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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

10/23(木)読響/気楽にクラシック/「中欧の宝石」プラハ/ヴロンスキーの爆音轟くドヴォ8

2014年10月24日 02時08分30秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 気楽にクラシック ~ヨーロッパ音楽紀行~
第4回 モーツァルトも愛した“中欧の宝石”プラハ


2014年10月23日(木)20:00~ 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 3列 15番 5,533円(下期会員価格)
指 揮: ペトル・ヴロンスキー
ピアノ: 清水和音
管弦楽: 読売日本交響楽団
コンサートマスター: 日下紗矢子
ナビゲーター: 中井美穂(アナウンサー)
【曲目】
モーツァルト: ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488
ドヴォルザーク: 交響曲 第8番 ト長調 咲く雛88

  読売日本交響楽団の「気楽にクラシック ~ヨーロッパ音楽紀行~」シリーズの第4回は「モーツァルトも愛した“中欧の宝石”プラハ」というテーマで、指揮はプラハ生まれでチェコを中心に活躍しているペトル・ヴロンスキーさん。今回の客演では、すでに「サントリーホール名曲シリーズ」と「東京芸術劇場マチネーシリーズ」で、スークの「弦楽のためのセレナード」とマーラーの「交響曲第1番『巨人』」を演奏している。そちらの方は聴いていないので、どんな演奏だったかは知る由もないが、彼は東日本大震災の直後の211年5月、キャンセルして来日しなかったズデニェク・マーツァルさんの急遽代役に立てられてドヴォルザークやマーラーのプログラムを振って大好評を得た。私はその時は「みなとみらいホリデー名曲シリーズ」オール・ドヴォルザーク・プログラムを聴いている。それ以来の3年半ぶりとなった。
 「気楽にクラシック」シリーズは基本的に1時間のコンサートなので、コンパクトにまとまったプログラムだ。今日はオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の初演など、プラハとの縁も深いモーツァルトのピアノ協奏曲第23番(ピアノは清水和音さん)と、ドヴォルザークの交響曲第8番という名曲ものだ。短いけれども聴き応えのあるプログラムだと思う。
 コンサートに先立って、恒例のプレトークは、アナウンサーの中井美穂さんと横浜国立大学准教授の小宮正安さんによるナビゲーションだったが、今回は話の内容が音楽の中身ではなくて、作曲家や作品の背景についてであった。要するにほとんど知っている話題であったため、あまり参考にはならず・・・・。

 モーツァルトのピアノ協奏曲第23番では、まず読響が弦楽を中心にスッキリしたアンサンブルを聴かせてくれた。ヴロンスキーさんの音楽は職人気質というか、手堅いがディテールまでこだわる感じだ。第1楽章は、清水さんのピアノが入ってくると、抑えが効いたキレイな音色で、現代的な雰囲気のモーツァルトが聞こえてくる。シャープでキレ味が良く、音の粒立ちがクッキリ明瞭なのに、あまり尖っていない。今日は1列目、ピアノの真下で聴いているのに、清水さんのピアノは雑味のない音を聴かせている。さすがにバランス的にはピアノの音が大きくはなってしまうが、それでもかなり抑制的で、オーケストラとのバランスもさほど気にならなかった。軽快な第1楽章は、ヴロンスキーさんの音楽のノリが良く、清水さんの繊細さも併せ持つピアノと、かなり良い感じであった。
 第2楽章は、Adagioの緩徐楽章で、短調で哀しげな調べだ。ピアノが中心になるため、オーケストラはさらに抑制的に演奏していた。清水さんのピアノはかなり切り詰めた感じの弱音部分が哀愁を感じさせて素敵だ。
 第3楽章は再び軽快なAregro assaiのロンド。ロンド主題の弾むようなタッチが、清水さんの場合は軽すぎず、重すぎず、適度でなかなか良いが、やはり全体のタッチは男性的で、軽快な中にも力感が強く感じられるところもある。音質はあくまでクリアで明瞭だ。オーケストラとの掛け合いも、基本的にインテンポで推進力のあるタイプの演奏であった。
 今日のモーツァルトは、いかにも現代的な演奏。スッキリしてメリハリがあり、ピアノもオーケストラも明瞭で闊達であった。

