Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

4/3(火)二期会創立60周年記念ガラ・コンサート/一夜限りの夢の響宴はトップ・アーティストが勢揃い

2012年04月05日 01時44分43秒 | 劇場でオペラ鑑賞
二期会創立60周年記念ガラ・コンサート

2012年4月3日(火)18:30~ 東京オペラシティ・コンサートホール S席 1階 2列 14番 8,000円
指 揮: 下野竜也
管弦楽: 東京交響楽団
【出演】
ソプラノ: 幸田浩子/佐々木典子/澤畑恵美/安井陽子/横山恵子
メゾ・ソプラノ: 林 美智子
アルト: 伊原直子
テノール: 樋口達哉/福井 敬/望月哲也
バリトン: 栗林義信/黒田 博/宮本益光
【曲目】
《第一部》
ワーグナー:『ローエングリン』第3幕への前奏曲
モーツァルト:『ドン・ジョヴァンニ』より「シャンパンの歌」(宮本)
モーツァルト:『フィガロの結婚』より“恋とはどんなものかしら”(林)
モーツァルト:『フィガロの結婚』より“甘さと喜びの美しいときは”(澤畑)
モーツァルト:『コジ・ファン・トゥッテ』より“いとしき人の愛のそよ風は”(望月)
モーツァルト:『魔笛』より“復讐の心は地獄の炎のように燃え”(安井)
ワーグナー:『タンホイザー』より「夕星の歌」(黒田)
R.シュトラウス:『ナクソス島のアリアドネ』より“偉大なる王女様”(幸田)
R.シュトラウス:『ばらの騎士』より“固く武装する胸もて”(福井)
R.シュトラウス:『ばらの騎士』より第3幕 終幕の三重唱(佐々木、幸田、林)
《第二部》
ビゼー:『カルメン』より第1幕への前奏曲
ビゼー:『カルメン』より「ハバネラ」(伊原)
ヴェルディ:『リゴレット』より“悪魔め、鬼め”(栗林)
プッチーニ:『ラ・ボエーム』より“冷たい手を”(樋口)
プッチーニ:『ラ・ボエーム』より第3幕 終幕の四重唱(澤畑、安井、望月、宮本)
プッチーニ:『トゥーランドット』より“この宮殿の中で”(横山)
プッチーニ:『トゥーランドット』より“誰も寝てはならぬ”(福井)
レハール:『メリー・ウィドー』より「ヴィリアの歌」(佐々木)
レハール:『メリー・ウィドー』より“女・女・女”(男性歌手全員)
レハール:『メリー・ウィドー』より「メリー・ウィドウ・ワルツ」(全員)
《アンコール》
 J.シュトラウスII:『こうもり』より「シャンパンの歌」(全員)

★ロビーコンサート★
【出演】
ソプラノ: 嘉目真木子
テノール: 大澤一彰
ピアノ: 梅田麻衣子
【曲目】
ヴェルディ:『椿姫』より“ああ、そは彼の人か~花から花へ”(嘉目)
ベッリーニ:『清教徒』より“いとしい乙女よ、あなたに愛を”(大澤)
レオンカヴァッロ:『パリアッチ(道化師)』より“大空を晴れやかに(鳥の歌)”(嘉目)
マスカーニ:『カヴァレリア・ルスティカーナ』より“ママ、この酒は強いね”(大澤)
《アンコール》
 ヴェルディ:『椿姫』より「乾杯の歌」(嘉目、大澤)

 二期会が設立されて今年で60年を迎える。今日は記念のガラ・コンサート。暴風雨の吹き荒れる中、18:30スタートに遅れないようにと早めに出かけたところ、17:45からロビー・コンサートが開かれた。こちらは今日のガラには出演しないが、今年の二期会の上演予定の「カヴァレリア・ルスティカーナ/パリアッチ」に出演される嘉目真木子さんと大澤一彰さんが素晴らしい歌唱を聴かせてくれた。アリアを2曲ずつに、なんとアンコールまで。始まる前から贅沢なイベントである。

