Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

7/18(水)東京フィル/オペラシティ定期/ヴィオッティのオール・フレンチ/小山実稚恵のラヴェルP協/ドビュッシーの交響詩「海」

2018年07月18日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 第119回 東京オペラシティ定期シリーズ

2018年7月18日(水)19:00〜 東京オペラシティコンサートホール A席 1階 3列 17番 5,355円(会員割引)
指 揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
ピアノ:小山実稚恵*
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:依田真宣
【曲目】
ラヴェル:道化師の朝の歌
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調*
《アンコール》
 ドビュッシー:前奏曲集 第1巻より第8曲「亜麻色の髪の乙女」*
ドビュッシー:牧神の午後ヘの前奏曲
ドビュッシー:交響詩「海」(管弦楽のための交響的素描)

 東京フィルハーモニー交響楽団の「第119回 東京オペラシティ定期シリーズ」を聴く。最近、好調な東京フィルの定期演奏会は聴き逃すべきではないというのが持論である。ここ数年の東京フィルは、名誉音楽監督のチョン・ミョンフンさん、首席指揮者のアンドレア・バッティストーニさん、そして特別客演指揮者のミハイル・プレトニョフさんの3人の指揮者で、サントリーホールと、東京オペラシティコンサートホールと、オーチャードホールの定期演奏会をほとんど賄っていて、3者3様の特徴を出しつつ、いずれもクオリティの高い演奏を聴かせてくれている。ところが、7月は彼らの来日がなく、東京フィルとしては珍しく、ゲスト指揮者が登場する定期演奏会になった。
 そこで登場したロレンツォ・ヴィオッティさん。スイス・ローザンヌの出身で、リヨンとウィーンで声楽とピアノ、打楽器を学び、ワイマールのフランツ・リスト音楽院で指揮法を学んだという。それ以降、ヨーロッパ各地のオーケストラと共演を重ねている。並行してオペラ分野でも各地の歌劇場でキャリアをスタートさせている若手の成長株ということらしい。今回の来日では、東京フィルで本日7月18日の「東京オペラシティ定期」と明日19日の「サントリー定期」に客演するばかりか、すでに7月1日〜15日、新国立劇場のオペラ公演『トスカ』を指揮して新国立デビューも果たしている(その際のオーケストラも東京フィル)。東京フィルでの定期演奏会を終えた後は、びわ湖ホールに移動して7月21日・22日に再び『トスカ』を同じプロダクションで指揮する予定になっている。新国立の『トスカ』は行きたかったのだが都合がつかずに断念した。だから本日がヴィオッティさんと初対面となる。

 プログラムはオール・フレンチ。しかも近代のラヴェルとドビュッシーである。ヴィオッティさんの得意の分野なのだろう。私としてはあまり得意な分野ではないので、聴いていてもあまりピンと来ない・・・・。つまり演奏の良し悪しがあまりよく分からないというのが実状なのだ。曲自体はどれも知っているし、何度もナマの演奏を聴いているが、どうもフランス音楽の管弦楽曲は理解しにくく感じる。理解しようとすること自体が聴き方として間違っているのかもしれない。ただ聴いて、感じ取るだけなら何とかなるかな・・・・。

 ラヴェルの「道化師の朝の歌」は東京フィルの弦楽のアンサンブルの上手さが際立っていたし、オーケストラの色彩感を決める木管群の個人技も見事だったが、むしろそれらに頼っているようで、ヴィオッティさんもまだこのオーケストラを掴みきれていないのではないか、という印象だった。

 2曲目のラヴェルの「ピアノ協奏曲 ト長調」は、ゲスト・ソリストに小山実稚恵さんを迎えた。小山さんの演奏はベテランらしい安定感のあるものだったが、最前列のピアノの真下で聴いていたので、ラヴェルらしい音の煌めきや透明感などは感じ取れるはずもなく、むしろ多用されている不協和音が耳障りに感じてしまった。巨大なピアノが目の前をふさいでいるので、オーケストラ側の音もよく聞こえて来ないし、まあ、この位置で聴くピアノ協奏曲については、ノーコメントの方が無難だろう。
 小山さんのソロ・アンコールは、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」で、これくらいの曲だとピアノの音がうるさくは感じられないので、まあまあ素敵な演奏だったと思う。

 後半はまずドビュッシーの「牧神の午後ヘの前奏曲」。フルートの怪しげな調べで始まり、ホルンやオーボエも手堅い上手さを発揮している。弦楽の夢幻的な和声も美しい響きを描いている。全体に漂う、何ともいえない濃厚な色彩感には、東京フィルらしさがよく出ている。そこに描かれている世界が「映像的」というのは陳腐な表現になってしまうが、実際に聴いていると本当に霧に覆われた神々の世界のような情景が見えるような気がしてくる。このような「場」を創り出す演奏は、オペラやバレエのピットに入ることの多い東京フィルならではの臨場感があり、他の国内のオーケストラではなかなか出せないもののようだ。

 最後は、ドビュッシーの「交響詩『海』」。この曲も昔から何度も聴いているのに、未だによく分からない曲だ。各楽章の標題を知った上で聴けば、確かに描かれている世界はその通りに感じ取れる。しかし標題を知らずに聴いた時に「海」の様々な表情を感じ取れるものかどうか 。たとえば第1楽章の「海の夜明けから真昼まで」を聴いて、その情景が目に浮かんでくるようであれば、それは良い演奏ということになるのか(標題音楽という意味で)。それとも緻密に組み立てられている和声や、各楽器のパートが質感の高い音色で演奏されていれば良いのか(純音楽という意味で)。
 いずれにしてもこのような曲の場合、指揮者が望んでいることとオーケストラが表現していることが一致できるものなのか。その辺がよく分からないのである。今日の演奏は、標題音楽的にとても美しい映像を見ているように感じられたが、それがヴィオッティさんの手腕によるものなのか、東京フィルの演奏技術によるものなのかが、判然としなかった。ヴィオッティさんが東京フィルを掴みきれているようには、どうしても思えなかったからである。演奏自体はとても美しかったのだけれども・・・・。

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