猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

オン・ザ・ミルキー・ロード

2017-11-25 02:30:21 | 日記
セルビア・イギリス・アメリカ合作映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」を観に
いった。

隣国と戦争中のとある国。右肩にハヤブサを乗せたコスタ(エミール・クストリッ
ツァ)は、村からの戦線の兵士たちにミルクを届けるため、毎日銃弾をかわしなが
らロバに乗って前線を渡っている。国境を隔てただけの、すぐ近くで続く殺し合い。
いつ戦争は終わるのか誰にも見当がつかない。そんな死と隣り合わせの状況下でも、
村にはのん気な暮らしがあった。おんぼろの大時計に手を焼いている母親と一緒に
住んでいるミルク売りの娘ミレナ(スロボダ・ミチャロヴィッチ)。美しく活発な彼
女の魅力に村の男たちはメロメロで、皆が彼女目当てもあってこの家のミルクを注
文する。そのミルクの配達係に雇われているのがコスタだ。ミレナの兄ジャガ(ブ
レドラグ・マノイロヴィッチ)は今戦争に行っているが、戦争が終わって帰ってき
たら、この家に花嫁として迎える女性と結婚する予定だ。コスタに想いを寄せてい
るミレナは、兄の結婚と同じ日にコスタと結婚しようと計画していた。だがミレナ
の求愛に対し、コスタは気のない素振りで話をそらしてばかり。そんな時、家に花
嫁(モニカ・ベルッチ)がやってくる。ローマからセルビア人の父を捜しにきて戦争
に巻き込まれたという絶世の美女だった。彼女とコスタは、初めて会った瞬間から
惹かれ合う。

エミール・クストリッツァの新作で、監督、脚本、主演を担当している。この人の
映画を観るのはまだ3作目だが、本当に独特の世界観を持っていると思う。しかも
3作とも映画館で観たので強烈なインパクトを感じた。この映画、コミカルなラブ
ストーリーだがやっぱりただのコミカルな映画では終わらない。
美人で男にモテるミレナの家でミルク売りとして雇われているコスタ。ミレナはコ
スタのことが好きで、コスタとの結婚を夢見ているが、コスタはミレナを愛しては
いない。ミレナの兄は英雄と言われている兵士で、戦争が終わったら花嫁として選
ばれた女性と結婚することになっている。花嫁(名前は出てこない)は顔も知らない
男と結婚するために連れてこられるのだが、ミレナやミレナの母親とも打ち解け、
結婚相手であるこの家の息子の帰りをそれなりに楽しく待っているようである。け
れども花嫁とコスタは、一目会った時から惹かれ合ってしまう。この2人には重た
い過去があるため、波長が合ったのかもしれない。やがて隣国と休戦協定が結ばれ、
村人たちは狂喜する。そしてミレナの兄ジャガも帰ってくる。
コスタはミレナを愛してはいないのに、ダブル結婚式の準備は着々と進められる。
しかしある不幸が村を襲い、コスタは花嫁を連れて逃避行を開始する。エミール・
クストリッツァは旧ユーゴスラビアの人だけに、戦争や内紛といったテーマが映画
作りの根底にあるのだろうか。まだ3作しか観ていないのでわからないけれど。で
も本当に変わった映画を作る人だ。コスタという主人公のキャラクター造形も変わ
っている。いつも右肩に相棒のハヤブサを乗せ、晴れの日でも傘を差し、ロバに乗
ってミルク缶を持っている。歩いた方が早いのではないだろうか、狭い村だし。
モニカ・ベルッチをヒロインに選んだのは、クストリッツァが美女のモニカと共演
したかったからだろうな、と思った。確かに彼女は美しい。こんな映画を作ってし
まうクストリッツァは天才かもしれないし、あるいは変態かもしれない。1度頭の
中を覗いてみたいものだ。少なくとも歌とダンスと動物が好きであるらしいことは
わかった。ラストシーンは悲しくて感動的だ。ユーモラスで悲哀に満ちていて、壮
大な童話のような映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。エミール・クストリッツァ監督作品です。
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