元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

テレワークで通勤手当の支払いは就業規則の規定次第

2021-01-23 15:55:42 | 社会保険労務士
 民法では通勤手当はどうするかは任意規定で労働者の負担

 テレワークにしたときに、留意すべきものは、通勤手当との兼ね合いです。原則論をいえば、「通勤手当」は、民法上は、労働者側の負担です。労働者は、会社で労働するにあたり、会社に行ってから「労働する」という、その労働するための費用=通勤に要する費用は、労働者の負担になっています(民法485条)。この規定はあくまでも任意規定ですので、厚生福利の観点等から、ほとんどの会社で、通勤手当については、就業規則で全部または一部を負担することとされています。(これは、所得税法上、一定額までは非課税となっているので、その範囲内で通勤手当を出している企業が多い。)

 したがって、通勤手当の支給については、就業規則にどう書かれているかにかかっているのです。テレワークにしたから、通勤しないので、その費用もかからないから出さないよというのはまずいのです。就業規則に通勤手当が描かれている以上、給料として規定したことになり、その規定どおりの通勤手当を出さないといけないということになります。
 (ここで、通勤手当を定期券相当額ではなく、定期券の「現物」で支給する場合は、労働協約を締結しなければなりませんから、労働組合がなければ、協約は締結できませんから、定期券での支給はダメということになります。)

 就業規則をみると、入社・退社・住居の移転・出向等の通勤手当の日割り計算はあっても、これがテレワークの場合を想定しているとは思えない規定があります。また、給与計算期間の全期間で実際の出勤がない場合、たとえば長期出張、欠勤、休暇、育児介護休業、有給休暇取得のほかこれに準じる事由として、通勤手当は支給しないとしていても、これもまた、とてもテレワークそのものを想定しているとは思えません。この場合、日割りや全額不支給はできなくて、全額支給しないとトラブルになるおそれがあります。

 以上のまとめと解決策は、次のようになります。まず、フルタイム出勤では、公共交通機関の定期代相当を通勤手当として支払う旨就業規則に規定して、その額を支払うのが一般的です。しかし、テレワークにより、会社に出勤しない場合にも、通勤手当全額を支払うことは、会社が必要のない経費を出費することになります。一般的に、定期代は、通常運賃の半額程度といわれています。そこで、就業規則に、テレワークにより出社する場合は、月15日未満出勤のときは日割り、月15日以上の出勤のときは、定期代で支給すると規定しておけば、実質の額に近い通勤手当を支給することになると思われます。
 
  参考  テレワークの労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本 秀和システム  寺林顕ほか著
      就業規則の法律実務                  中央経済社   石嵜信憲編者
 
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