 さて本編の方も贅沢きわまりない豪華な出演者とプログラム。出演者の皆さんは、まさに日本のオペラ界の超一級の人たちで、その実力ばかりか圧倒的な存在感を発揮し、聴いている私たちが疲れを感じるほど、パワーとオーラを浴びせてくれた。
 コンサートは『ローエングリン』第3幕への前奏曲で幕開け。下野竜也さんのキレの良い指揮と東京交響楽団の緻密なアンサンブルが「始まるぞ~!!」という雰囲気を盛り上げる。
 まず最初は宮本益光さんの『ドン・ジョヴァンニ』から。宮本さんが歌うと、ドン・ジョヴァンニが良い人に聞こえてしまう。張りのある素敵な歌唱である。今日は宮本さんの司会進行でコンサートが進んで行く。軽妙なトークもお馴染みだ。
 第一部の前半はモーツァルト特集ということで、二期会の演目の中でも上位を占める『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』『魔笛』から3曲。林美智子さんお馴染みの“恋とはどんなものかしら”を黒のスラックス姿で歌う。今日は他の曲もすべてズボン役なので、あえてこの衣装で、ということらしい。久しぶりに聴いたケルビーノだったが、リラックスして楽しそうな歌唱だった。
 続いて澤畑恵美さんの伯爵夫人。昨年2011年4月の二期会公演の『フィガロの結婚』でもこの役を歌っていた。美しい容姿と気品のある歌唱は、まさに二期会のプリマ・ドンナの貫禄である。
 次は望月哲也さんのフェランドのアリア。望月さんのノーブルで甘い声質はことのほか素敵だ。女性に振り回される誠実で気弱な男性(オペラに良く出て来るキャラクターだ)を歌わせたら、この人の右に出る者はいないだろう。
次は安井陽子さんの夜の女王のアリア。安井さんの定番メニューといったところで、突き抜けるような力強い高音とアクロバティックな歌唱で会場を沸かせた。
 次はやはり二期会で採り上げることの多いワーグナーで、『タンホイザー』より「夕星の歌」を黒田 博さんが歌った。深みのあるバリトンで、落ち着いた雰囲気が素敵だ。ワーグナーは苦手なので音楽についてはよく分からないが、黒田さんが上手いのはよく分かる。
 第一部の後半はリヒャルト・シュトラウスの名曲の数々。まず幸田浩子さんによるツェルビネッタ。“偉大なる王女様”のアリアは、役柄を含めてものすごく難しそうだ。転調が多く、主旋律が飛び回って定まらず、しかも高音域に加えてコロラトゥーラ的な装飾歌唱…。幸田さんは相変わらず可愛らしく、可憐な歌声で、いつまでも二期会のアイドルである。
 続いては『ばらの騎士』から福井 敬さんによる“固く武装する胸もて”。『ばらの騎士』に主役クラスのテノールなんてあったっけ? …などと首をかしげていたら、そうそうありました。その役名も「テノール歌手」。この役の歌う1曲半のアリア(?)は、シュトラウスがイタリア・オペラを揶揄して加えたようなものだが、素晴らしいイタリア風(?)の旋律で聴き応えたっぷりの曲である。コンサート・アリアとして採り上げるのは珍しい。私も初めて聴いた。福井さんの圧倒的なパフォーマンスに、もう痺れっぱなしである。
 第一部の最後は、『ばらの騎士』終幕の三重唱。佐々木典子さんの元帥夫人、林さんのオクタヴィアン、幸田さんのゾフィーは、二期会でというよりは、現在の日本で考え得る最強のメンバーだ。3人3様の心模様が美しく重なり、転調を繰り返して盛り上がっていく。クライマックスでティンパニの打ち鳴らされると光り輝くような陶酔的な世界! 「これぞオペラ!」という豪華で贅沢なひとときである。もう何も言うことはない。

