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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/25(金)新日本フィル/新・クラシックへの扉/ボストック+渡辺玲子の「強烈」なチャイコフスキーVn協奏曲

2011年11月26日 01時28分27秒 | クラシックコンサート
新日本フィルハーモニー交響楽団/金曜午後2時の名曲コンサート
「新・クラシックへの扉」第18回


2011年11月25日(金)14:00~ すみだトリフォニーホール S席 1階 2列 20番 3,600円(会員価格)
指 揮: ダグラス・ボストック
ヴァイオリン: 渡辺玲子
管弦楽: 新日本フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
ムソルグスキー/リムスキー=コルサコフ編: 交響詩『はげ山の一夜』
チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
ストラヴィンスキー: バレエ組曲『火の鳥』(1919年版)
《アンコール》
グリンカ: 歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲

 新日本フィルハーモニー交響楽団の金曜午後2時の名曲コンサート・シリーズ「新・クラシックへの扉」。2011-2012シーズンの第2回はダグラス・ボストックさんの指揮によるオール・ロシア・プログラム。当初発表されていた曲目ではあまりに短いと考えたのか、『はげ山の一夜』が追加された。それでも、アンコールを含めても2時間には満たなかった。まあ、お値段もそこそこのコンサートなので、文句も言えないところだ。曲目を見れば分かるように、アンコールを含めて、どれも有名な曲ばかり。安心して聴けるから名曲コンサートは楽しい。

 1曲目は『はげ山の一夜』。ボストックさんの指揮は、正攻法でしっかりとして構造感を持っている。新日本フィルの持てる能力を最大限に引き出させようと、律儀な曲作りを試みたようだ。ホルンがふらつくこともあったが、トロンボーンとチューバの金管重低音が豪快に決まり、それら負けないように崔 文洙さん率いる弦楽が奮闘し、非常にパワフルな演奏になった。

 2曲目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ゲストのソリストは渡辺玲子さん。1966年生まれというから45歳になる。年齢的には中堅どころということになろうが、演奏はなかなか過激なものだった。この曲は1ヵ月ほど前、第80回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門の本選会で、第1位になった藤江扶紀さんと入選の宮川奈々という若いふたりの演奏を聴いたばかり。だから彼女たちが生まれる前から第一線で活躍している渡辺さんが、この名曲をどのように料理するのか楽しみにしていたのである。


 渡辺さんのプロフィールには「超絶的なテクニック、玲瓏で知的な音楽性、切れ味鋭い官能性」と書かれている。確かに「切れ味鋭い」演奏であることは誰しもが認めるところだろう。第1楽章の冒頭、ボストックさんは速めのテンポでキッチリと序奏を作っているのにソロ・ヴァイオリンはいきなりマイペースのカデンツァ風に入ってくるし、独特の「官能性」のある演奏が展開されていく。旋律のフレーズ毎に揺れるテンポ、鋭い立ち上がりの音色、むき出しの感性が作り出すゴツゴツした曲の表情…。これまでに聴いたどの演奏家のチャイコフスキーとも違う、独自の世界が描かれていく。音のキレイさよりね情念を優先させた攻撃的な演奏で、聴く者を圧倒していく迫力が満ちていた。おそらく、これまで何十回も聴いた中で、最も「激しい」演奏だったと思う。
 第2楽章はかなり大きめの音量で終始し、やや一本調子にも感じられたが、緩徐楽章にもかかわらず、たった一挺のヴァイオリンでオーケストラを足下に従えてしまっていた。
 第3楽章はまさに「超絶的なテクニック」の連続だった。間違えずに正確に演奏するという意味でのテクニックなら、コンクールに出てくるような若い演奏家たちも当然のごとく持ち合わせているが、渡辺さんのテクニックはそういうレベルではなく、解釈や情念を音楽に置き換える「テクニック」である。オーケストラとガチンコでぶつかれる圧倒的な存在感とガシガシと弾く押し出しの強さ。オーケストラの音の奔流の中にあっても、決して交わらない異質の音が常に飛び出し続けていた。
 この手の強烈な演奏は、圧倒的な説得力があり、聴く者をエキサイトさせる。しかし冷静になってみれば、好き嫌い、賛否の分かれるところかもしれない。私個人としては、強い押し出しは良いとしても、もう少しキレイな音色が欲しかった。ちなみに公演プログラムによると使用楽器は1736年製のグァルネリ・デル・ジェスの「ムンツ」(日本音楽財団より貸与/最近まで南紫音さんが使用していた楽器)。グァルネリの音は芯が強いから、やり過ぎるとガシガシになってしまう…。

 後半は『火の鳥』。フルスケールのオーケストラがステージいっぱいに拡がっていた。14型の弦5部と2管編成+ホルン4、トロンボーン3、チューバ1だが、打楽器系が7楽器に、ハープ、ピアノ、チェレスタが加わる。
 演奏はボストックさんの指揮にしっかりとした構成力があり、なかなか素晴らしいものだった。金管楽器はだだ詩のタイミングが時々乱れたりもするが、これは許容範囲内。木管楽器はそれぞれが色彩感豊かな音色を出していたし、弦楽のアンサンブルもビタリと合っていた(崔 文洙さんがコンサートマスターを務める日はいつも良い)。各パートのバランスも良く、特に打楽器系が大きくなり過ぎず、うまくまとまっていたと思う。
 ストラヴィンスキーの音楽は極彩色のイメージ。原色が次々と現れて、音が塗り替えられていくといった感じがする。求められる音色の多彩さに対して、今日の新日本フィルはかなりいいセンまでいっていたのではないだろうか。音がカラフルなだけでなく、リズム感良く、キリリと引き締まった演奏だったので、より色彩感が明瞭になっていた。ぜんたいてきにも切れ味の良い演奏だったと思う。

 アンコールは『ルスランとリュドミラ』序曲。最後にこの曲か(!!)。超ハイスピードで駆け抜けるパッセージも、今日の新日本フィルの弦楽はピタリと合わせた楽しい演奏で、最後は大いに盛り上がった。

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