日生オペラ『ルサルカ』音楽レクチャー
2017年9月16日(土)14:00〜 日生劇場 7階 大会議室 自由席 最前列センター 無料
講師:加羽澤美濃(作曲家/ピアニスト)
ゲスト:清水華澄(メゾ・ソプラノ)
日生劇場が主催する「NISSEI OPERA 2017」の公演は、11月9日(木)・11日(土)・12日(日)の3日公演で、ドヴォルザークの『ルサルカ』を上演する。それに先だって日生劇場では関連企画をいくつか開催した。いずれも無料のもので「ピロティ・コンサート」、「ドラマトゥルク・レクチャー」と「音楽レクチャー」の講座などである。私は『ルサルカ』は11月12日の公演のチケットを取ってあるので、本日の「音楽レクチャー」に参加することにして早くから申し込んでおいた。事前申し込みだけで、チケットは持っていなくても参加できるイベントである。
講師は加羽澤美濃さん。NHK・Eテレの「ららら♪クラシック」の司会を今年の3月まで務めていたので、すっかりお馴染みの方である。またコンポーザー・ピアニストとして20年に渡って活躍している。本日はゲストにメゾ・ソプラノの清水華澄さんが加わり、実演も含めて会場を盛り上げてくれた。清水さんは『ルサルカ』にイェジババ(魔法使い)の役で出演する予定になっている。
美濃さんは、実際にお会いするのは初めてだが、テレビ番組の司会だけでなく、FM番組の司会をされていた時期のあるし、キャラクタをよく知っているので初めて会ったという感じがしなかった。
「音楽レクチャー」は『ルサルカ』の解説というテーマだったが、ストーリーや演出などについては恐らく「ドラマトゥルク・レクチャー」の方で語られたのであろう、ここでは音楽の構造的(?)なところの解説、すなわちアナリーゼである。とはいっても、「ららら♪クラシック」の延長線上で、もう少し時間をかけて突っ込んだというレベルだった。演壇横に置かれた電子ピアノを弾きながら、ホワイトボードを使って、学校の授業のように進められた。
『ルサルカ』はチェコ語のオペラであるためか、上演機会は少ない。私は2011年に新国立劇場で鑑賞したことが1回あるだけだが、美濃さんは実はまだ一度もないのだという。しかし、スコアから読み解いていくと、ドヴォルザークらしい特徴が見えてくる。『ルサルカ』の中で最も有名なアリアは「月に寄せる歌」。第1幕、始まってすぐに主人公ルサルカによって歌われる。非常に美しい旋律で、一度聴いたら忘れられなくなるくらいに親しみやすい。実はその秘密は・・・・と、レクチャーが始まる。
配布されたレジュメに冒頭部分の楽譜が載っている。この曲は、調号に♭が6つ付いている変ト長調で書かれている。そして主旋律の冒頭の部分がピアノの黒鍵だけで弾けるのだという。つまり5音階なのである。誰でも知っていることだが、通常の西洋音楽はド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・(ド)の7音階が基本。それの4度と7度(最初の音から数えて4番目と7番目)の音を抜いたものが、ド・レ・ミ・ソ・ラ・(ド)の5音階、通称「ヨナ抜き音階」であり、「月に寄せる歌」はこの主にこのヨナ抜き音階で書かれている。ドヴォルザークはヨナ抜き音階が好きで、楽曲も多い。有名な交響曲第9番「新世界より」の第2楽章、いわゆる「家路」の旋律もヨナ抜き音階であるし、後で清水さんが歌ってくれたこれも有名な「我が母の教え給いし歌」もヨナ抜き音階なのだ。
ヨナ抜き音階が使われている曲は世界中に多く認められ、西洋音楽でも民謡などに多く(「蛍の光」など)、日本では歌謡曲にも多い(「上を向いて歩こう」など)。この音階を使うと、親しみやすい旋律となり非常に覚えやすくなり、あるいし歌いやすくなる。また哀愁がただよい、懐かしさを感じたりする。名旋律やヒット曲が生まれやすい音階なのである。そう考えてドヴォルザークの楽曲を色々と思い起こしてみると、彼の独特の民族調の旋律にはヨナ抜き音階が多いようだ。このことを知った上で、『ルサルカ』を聴いてみると面白いかもしれない、という意味でのレクチャーであった。
