冒頭の手書スーパーを改めて難ずると、佐藤に対し逆襲に転じたみどりが、“あなたもこゝを誰かに引つ掛かれては歓んでゐた・・・・・”といふのは、そこは“掛く”より“掻く”ではないかなあ。eが脱けてゐるやうにしか思へない、本篇ラストを飾り損ねる“good by again”―八島順一の“I'ts so Friday”か―といひ、如何せんこの御仁はそんなところから逐一不自由。勢ひに任せ我が田に水を引くと、ものの弾みか何かの間違ひで荒木調だの下手に称揚され、他愛ない我流に固執したあまり、荒木太郎は却つて自由を失つてしまつたのではなからうか。