世帯単位における受益と負担が棒グラフで著され、その差引を生涯純受益としてプロットしてつなぐと、将来世代に向かって受益が下がり、40歳代以降は負担のほうが大きくなる。結局、60歳代と将来世代10歳代以下との差は約1億円ある。そこで氏は次の様に指摘する。
「政府債務が累増するいま、選挙権をもつ現存世代と選挙権をもたい将来世代(20歳未満も含む)との関係では、「代表なくして課税なし」というスローガンは、
「増税先送りで政府債務を拡大し、将来に負担増を先送りするならば、将来の納税者の代表を国会に出せ!」が正しい解釈になる」。
また、常々、世代間格差を問題視している池田信男氏は次の様に云う。
「日本の若者は市民ではなく、被統治者である。彼らの代表を国会に出すことができないからだ。与野党が一致して圧倒的多数派である老人に迎合し、増税の先送りに賛成している状況では、若者は代表権なしに課税される」。
「首相が「代表権のない人には課税しない」と本気で考えているなら、選挙権のない将来世代への課税を先食いする国債は禁止すべきだ。逆に「納税していない人には代表権はない」というなら、年金生活者の選挙権は剥奪すべきだ」。