 第二部は『カルメン』第1幕への前奏曲から。下野さんの快調なテンポが嬉しい。
 続いては同じ『カルメン』から大ベテランの伊原直子さんによる「ハバネラ」。伊原さんは二期会でカルメンを歌った回数が一番多いのだそうだ。ご自身のペースでテンポを揺らし、抜群の感性でタメが入るのはさすがのものだ。下野さんが必死になってオーケストラを合わせていく。やはり歌手が主役のオペラならではの光景だ。
 次も大ベテランの栗林義信さんによるリゴレット。私などの生まれる前から歌っておられた名歌手である。豊かな声量と押し出しの強い歌唱は健在で、会場から熱い喝采が飛んだ。
 第二部の中盤はプッチーニ特集。まず『ラ・ボエーム』より“冷たい手を”ほ樋口達哉さんが熱唱する。NHKのニューイヤーオペラコンサートのときも感じたが、樋口さんは声量がスゴイ。あれほどのパワーで熱烈に口説かれたら、ミミならずとも大抵の女性は参ってしまうに違いない。
 続いて、『ラ・ボエーム』より第3幕 終幕の四重唱を、澤畑さんのミミ、安井さんのムゼッタ、望月さんのロドルフォ、宮本さんのマルチェッロで。甘い声の望月さんと上品な澤畑さんの歌唱はエレガントに切なく、お侠な安井さんととぼけた宮本さんも場を盛り上げる術を心得た歌い方である。
 次は、横山恵子さんのトゥーランドット姫。横山さんは体格も見事だが(失礼)、歌唱の方も超一級で、とびきり素晴らしい。豊潤なオーケストラの音を従えて、ホールの隅々にまで響き渡る強烈なソプラノ。狂気にも似た、その圧倒的なパワーと存在感で、会場を熱狂の渦に巻き込む。途方もない人である。
 続いては再登場の福井 敬さんが十八番、“誰も寝てはならぬ”を熱唱。福井さんのこの曲は何度聴いたか分からないくらいだが、今日が一番ではなかったろうか。役柄が乗り移ったように目つきが変わり、これほどにまで力強いカラフがあっただろうか。素晴らしいなどという言葉では表現できないオーラが押し寄せてくる。曲が終わった後の憑きものがとれたような優しい笑顔が印象的だった。おそらく、ご本人も満足のいく歌唱だったのだろう。
 第二部の終盤は、オペレッタ『メリー・ウィドウ』から。再登場の佐々木さんによる「ヴィリアの歌」は、声もキレイだし堂々たる歌いっぷりでスターの存在感がたっぷりである。
 次は男性歌手全員で、思いっきり楽しく“女・女・女”!! もうバカバカしいくらい底抜けに陽気なオペレッタの世界は、日頃の鬱屈した気分を(今日の強風のように)果てしない遠くへ吹き飛ばしてしまう。
 そして最後は女声陣も全員加わり、「メリー・ウィドウ・ワルツ」を全員で大合唱。芸達者な佐々木さんや宮本さんたちの楽しい小芝居を見せながら、会場いっぱいに笑顔が拡がっていく。まったく、これ以上ないというくらい素晴らしいフィナーレである。
 カーテンコールの後アンコールは、やはりオペレッタに限る。『こうもり』より「シャンパンの歌」を交代で歌い、全員で大合唱。めでたしめでたし、の締めくくりであった。

 二期会60周年のガラ・コンサート。これほど楽しく、充実したコンサートも久しぶりという感じだ。二期会の人材は豊富で、もちろん今日歌ってくれた歌手の皆さんは、二期会の精鋭だが、出演されなかった方たちの中にも素晴らしい歌手がたくさんいる。その実力はかなりのハイ・レベルである。日本人歌手だけで行う二期会のオペラ公演は、実は世界の中でもかなり上級の部類だと私は思っているのだが、いまでも根強い舶来崇拝主義のためか、一般の(熱心な方ではない)オペラ・ファンからの評価があまり高くないように見受けられる。つまり日本人がドイツ語やイタリア語で歌っているから、という理由だけで否定的なことをいう人たちがいるようである。しかし、色メガネを外して、今日のガラ・コンサートを聴けば、二期会の実力は誰にでも分かるはずだ。今日は本当に素晴らしいコンサートだったと思う。皆さん、二期会のオペラにもっと行きましょう!!

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