こんなところに踏切?銀座に踏切があるとは知らなかったなあ。
これは、昔、このあたりに線路があった名残よ。
踏切なんて、都内ではめっきり見かけなくなったな。
そんなことはないわ。池上線の石川台駅にもこういう踏切があるわよ。
山田洋次監督の映画「おとうと」の舞台になった坂の町か。
吉永小百合が賢姉で、笑福亭鶴瓶が愚弟を演じる。
「男はつらいよ」と真逆の設定。
弟のやんちゃぶりは、寅さんそのものよね。
姉のところにふらりと現れては騒動を起こし、またふらりと去っていく。
店の前まで来ていながら、素直に中に入らないで、店先から奥をのぞきこむところなんて、何度見た光景か。
でも、「男はつらいよ」と違って、周囲の反応ははるかに冷たい。
冷たいというより、厳しいってことだろうけど、実際にあんな男が親戚にいたら、とらやの人々みたいにやさしくばかりしてられないわよ。
そう、そう。なんだかんだ言って、「男はつらいよ」はメルヘンだったけど、この「おとうと」は、ほんとに寅さんみたいな男がいたら、こんな惨めなことになるぞっていう真実味を帯びた話。
前半は、「男はつらいよ」以前の「吹けば飛ぶよな男だが」の頃の山田洋次映画に戻ったような印象よね。
温かみより残酷さのほうが勝っているような力技の喜劇。
一方、後半は、名前こそ違え、実在するホームレスのためのホスピスが出てきたりして、懐かしや、山田洋次の共同体好みが顔を出す。
でも、渥美清が生きていたら、「男はつらいよ」はこういう形で終わらせたかったんじゃないかって気もする。
とくに、ラスト、吉永小百合が笑福亭鶴瓶を看病するシーンなんて、倍賞千恵子と渥美清でやっていたら、「男はつらいよ」シリーズもきちんと締めくくることができたんだろうに、って思っちゃう。
“市川崑の「おとうと」に捧ぐ”っていう献辞が出るけど、“渥美清の「寅さん」に捧ぐ”っていうほうが大きい。
でも、観客は昭和の人ばかり。この人たちがいなくなったら、こういう映画を観る人も途絶えちゃうんでしょうね。
撮る人もいなくなっちゃうさ。
東京から踏切がなくなっていくようにね。
カン、カン、カンていう音が消えるのは寂しいねえ。
あーあ、あなたもどっぷり昭和の人ね。
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