元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

労基法で3年を超える労働契約は出来ないこととなっているが超える期間で契約したらどうなるか?

2017-08-27 20:31:56 | 社会保険労務士
 労基法13条により無効で3年の契約期間に縮減、3年超の期間は民法629条により「黙示の契約更新」で「無期契約」となり解雇濫用法理の審査を受ける!!

労基法14条について、封建的労働契約関係における人身拘束の懸念が薄らいだため、2003年の労基法改正によって、期間の定めをする労働契約(=有期労働契約)においては、次の例外を除き、契約期間の上限を1年から3年の契約期間までに引き上げることとした。使用者にとっては、教育訓練等人材養成が十分出来得ることにもなり、労働者にとっても安心して仕事に励むことにもなり、双方良しという考えである。
 (1) 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約・・・ 例えば4年で工事の事業が完成するときは、その4年まで認める
 (2) 厚生労働大臣が定める基準に該当する高度かつ専門的知識等を有する労働者との労働契約・・ 上限5年
 (3) 満60歳以上の労働者との労働契約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 上限5年
 
 ただし、附則137条において、暫定措置として、契約期間の初日から1年を経過した日以降は、労働者は使用者に申し出ることによりいつでも退職可能としている。すなわち、現在は、労使双方3年までの契約を認めるが、労働者においては、1年を超えると契約期間の拘束はない(1年超でいつでも退職可能)ことになる一方で、一方の使用者にとっては、3年の契約期間の間持続して拘束する(一方的な契約解除はできない)という変則的な契約となる。

 さて、本題はこれからだが、一般的な契約3年の上限を超える契約をした場合はどうなるかである。労基法120条に基ずく罰則、罰金30万円が科せられるのは当然として、民事上の契約はどういうふうに解釈したらいいのかするかということである。

 仮に契約期間4年の労働契約を締結したらどうなるか。通説・裁判例は非常にテクニカルであるが、次のように妥当な結論を導き出している
 1、契約4年は、3年を上限とする契約に反するため、労基法13条により、無効となり、さらに3年の労働契約に短縮される。
  ○ 労基法13条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。⇒この法律で定めるというのが、3年であるため、3年に短縮される。

 2、そうはいっても契約期間は4年で行っているので、契約期間3年を過ぎても労働契約は継続されるのが通例であろう。この場合は、民法629条1項により、使用者の「黙示の(契約)更新」となり、契約期間以外の労働条件については前の契約と同一の条件でさらに雇用したものと推定されることになるが、労働契約の期間だけは、期間の定めのない契約(=無期労働契約)となる。(民法629条の通説・判例の立場である。ただし学説は諸説あり)

 3、3年経過後の4年の時に、使用者は4年の契約期間の満了により契約終了ということを主張することになるが、この場合2、により無期労働契約となっており、これは解雇ということになるので、労働契約法16条の解雇濫用法理により審査されることになる。
  ○ 解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。
 ただし、これは高等裁判所・地方裁判所の例であり、現在でも学説としては異説が様々あるところではある。

 しかしながら、労使双方で労働契約の上限期間の違反をしたのであるが、労働契約期間の合意をしたという事実があるということを前提として、この契約上限3年の超過に対しては、労基法13条で無効とし契約期間3年に引き戻している。その上で、3年を超える契約期間に対して、無期契約に移行した期間が更新された契約として、使用者に解雇権濫用法理に基づき労働者の保護を求めるという、妥当な結論になっている。ただし、再度言うようだが、「テクニカル」とは思う。

 参考 荒木尚志著 労働法 有斐閣
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

年休取得5日以内(時間単位)超(計画的付与)の取違いをなくす<社労士試験「比較対照」>

2017-08-20 17:39:57 | 社会保険労務士
 計画的付与は「従来の労働者の自由な時季指定には年休消化率に限界」を感じ⇒考えの転換で最大日数に、一方、時間単位は年休本来の考え(休養)から外れ最少日数で認めたもの<背景から考えると分かる>