後半は、まず清水さんが「我が母の教え給いし歌」を歌い、その後は美濃さんによる「ヨナ抜き音階による作曲のワークショップ」となった。レジュメには8つの空白のマスが印刷されていて、聴講者各自が、そこにヨナ抜き音階のド・レ・ミ・ソ・ラのみを使って8音を書き込み「作曲」をするという趣向。希望者を募って美濃さんがその人の作った8音の素材を元に、即興で曲を作ってくれるという。そして、例えばハ長調の場合、ドから始める人はとても素直な性格の人だという。レから始めるのは変わり者、ミから始める人は社会でいいところまで進める人、ソから始める人は他人をサポートするタイプ、ラから始める人は哀愁が強く出る・・・・というふうに性格が表れるとか。
私はいつものように最前列で聴講していたため、挙手したら採用してくれた。私の作った「曲」は、「ド・ラ・ソ・ミ・レ・ソ・ド・レ」で、ドから始まるのは素直なのだが、次の音が一番離れたラなのでそこはひねくれていると。離れた音に跳躍するのはここぞというサビの部分に使われる手法なので、いきなりそれが来るのは・・・・というわけである。それでも美濃さんがこれを素材に作ってくれた曲は、とても美しく旋律が流れ、美しい和声をかぶせられ、素敵な曲に変身した。美濃さん、ありがとうございました。
日生劇場では、このような楽しいイベントを一般に無料で開放してくれている。オペラの普及のための交響的な活動をしてくださることに感謝したい。おかげで『ルサルカ』が一段と楽しみになってきた。
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2017年9月16日(土)14:00〜 日生劇場 7階 大会議室 自由席 最前列センター 無料
講師:加羽澤美濃(作曲家/ピアニスト)
ゲスト:清水華澄(メゾ・ソプラノ)
日生劇場が主催する「NISSEI OPERA 2017」の公演は、11月9日(木)・11日(土)・12日(日)の3日公演で、ドヴォルザークの『ルサルカ』を上演する。それに先だって日生劇場では関連企画をいくつか開催した。いずれも無料のもので「ピロティ・コンサート」、「ドラマトゥルク・レクチャー」と「音楽レクチャー」の講座などである。私は『ルサルカ』は11月12日の公演のチケットを取ってあるので、本日の「音楽レクチャー」に参加することにして早くから申し込んでおいた。事前申し込みだけで、チケットは持っていなくても参加できるイベントである。
講師は加羽澤美濃さん。NHK・Eテレの「ららら♪クラシック」の司会を今年の3月まで務めていたので、すっかりお馴染みの方である。またコンポーザー・ピアニストとして20年に渡って活躍している。本日はゲストにメゾ・ソプラノの清水華澄さんが加わり、実演も含めて会場を盛り上げてくれた。清水さんは『ルサルカ』にイェジババ(魔法使い)の役で出演する予定になっている。
美濃さんは、実際にお会いするのは初めてだが、テレビ番組の司会だけでなく、FM番組の司会をされていた時期のあるし、キャラクタをよく知っているので初めて会ったという感じがしなかった。
「音楽レクチャー」は『ルサルカ』の解説というテーマだったが、ストーリーや演出などについては恐らく「ドラマトゥルク・レクチャー」の方で語られたのであろう、ここでは音楽の構造的(?)なところの解説、すなわちアナリーゼである。とはいっても、「ららら♪クラシック」の延長線上で、もう少し時間をかけて突っ込んだというレベルだった。演壇横に置かれた電子ピアノを弾きながら、ホワイトボードを使って、学校の授業のように進められた。
