元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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医療費の消滅時効は3年から5年へ(令和2年度から)

2020-09-11 10:35:52 | 社会保険労務士
 公立病院の医療費の時効は会計法等規定の5年であったが民法の適用(従来3年改正5年)に<最高裁判例>

 医療費の請求については、請求の時効期間があり、令和2年4月1日からは結論的には5年になりました。
 これ以前は、民法による時効は原則10年で、さらに債権の種類ごとに、これより短い短期の消滅時効というのがありました。
 短期消滅時効として、よく知られている例としては、飲食費の時効については1年というのがありますが、医療費についてはこの時効が3年でした。

 ところが、令和2年4月1日施行の改正民法(民166条1項)では、従来の時効期間の「権利を行使することができるときから10年間行使しないとき」(2号)という権利の消滅に加えて、新たに「権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」(1号)がさらに加えられました。通常は医療機関においては、医療行為が終了すれば医療機関の会計においては、医療費の患者への請求(権利行使)が可能ということを知ることになりますので、この新しい規定により、医療費の時効は医療行為が終わったときから5年ということになります。

 したがって、令和2年4月1日からは、医療費の時効については短期消滅時効の3年から改正民法の5年になりました。ただし、施行日(令和2年4月1日)前の発生の医療費については、従来の3年ということになります。

 ところで、公立病院の医療費については、地方自治法236条1項や会計法30条の規定から5年の時効が言われていました。これについては、国の行政通知があり、地方自治法・会計法の規定が優先するということになっていました。基本的には、公的な法律である地方自治法・会計法のほうが、私的な関係の民法に優先するというものでした。
 
 しかし、最高裁において、この解釈は覆されました。公立病院においておこなわれる診療は、私的病院においておこなわれる診療と本質的な差異はなく、その診療に関する法律関係は本質上私的関係であるから、公立病院に関する債権(医療費)の消滅時効は、民法によるべきであるというものです。
 
 これが最高裁によって争われたのが、平成17年11月21日のことで、つい最近のことです。したがって、この時点で、公立病院の時効は、地方自治法236条・会計法30条の5年から民法の短期消滅時効の3年になっていたわけです。さらに、今回の民法の改正(令和2年4月1日から)により、時効年限に関して言えば、また元の5年(改正民法166条1項)になったことになります。

 総括的に説明すると、公立病院を含めて、現在は、医療費の時効については5年ということになります。
 特に、公立病院の医療費については、病院側も患者側も誤解のない運用をお願いします。
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