 年休においては、一般的に、間違えやすいものとして、5日以内(時間単位年休)と5日超(計画的付与年休)があり、社労士試験に出そうなところでもある。どちらも、労使協定により定めることは共通であるが、時間単位については、与えられた休暇のうちの「5日以内」が取得可能であって、一方年休の計画的付与においては、与えられた有給休暇の「5日を超える部分」である。この計画的付与については、5日以内は、労働者に年休を自由に取らせるというもともとあった年休の与え方である。このもともとあった年休の取らせ方というのは、労働者が時季を指定すれは、使用者が「時季変更権」を行使しない限り、一方的な労働者の意思表示により(いわば形成権として)年休取得が認められるというものである。それに対して、この計画的年休は、昭和63年改正で規定されたものであって、使用者が計画的に付与できるものであり、逆に云えば労働者個人で自由に使えない・選択できない部分になる。これが5日超の部分である。

 もう一度整理すると、時間単位では「5日以内」で必要最小限のもので認められたものであるといえるし、計画的付与においては「5日を超える部分」であって「5日」(この5日は労働者が時季指定により自由に使える部分)を除けばすべて計画的付与にすることができるということで最大限に利用できることになる。

 この「5日」という共通のワードが使用されているが、以内と超えるであり、どちらがどちらか分からなくなる。社会保険労務士試験問題にもこれを取り違えた問題が○×問題として出そうである。しかし、これはその背景を考えれば、分かりやすい。取り違えはなくなる。

 まず、計画年休付与からいくと、従来の「時期指定権」という労働者にイニシアチブを取らせ、労働者が指定した日に年休を取得する方法では、組織で労働者にとっては、他の者に迷惑をかけるとこいうことでなかなか年休は取りずらい雰囲気がある。事実、年休の消化率は半分以下であった。ということで、これでは年休取得に限界があった。ちなみに、2014年の年休取得率(消化率)は、47.6%半分以下である。そこで、計画的付与によって、使用者が計画的に指定した労働者に有無をいわさず年休を取らせることで、政府は年休消化の促進になると考えた。もちろん、交代制で年休(交代制)をとってもいいし、会社全体で全員で休む方法(一斉年休)だってある。そう考えると、従来の時季指定権という労働者指定の自由な年休の取り方である「5日分」だけを残しておいて、あとの残りの「5日を超過する分」については、計画年休に持っていくという思い切った最大の日数で付与したということではないか。付与日数の考え方の転換である。

 一方、時間単位の年休に対しては、日本では、体を休ませて明日の鋭気を養うということから少なくとも1日単位の年休をとらせるというのが考え方の根本にあり、その意味からはこれは反している。これがヨーロッパでは最低限2週間の長期休暇を与えるというのが原則であり、日本とは比べようのない格段の差があるところではあるが・・・。半日単位の年休もやっと昭和63年から積極的ではないが通達で認める形になっている。そして、平成20年になって、鋭気を養うという意味からすると逆行することになるが、夫婦共稼ぎの増加等時間単位のちょっとした休暇がどうしても必要と言うことから、それを法で改めて時間単位の年休で処理することになったと考えられる。また、前述のように、年休の消化自体が悪かったので、少しでも全休消化につながればと言うもくろみもあったと思われる。そういうことからすると、なるべく本来の目的からすると、なるべく認めたくはないが、社会情勢等から必要最小限の5日以内で時間給を認めたものであろう。

 このようにその背景というか規定を設けた目的から考えると、5日以内、5日超ということで、時間単位、計画年休を取り違えることはなさそうである。

● 時間単位の年休
 <労働基準法39条4項>
  使用者は、労使協定により、次の事項を定めた場合において、労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、時間を単位として有給休暇を与えることができる。
 (1) その労働者の範囲
 (2) 時間単位として与えることができる有給休暇の日数(5日以内に限る)
  ・・・・・・・・ 
● 年休の計画的付与
 <労働基準法39条6項>
  使用者は、労使協定により、有給休暇の時季に関する定めをしたときは、有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、労働者の時季指定及び使用者の時季変更権の規定(労基法39条5項)にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雇用契約は文語体「労務に服する」の方が口語「労働に従事する」より本質を得ている!!