『ルサルカ』はチェコ語のオペラであるためか、上演機会は少ない。私は2011年に新国立劇場で鑑賞したことが1回あるだけだが、美濃さんは実はまだ一度もないのだという。しかし、スコアから読み解いていくと、ドヴォルザークらしい特徴が見えてくる。『ルサルカ』の中で最も有名なアリアは「月に寄せる歌」。第1幕、始まってすぐに主人公ルサルカによって歌われる。非常に美しい旋律で、一度聴いたら忘れられなくなるくらいに親しみやすい。実はその秘密は・・・・と、レクチャーが始まる。
配布されたレジュメに冒頭部分の楽譜が載っている。この曲は、調号に♭が6つ付いている変ト長調で書かれている。そして主旋律の冒頭の部分がピアノの黒鍵だけで弾けるのだという。つまり5音階なのである。誰でも知っていることだが、通常の西洋音楽はド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・(ド)の7音階が基本。それの4度と7度(最初の音から数えて4番目と7番目)の音を抜いたものが、ド・レ・ミ・ソ・ラ・(ド)の5音階、通称「ヨナ抜き音階」であり、「月に寄せる歌」はこの主にこのヨナ抜き音階で書かれている。ドヴォルザークはヨナ抜き音階が好きで、楽曲も多い。有名な交響曲第9番「新世界より」の第2楽章、いわゆる「家路」の旋律もヨナ抜き音階であるし、後で清水さんが歌ってくれたこれも有名な「我が母の教え給いし歌」もヨナ抜き音階なのだ。
ヨナ抜き音階が使われている曲は世界中に多く認められ、西洋音楽でも民謡などに多く(「蛍の光」など)、日本では歌謡曲にも多い(「上を向いて歩こう」など)。この音階を使うと、親しみやすい旋律となり非常に覚えやすくなり、あるいし歌いやすくなる。また哀愁がただよい、懐かしさを感じたりする。名旋律やヒット曲が生まれやすい音階なのである。そう考えてドヴォルザークの楽曲を色々と思い起こしてみると、彼の独特の民族調の旋律にはヨナ抜き音階が多いようだ。このことを知った上で、『ルサルカ』を聴いてみると面白いかもしれない、という意味でのレクチャーであった。
後半は、まず清水さんが「我が母の教え給いし歌」を歌い、その後は美濃さんによる「ヨナ抜き音階による作曲のワークショップ」となった。レジュメには8つの空白のマスが印刷されていて、聴講者各自が、そこにヨナ抜き音階のド・レ・ミ・ソ・ラのみを使って8音を書き込み「作曲」をするという趣向。希望者を募って美濃さんがその人の作った8音の素材を元に、即興で曲を作ってくれるという。そして、例えばハ長調の場合、ドから始める人はとても素直な性格の人だという。レから始めるのは変わり者、ミから始める人は社会でいいところまで進める人、ソから始める人は他人をサポートするタイプ、ラから始める人は哀愁が強く出る・・・・というふうに性格が表れるとか。
私はいつものように最前列で聴講していたため、挙手したら採用してくれた。私の作った「曲」は、「ド・ラ・ソ・ミ・レ・ソ・ド・レ」で、ドから始まるのは素直なのだが、次の音が一番離れたラなのでそこはひねくれていると。離れた音に跳躍するのはここぞというサビの部分に使われる手法なので、いきなりそれが来るのは・・・・というわけである。それでも美濃さんがこれを素材に作ってくれた曲は、とても美しく旋律が流れ、美しい和声をかぶせられ、素敵な曲に変身した。美濃さん、ありがとうございました。
日生劇場では、このような楽しいイベントを一般に無料で開放してくれている。オペラの普及のための交響的な活動をしてくださることに感謝したい。おかげで『ルサルカ』が一段と楽しみになってきた。
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