雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

珈琲屋の人々

2012-09-02 19:50:10 | 

池永陽著"珈琲屋の人々"を読みました。
公助は珈琲屋という喫茶店を経営しています。
十年ほど前に店で人を殺したことがあります。
殺した相手はあたり一帯の商店の地上げをやっていた
青野です。
青野は地上げが進まないので脅しのため商店街の娘を
複数で襲って強姦しました。
彼女は自殺しています。
公助は仮釈放を断りきっちり8年服役しました。
家に戻り喫茶店を継ぎました。
世の中の流れが変わり地上げは撤退して商店街は
残りました。
珈琲屋にやって来る人達のそれぞれの心のうちを
描いたものです。

"初恋"
冬子は公助の恋人でした。
結婚しましたが離婚したいために不倫をして、離婚
して街に戻っています。
公助は子供がいる青野の妻の朱美に毎月10万円
届けています。

"シャツのぬくもり"
夫が浮気をして心が乱れている妻がやってきます。
前はクリーニング店を夫婦でやっていました。
夫が喫茶店へやって来て妻にずっと仕事にも自分にも
嫌気がさして仕事もいい加減なことをしていたじゃないかと
言って去っていきます。
たとえそれが事実でもずっと何もいわずに改善しようと
しなかった夫だって同じ罪なのにずいぶん卑怯な
言い草です。

"心を忘れた少女"
家が経済的に行き詰って父親が自殺して生命保険を
残そうとしている高校生の娘がやってきます。
お金が欲しくて体を売ろうと元締めをしている同級生に
仲立ちを頼みます。
しかし土壇場で逃げてしまいます。
20万払えと同級生に言われています。

"すきま風"
カラオケ仲間の老人達のグループがあります。
英治は介護が必要で認知症の寝たきりの妻がいます。
志麻子という男性仲間に人気な女性がいます。
英治は志麻子が好きになりました。
志麻子は思わせぶりな態度をとります。
英治は志麻子といっしょになるため妻に死んでもらいたい
と願うようになります。

"九年目のけじめ"
保彦は10年前に、自殺した智子と付き合っていました。
心無い言葉を智子にかけて自殺に追いやったと
自分を攻めています。
青野を殺してやろうと思いましたが出来ませんでした。
その後ボクシングを習い始め、プロにならないかと
いわれるまでになりました。
昔のことから逃れられなくてけじめをつけるため
公助に試合を挑んできます。
公助は柔道をしています。

"手切れ金"
公助の友人の島田は店の従業員の千果と浮気をしています。
千果には結婚したい男がいます。
愛しているというより条件がいいから結婚したいのです。
千果は島田と別れ手切れ金を取ってやろうと思います。
千果は退職金という名目で百万円を手にします。
恋人はろくでもない男のようだし、うまく手を切られた
のは千果の方ではないかという話です。

"再恋"
小坂が訪ねてきます。
元やくざで現在は不動産屋を経営しています。
青野の妻の朱美と結婚したいと思っている男です。
子供もなついています。
朱美が公助のことを好きだと思っていることで
命をかけた戦いを挑んできます。
公助は受けます。
当日に話を聞いて怒った朱美が子供と小坂を連れて
やって来ました。
勝負は子供がどちらの男を選ぶかで決定されることに
なりました。
死者が出る最悪な事態は免れました。

公助は静かな雰囲気で人の話が聞ける人です。
現在の公助を見ているとなぜ怒りを抑えられずに殺人を
犯したのかちょっとわかりません。
冬子は公助がずっと好きです。
公助も好きです。
なんだか冬子の結婚相手がかわいそうな気がします。
人間は間違いを犯しますからまあしかたないことなのかも
しれません。
あまりはやってなさそうな喫茶店ですけど心に
何か抱えた人たちが時々やって来る店です。