 プログラムの後半は、ドヴォルザークの交響曲第8番。聴く機会は第9番「新世界から」の方が圧倒的に多いが、この第8番の方が、ボヘミアのご当地的な色彩が濃厚で、しかもロマン性も豊か。名曲中の名曲だと思う。
 ヴロンスキーさんにしてみれば、目をつぶってでもできるお家芸みたいなものなのだろう。音楽作りはまったく的を射たもので、そのテンポ感や旋律の歌わせ方などは、そのものズバリという感じ。王道を行く堂々たる自信に満ちている。しかもスゴイと思ったのは、読響の特長を的確に捉えていて、オーケストラをギリギリまで鳴らして爆音を轟かしているのだ。
 第1楽章は、Allegro con brioのソナタ形式。ト長調の曲なのに、何故かト短調の序奏が付くが、これが曲全体のイメージを決める哀愁を帯びたものだ。ソナタ形式の主部に入ると、読響の音が活き活きとしてきて、非常に躍動的、そしてエネルギッシュである。経過的に表れるヴィオラがグンと出てくると、負けじと第1ヴァイオリンが受け返したりして、そのやりとりが面白い。強奏の全合奏に鳴った時の弦楽の分厚くパワフルなアンサンブルは、読響にしかできない迫力を押し出す。それをうまく使って、ヴロンスキーさんがダイナミックな音楽を作っていくのである。
 第2楽章の緩徐楽章も、最初から意外なくらい強く押し出してきた。主部は哀愁を帯びた旋律を木管や弦楽にうまく歌わせている。一見して自然で特別なことはしていない感じだが、細部まで作り込んでいて、うまく歌わせているのだ。この辺は芸の細かいところだ。途中の強奏に盛り上がる部分はダイナミックに作り、弱音の主題との対比も明瞭だ。コンサートマスターの日下紗矢子さんのソロ部分も、協奏曲のソリストのような、カッチリした弾き方である。ヴロンスキーさんしメリハリをハッキリさせるのがお好みのようだ。
 第3楽章はワルツ風の舞曲。この哀しげで美しい旋律は、読響の弦楽が第1ヴァイオリンの緻密で澄んだアンサンブルで聴かせ、それをぶ厚い弦楽のアンサンブルが支える。中間部の木管群も回るような(円舞曲のような)リズム感で、質感も高く、美しい主題を歌わせる。再現部で主題が帰ってくる辺りの細やかな解釈と表現力は見事なもので、さすがにお国ものという感じ。ただ美しいだけではない。土と森の香りが漂ってくる、自然の美しさとでもいえばよいだろうか。
 第4楽章は、トランペットの華やかなファンファーレが高らかに決まり、主題と変奏に入っていく。チェロの提示する主題をヴィオラやヴァイオリンが受ける、左右から交互に強いタッチで音が聞こえてきて、ステレオ感がスゴイ。この楽章は、概ね強演奏が多く、金管と打楽器が出す轟音に負けまいと弦楽が全力で音を絞り出している。この弦楽を含めたエネルギッシュな演奏は読響ならでは。東京オペラシティコンサートホールの幅の狭いホール空間が音でいっぱいになり、ティンパニが地響きのように轟くとき、普通ならうるさく感じるのだが、今日はどういうわけか、大音量にもかかわらず、各パートのバランスも良く、それぞれの楽器の音も明瞭に聞こえてくる。つまり、これは素晴らしい演奏なのだと思う。ヴロンスキーさんは、読響のダイナミックレンジを目一杯広く使って、それでいて王道を行くご本家の解釈を展開した、そんな印象の演奏であった。
 また今日は、コンサートマスターの日下さんが実にキレの良い動きを見せ、フォアシュピーラー席に着いていた長原幸太さんと最強のツートップ体制で、弦楽をギリギリまで引っ張っていた。対向側のヴィオラ・トップの鈴木康浩さんもいつも以上にダイナミックな動きを見せ、指揮台を挟んで丁々発止のやりとりがとても楽しそうだった。彼らの演奏している時の表情がとても素敵だ。目がキラキラ輝いているのである。

 というわけで、1時間ちょっとのコンサートにもかかわらず、モーツァルトとドヴォルザークの名曲を2曲、非常に凝縮度の高い、素晴らしい(というか楽しい)コンサートであった。聴いた結果は大満足であった。
 と、ここでみみっちいお話しをひとつ。この「気楽にクラシック」シリーズは年6回の公演で、私の場合、まず前期3回の会員になり、更新して後期も会員を継続した。後期の3回のうち12月の回は「第九」になるので単価が高く、定価は9,200円。他の2回の定価は5,100円である。つまり3回分の定価は、合計で19,400円。後期会員になると割引で16,600円で買える。それは良いのだが、会員券の券面価格は平均値になっているので、今日のコンサートは何と5,533円と印刷されている。・・・・え? 会員券なのに、1回券の定価より高い・・・・?? これって、行けなくなって誰かに売るとしたら、いくらで売れば良いのだろう・・・・???

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【お勧めCDのご紹介】
 今日演奏された清水和音さんの「モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番&第24番」です。共演しているのは、指揮者が東日本大震災の直後、読響の客演をキャンセルして来なかったズデニェク・マーツァルさん(その時の代役が今日のヴロンスキーさんだった)。一方、オーケストラは大震災の時来日中だったチェコ・フィル。ミューザ川崎の天井崩落で公演が中止になり、私はその時は聴けなかった。何だか、因縁めていますねー。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番&第24番
清水和音,モーツァルト,マーツァル(ズデニェク),チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
オクタヴィアレコード


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