2017-08-12 17:48:22 | 社会保険労務士
 口語「労働に従事する」は対等な雇用契約のようだが「使用者の指揮命令」に従うという意味では今でも変わらない 

 民法の「雇用契約」と労働基準法等の「労働契約」は、従来は違った概念ではないかということで、さまざまの議論がなされてきたが、労働契約法第6条が、民法の雇用契約とほぼ同じ規定をおいてからは、雇用契約と労働契約(の定義)は同一のものと解するのが妥当と思われる。
 民法623条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約するによって、その効力を生ずる。

 民法623条は、上述のように、雇用契約の定義として、労働者が労務の提供を行い、使用者が賃金を与えることを約束することによって成立する契約とする。この表現のなかには、お互いの労務の提供と報酬(=賃金)の約束であり、対等な私人間で結ばれた契約であって、なんら使用者と労働者は従属している関係(使用者が「主」で労働者が「従」である。)にはないように見える。

 ところが、2004年に口語化されるまでは、実は次のような規定になっていたのである。
 民法623条 雇用は当事者の一方が相手方に対して労務に服することを約し相手方がこれにその報酬を与えることを約するによりてその効力を生ず

 となっていたものである。一番の違いは、文語体では、口語の「労働に従事する」というのが「労務に服する」となっていることである。これを我妻栄が「労務自体の給付を目的とする結果として使用者に労務についての指揮命令権を生じ、その意味において従属関係を生じること」<*注1><*注2>(民法講義Ⅴ債権各論中巻二P542以下1962年、ただし、荒木労働法から)と説いてからは、これが今の通説的な見解となったものである。

 すなわち、「労務に服する」とは、使用者の指揮命令に従って労務を供給することにほかならない。労働者の労務の提供と言っても、使用者がいつ、どこでから始まって、どんな方法で行うか等の指示を行わなければ適切な労務の提供はできないのである。例えば、使用者が職場外研修を命じて、労働者がいつものとおり職場で仕事に従事しても、「労務の提供」にはならない。つまるところ、労働者は使用者の命令に従った労務の提供 すなわち「債務の本旨」に従った労働の提供をしなければならないのである。(民法415条参照)
 
 まとめると、雇用契約には、労働者が使用者の指揮命令に従うといった意味が伴うものであって、口語化された民法においても、その意味は変わらない。むしろ、この点は、昔の文語体の方が的確に表現されたものといえる。しかし、文語体の「労務に服する」という用語はいかにも従属関係を想起させるところであって、平易な「労働に従事する」の方が現在人にはしっくりくるのかも知れないが・・・。

 *注1 さらには、「従属」とは、昭和50年代の教科書では、生産手段を持つ資本家に対して、労働を売るしか生活の糧がない労働者は、資本家に「従属」せざるを得ないというような意味を込めての「表現」のように受けとめられる。単に労働者が使用者の指揮命令に従うということだけでなく、それ以上の意味合いがあるように思える。(有斐閣叢書、新版民法ー契約各論) 
 *注2 ただし、民法の起草者は、「労務に服する」に指揮命令を受けるという意味を込めていなかったとしている。(上記水町著)
 
 参考 労働法 荒木尚志 有斐閣
    
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有期労働の無期転換申込権の背景を考える<従来法理論から逸脱だが安定雇用シナリオ政策としては必要か>

2017-08-04 18:41:02 | 社会保険労務士
 改正労働契約法成立の上は施行通達の指摘のように「派遣形態や請負形態に偽装」はしないこと
   概略的にいうと、同一の使用者の下で有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に、その有期契約労働者に有期労働契約を無期契約に転換させる権利(無期転換申込権)を付与し、その権利が具体的に実際に発生するのが2018年4月以降からである。
 ※無期転換ルールに関する労働契約法18条は、施行日(2013年4月1日)以降の日を初日とする有期労働契約について適用。したがって、5年後の2018年4月1日以降に実際には無転換申し込み権は発生する。

  同一の使用者との間で締結された 2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間(通算契約期間
  別の使用者との契約はカウントしない。・契約更新が少くとも1回以上された場合・その契約を通算した期間
  が5年を超える有期契約労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間
  が5年を超えるとき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5年超となった契約を開始した時点から満了するまでの間
  が満了するまでの間に、無期労働契約の申し込みをしたときは、使用者は当該申し込みを承諾した
  (この間行使せず再度契約後も行使可能)・・・無期契約の申込をしたら使用者は承諾しようと否と契約成立 
   ものとみなされる。 (労働契約法18条1項前段)
   あくまでも承諾したもの(すなわち契約成立)とみなされるのである。
   この場合において、無期労働契約に転換された場合の労働条件は、別段の定めがない限り、従前の
    転換後の契約は無期になるので、契約期間を除かれるが、それ以外は、別段の定めがない限り、
   有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く)と同一の労働条件とする。(同条後段)
    従前の有期労働契約と全く同じとなる。ただし、この機会に「別段の定め」の労働条件で無期契約の
    新しい制度として活用することも可能。

