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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/13(日)東京ヴィヴァルディ合奏団/ゲストに松山冴花を迎えて新春の「四季」はロマンティックな装い

2013年01月14日 18時50分08秒 | クラシックコンサート
東京ヴィヴァルディ合奏団 2013年ニューイヤーコンサート
第26回〈新春は「四季」ほ聴きたい〉


2013年1月13日(日)14:00~ 第一生命ホール S席 1階 3列 23番 5,000円(最前列)
ヴァイオリン: 松山冴花*
室内合奏団: 東京ヴィヴァルディ合奏団
【曲目】
レーガー: 叙情的アンダンテ「愛の夢」(弦楽合奏版)
チャイコフスキー: 弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」作品70(弦楽合奏版)
ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意への試み」作品8より「四季」全曲*
《アンコール》
 エルガー: 愛の挨拶(ヴァイオリン独奏と弦楽合奏版)*
 レスピーギ:「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3組曲より「イタリアーナ」(弦楽合奏)
 ヴィヴァルディ: 「四季」より「冬」第2楽章*

 東京ヴィヴァルディ合奏団は1961年の創立で昨年50周年を迎えた。メンバーは全員男性で12名。弦楽合奏とチェンバロの室内アンサンブルである。現在はチェリストの渡部 宏(わたなべこう)さんが代表・音楽監督を務めているとのこと。実際のところはよく知らないが、東京藝大出身者がメンバーになっているらしい。50周年を迎えたと言っても、渡部さんをのぞくと若い人が多いようだ。構成は、第1ヴァイオリン3、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス1、チェンバロ1の12名。指揮者なしのアンサンブルで、今回はゲストに松山冴花さんを迎えて、ヴィヴァルディの「四季」全曲が演奏される。

 1曲目はレーガーの叙情的アンダンテ「愛の夢」。初めて聴く曲だが、いきなりロマン派の音楽が登場して、いささか驚く。チェンバロ抜きの11名で、チェロ以外は立って演奏する。3分半程度のとても美しい曲だ。最小限の人数だけにアンサンブルの息はピッタリ合っているが、ほんのわずか、音に濁りがあるような気がした。

 2曲目は「フィレンツェの思い出」。チャイコフスキーの最後の室内楽曲(1890年)。4つの楽章により構成され、40分くらいに及ぶ大曲だが、こちらも11名の弦楽合奏で演奏された。元曲はヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ2の六重奏である。第1楽章は躍動的な第1主題で始まるソナタ形式。第2楽章は非常にロマンティックな緩徐楽章。第3楽章は3拍子ではないがスケルツォっぽい舞曲風。第4楽章はロンド・ソナタ形式で第2主題がドラマティックで美しい。
 もともと室内楽分野はほとんど聴かないので、この曲も実際に全曲通して聴いたのは初めてであった。演奏の方はアンサンブルがしっかりしていて、音色も美しかった。ヴィオラとチェロが2つの声部に分かれる形になるが、ヴァイオリンが3名ずつで厚みがあるので、ちょっと低音部がうすくなったかな…と。まあ、そこを補うのがコントラバスということなのだろう。曲をよく知らないのであまり勝手なことは言えないが、曲がもとより冗長な感じがすることもあり、演奏のほうももう少しメリハリを効かせた方が、聴く者を飽きさせないような気がした。

 後半は今日のタイトルにもあるように「新春は『四季』を聴きたい」ということで、ヴィヴァルディの「四季」。もっとも得意とする曲なのではないだろうか。もっともこの曲の解釈は様々であり、最近は多様な演奏スタイルが採られているので、聴く前からあまりイメージを固定化しない方が良いようである。とくに今日は独奏ヴァイオリンが松山さんなので、斬新な音楽が聴けるかもしれないと、密かに思っていた。
 「四季」も全曲となるとかなり長くなるし、12の楽章を順に追うのも大変だし(そんなに細かなことまで覚えていられない…)、全体の印象をまとめてみたいと思う。
 まず、合奏団の配置だが、半円形に第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン、チェロが並び、ヴィオラはチェロの後方。中央の後列にコントラバスとチェンバロの通奏低音組が並んだ。指揮者はいないため、独奏ヴァイオリンが半円の中心に立つ。
 松山さんはいつも通りににこやかに登場し、ステージの中央に立つと、合奏団全体を従えるような存在感がある。実際、半分弾き振りのように演奏の主導権を取っていた。最初の「春」の第1楽章の冒頭から、独奏ヴァイオリンがない部分は第1ヴァイオリンと同じパートを弾きながら、身振りと弓の動かし方で、アンサンブルに指示を出しながらまとめていた。当然のことながら、第1ヴァイオリンのパートを弾くときと、独奏パートを弾くときでは、音質も音量もまったく違う。第1のパートの時は、アンサンブルに見事に溶け込み、計4名の第1ヴァイオリンがピタリと合っていた。ところが独奏になると強烈な輝きをもってアンサンブルの中から飛び出してくる。艶やかで輝かしい音色、ダイナミックレンジが極端に広く、弱音と強音の対比が強烈だが、音楽に荒れたところがない。躍動的にリズム感を支配していながら、時折閃くような感性でテンポが揺れる。バロックの名曲が、あたかもロマン派のような自由な精神の発露となって、旋律が歌いまくる。「四季」でこれほど旋律を歌わせるのも珍しい。松山節炸裂である。松山さんの音楽は、いつも旧来の枠組みをはみ出すようなスケール感がある。破壊的なのではなくて、はみ出すイメージだ。だから演奏される曲が一回り大きく、豊かになったように聞こえるのである。やはり松山さんの演奏は、Braaava!である。
 一方、合奏団に方も、指揮者のいなかった前半の2曲と比べても、松山さんに触発されたためか、かなりダイナミックでメリハリの効いた演奏に変わっていった。12名+1名が創り出す「四季」が、これほどまでに大きなエネルギーを感じさせるとは思わなかった。どちらかといえば淡々としていた前半のロマン派の曲よりも、「四季」の方が圧倒的にロマンティックであった。

 アンコールは、まず松山さんのソロと弦楽合奏による「愛のあいさつ」。この選曲も意外といえば意外だ。次にレスピーギの「イタリアーナ」は弦楽合奏のみのアンコール。弦楽アンサンブルや室内オーケストラなどの世界では知られている曲らしいが、この曲も初めて聴いた。最後は、「四季」の「冬」から第2楽章。窓の外は寒いのに暖房された部屋の中でまったりとくつろぐ感じがとても良い。素敵な選曲だ。

 終演後は恒例のサイン会…。会場で販売されていたCDは松山さんの3枚(津田裕也さんとのDUOシリーズ)と渡部さんのもの。ところが今日はサイン会に並ぶ人が少なくて…。私も松山さんのCDは2枚ずつ持っているし、すでに全部サイン入り。というわけで、昨年2012年のラ・フォル・ジュルネの時と同様に、プレゼント用に用意してきたCDにサインをいただいた。これは、一昨年2011年5月に新交響楽団の定期演奏会に出演してブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏した時のライブ録音。新交響楽団の正規の録音盤にオリジナルのジャケットを(私が勝手に)作ったものである。ご本人もこの録音は頂いていなかったということで、大変喜んでいただけた。最後にはいつものように記念写真を撮ったりして、和やかにコンサートは終了した。

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