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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

6/9(土)東京フィル/響きの森シリーズ/コバケン+渡辺玲子のチャイコフスキーVn協奏曲と「田園」

2012年06月12日 01時08分06秒 | クラシックコンサート
響きの森クラシック・シリーズ Vol.40

2012年6月9日(土)15:00~ 文京シビックホール A席 1階 3列 18番 4,000円
指 揮: 小林研一郎
ヴァイオリン: 渡辺玲子*
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35*
ベートーヴェン: 交響曲 第6番 ヘ長調 作品68「田園」
《アンコール》
 アイルランド民謡: ダニーボーイ

 文京シビックホールで開催される東京フィルハーモニー交響楽団による「響きの森シリーズ」は、東京の真ん中で開催されるのにもかかわらず、自治体主催の文化イベントなので、価格がお手頃、しかも内容が良いので、過去に何度も聴きに行っている。今シーズン(2012/2103年)のVol.40~43は、すべてコバケンこと小林研一郎さんが指揮する「ベートーヴェン交響曲シリーズ」ということになり、しかもゲスト陣が充実している。今日のVol.40はヴァイオリンの渡辺玲子さん(曲目は上記の通り)、Vol.41はピアノのユンディ・リさんでチャイコフスキーのピアノ協奏曲と「英雄」、Vol.42は年末の「第九」、Vol.43はピアノの仲道郁代さんで「皇帝」と交響曲第7番。あまりにも思いっきりの良い名曲づくしと豪華ソリスト陣だったので、迷わず年間セット券を買ってしまった。
 コバケンさんといえば、日本フィルの「コバケン・ワールド」の4回シリーズも買ってしまったので、今年はコバケンさんを聴く機会が急に増えてしまった(10回以上は確実)。彼の演奏は好みの分かれるところではあるが、音楽は常に生き物であるから何がおこるかわからない。この機会にコバケンさんをじっくり聴いてみようと思う。

 さて渡辺玲子さんによるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲といえば、昨年2011年11月に新日本フィルの「新・クラシックへの扉」シリーズで聴いたばかりである。渡辺さん自身の演奏スタイルは、その時の印象とかわったところはない。極めて攻撃的で、押し出しが強く、圧倒的な技巧と、鋭い音色で、オーケストラとガチンコ勝負というようなところだ。ガリガリっと音を濁らせても力強く押し出してくる低音域、やや硬めの音で豊かな音量を聴かせる中音域、そして鋭く空気を引き裂くような高音域の叫び。聴いているものの精神に直接触れてくるような演奏であり、ある意味では「情熱的」であり攻撃的な印象を受けるのである。一方で、第2楽章などの抒情性や感傷的な旋律などの表現においては、優しさに欠けるようにも思えた。一言でいってしまえば、アクの強い演奏でもあるので、聴く側の好みとしては分かれる所かもしれないが、一般的にはこのような丁々発止の協奏曲は聴いていても楽しい。スリリングで緊張感も高いし、第1楽章の終盤や、第3楽章のコーダなどはエキサイティングで、興奮をかき立てる。その意味では協奏曲の醍醐味をたっぶりと味わわせてくれた素晴らしい熱演だったといえよう。
 また、コバケンさんのサポートも良かった。ソリストが経験の浅い若手だと、コバケンさんは盛り立てようとして変に気を遣って引いてしまったり、あるいはソリストをマイペースに押さえ込んだりしまったりする傾向が見られるが、今日はソリストが経験豊富なヤリ手だから、ちょうど良い具合にぶつかり合っていたようだ。コバケン節が前面に出てくるようなことはなかったが、協奏曲の演奏としては素晴らしいバランス感覚だったと思う。

 後半は「田園」。今シーズンは「ベートーヴェン交響曲シリーズ」ということで、毎回ベートーヴェンの交響曲がプログラムに載る。「田園」「英雄」「第九」「第7番」という構成は、誰でも知っている名曲を集めました、という感じだが、「運命」がないのはちょっと意外だ。むしろ「田園」だけがちょっと異質な感じがしないでもなかったのだが…。
 今日の演奏は、もちろんコバケンさんだから、オーソドツクスかつ落ち着きのあるもので、終日の午後、美しい音楽に身を委ねて、心地よい一時を過ごすことができた。東京フィルの演奏もなかなかツボを心得た素敵なものだったといえる。この曲ではとくに、オーボエの牧歌的な響き、クラリネットのそよ風のような優しさ、ホルンの長閑な響きと轟くような咆哮、清冽かつ重厚な弦楽のアンサンブルなどがポイントとなるが、いずれも東京フィルらしい深みのある音色で、田園風景の絵画的な世界をうまく描き出していたと思う。
 実際に聴き終えてみて感じたのだが、休日の午後(天候は悪かったが)にのんびりと聴くのには「運命」より「田園」の方がずっと良い。まことに的を射た選曲だったのである。ベートーヴェンの交響曲を、例えばツィクルスなどで聴く場合は、「田園」も極めて純音楽的に聞こえるものだが、単独でとくにマチネーで聴くような場合は、気分的にも標題音楽、それもすこぶる絵画的な音楽に聞こえてくるから不思議だ。名曲の名曲たる所以なのであろう。
 アンコールはコバケンさんの十八番、「ダニーボーイ」。なんだかんだといって、素敵に感動的なコンサートの締めくくりであった。

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