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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

6/11(土)東京交響楽団 第590回定期演奏会/諏訪内晶子の弾くシマノフスキのVn協奏曲第2番

2011年06月14日 16時56分56秒 | クラシックコンサート
東京交響楽団 第590回定期演奏会

2011年6月11日(土)14:00~ サントリーホール S席 1階 13列 7番 7,000円
指 揮: クシシュトフ・ウルバンスキ
ヴァイオリン: 諏訪内晶子*
管弦楽: 東京交響楽団
【曲目】
ルトスワフスキ: 小組曲
シマノフスキ: ヴァイオリン協奏曲 第2番 作品61*
《アンコール》J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番より「アンダンテ」*
ショスタコーヴィチ: 交響曲 第10番 ホ短調 作品96

 ダブルヘッダーの後半は、東京交響楽団の定期演奏会。何とも重いプログラムである。
 今日の指揮者、クシシュトフ・ウルバンスキさんはまだ若いが、ヨーロッパでは既に主要なオーケストラに招かれており、その実力は高く評価されているらしい。ポーランド出身ということなので、ルトスワフスキとシマノフスキはお国ものということになり、必然的に得意としているのだろう。そうなれば問題はショスタコーヴィチということになる。また諏訪内晶子さんのヴァイオリンを聴くのは昨年2010年12月のロンドン交響楽団の来日公演以来だ。久しぶりの国内オーケストラとの共演で、しかも曲がシマノフスキの協奏曲第2番だという。第1番は知っていたが、第2番は聴くのは初めて。従って、多少予習しておいた。

 ルトスワフスキは20世紀のポーランドの作曲家(1913-1994)。第二次世界大戦中はナチス・ドイツに占領され、戦後は社会主義陣営に組み込まれたため、常に抑圧された心理状態の中で、芸術表現にも強い制限が加えられていた時代のこと。「小組曲」は1950-1951年の作で、ポーランドの民謡を題材に小品を4つ集めた組曲である。独特の舞踊的なリズム感と民族的な旋律が絡み合うが、全体に鬱屈した重苦しさに満ちているのは、やはりこの時代のポーランドの社会情勢を感じさせる。ウルバンスキさんの音楽作りは、作品に誠実に向かい合って、負の因子を描き出す。すべて暗譜で、オーケストラの各パートに的確に指示を出していく。東響からエネルギッシュな本気モードの演奏を引き出していた。

 諏訪内晶子さんをゲストに迎えて、シマノフスキのヴァイオリン協奏曲第2番。シマノフスキもポーランドの作曲家だが、時代がすこし古く(1882-1937)、まだナチスに侵攻される前のポーランド独立時代に、この曲は作曲された(1932-1933頃)。単一楽章の曲だが、実際には中間部にカデンツァが置かれ、前後がそれぞれ独立した楽想を持つ。曖昧な調性と不安定な旋律が繰り返され、全体的に重苦しい雰囲気に包まれている。カデンツァも派手な技巧を披露する場面では決してなく、行き場のないエネルギーを切ない楽想に吐き出すようなイメージだろうか。
 諏訪内さんのヴァイオリンは今日もよく鳴っていた。彼女独特の艶やかな音色の中にも、哀しみや怒りや絶望というような、負のイメージが埋め込まれていて、美しい音色なのだけれども、胸に迫ってくるものがある。完璧なテクニックで弾けば弾くほど、美しさの中から重苦しさが滲み出てくる、といった印象だ。
 ウルバンスキさんは協奏曲も暗譜で、ソロ・ヴァイオリンとオーケストラをピタリと合わせている。この指揮者、若いが相当なものだ。
 諏訪内さんのアンコールは、やはりバッハの無伴奏から。この時だけは重苦しさから解放された、純音楽として美しい諏訪内さんのヴァイオリンの音色が響き渡っていた。

 後半のショスタコーヴィチの交響曲第10番。これもまた曲自体が相当に重い。結論から言うと、凄まじいばかりのエネルギーに満ちた演奏で、最近の東響の中では圧倒的に一番といえる演奏ではなかっただろうか。金管群も木管群も厚みのある音色で見事な演奏。弦楽もアンサンブルがピタリと合っているだけでなく、爆発的なエネルギーも発揮していた。オーケストラ全体のバランスも良く、またダイナミックレンジが広く、全合奏の時の音圧もスゴイ。
 ウルバンスキさんの指揮は常にエネルギッシュで躍動的。細部まで緻密に仕上げられていたようだし、オーケストラもそれに応えていた。50分に及ぶ複雑なこの大曲も、彼は暗譜で指揮をした。今日の演奏が素晴らしいものだったことは、会場にいた多くの人が感じ取ったことは間違いない。拍手がいつになっても鳴り止まず、カーテンコールが延々と続いた。定期演奏会でこういうことは珍しいのではないだろうか。それほど衝撃的な演奏だったのである。これでウルバンスキさんの株は一気に上がったに違いない。次回以降が楽しみな指揮者になった。

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