 さて、この労働者の無期転換申込権は、形式上は、申込みと承諾という形をとっており契約の体裁を整えているが、労働者に有期から無期契約に転換させる転換権という形成権であって、民法上の申し込み・承諾の契約理論を壊すものであるということで法律家間で議論された。すなわち、契約は申し込み・承諾という意思の合致により成立するものであるが、使用者が承諾をしたものとみなすことにより、一方的な労働者の意思表示により法律行為(この場合契約)が成立することとなり、この無期転換ルールにおける無期転換申込権は、形成権そのものである。

 しかし、そこまで踏み切った背景には、次のような問題があるとされる。有期労働契約は、期間満了により雇用契約が終了し生活上の資金が途絶えるという雇止めの問題にとどまらない。有期契約の労働者は、雇用継続の保障がなく、有期契約が更新されるかどうかは使用者の意向次第であるということから、法律で保障された権利行使、労働条件改善の要求、セクハラ等の苦情申し出といった当然の雇用関係の権利・要求を、将来の契約更新の拒絶をおそれるあまり、これらの主張を差し控える傾向にあるということである。言い換えると、有期労働者は常に雇止めを意識して、労働契約存続中も使用者に比して著しく交渉力に劣ることになる。正規労働者の比ではないというわけである。

 初めは、私個人としても「契約理論を壊す」という主張をなるほどフムフムと聞いていたのであるが、そこまでしなければならない上のような背景を聞いた上で、荒木労働法の次の説明を聞き、十分ではないがこれも納得した次第である。(どちらの意見も納得できる。)

 いわく『今回採用された5年無期転換ルールは、使用者が、有期契約労働者に対して圧倒的に優越的な地位に立つ契約関係を5年を超えて継続利用することを、有期契約の濫用的な利用と評価し、安定的な無期契約への転換を図らせるべきであるという趣旨に出たものであるということができる。』 2012年改正のこの条項は、立法者として、有期労働契約の実態を踏まえ、契約原則からというよりも、やむにやまれず新たな立法措置をとったものということができる。
 
 さらに、この前提として、有期労働契約を法としては禁止せず、『無業・失業状態から有期労働契約を活用し雇用へと誘導し、従来は有期契約労働に留め置かれがちであった状況を無期転換ルールで打開し、助成金支給というソフトロー(無期転換ルール自体は無期契約以外の処遇改善はないが、基本給与のアップ等を目的としたキャリアアップ助成金制度により他の処遇改善をも図られるようになっている。)も併用して安定雇用たる無期労働契約へ誘導しようとするものである。』 ここで、安定雇用への物語・シナリオを用意しているものである。

 さて、契約理論からは外れているとはいえ、そこまで踏み切ることが分かった上で、法律として成立した以上、使用者もこれに的確に対応しなければならない。
 施行通達は考えられるよくあるケースなのか、法の逸脱例として、次のような場合を想定し先んじて指摘している。
 『使用者が、就業実態が変わらないにもかかわらず、無期転換申込権の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に切り替えた場合は、法を潜脱するものとして、通算契約期間の計算上「同一の使用者」との労働契約が継続していると解される』としている。(施行通達平成24年8月10日基発0810第2号)
 就業実態が変わらないのに、無期転換申し込み権の発生を免れる目的から、苦し紛れなのか、派遣形態や請負形態に偽装することは、事業者としてありそうなことであるが、施行通達でこれは法の潜脱であるとしている。国としても十分お見通しのようである。事業者としては、十分検討の上、十二分に考えて適法な措置(逆によい機会ととらえ事業場内で「無期契約労働者」の処遇改善の新しい制度として利用も検討)をとって欲しい。

 参考 労働法 荒木尚志著 有斐閣
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする