……病疫のこの突然の退潮は思いがけないことではあったが、しかし市民たちは、そうあわてて喜ぼうとはしなかった。今日まで過ぎ去った幾月かは、彼らの解放の願いを増大させながらも、一方また用心深さというものを彼らに教え、病疫の近々における終息などますます当てにしないように習慣づけていたのである。
……みんな考えることが一致していたのは、過去の生活の便利さは一挙に回復されはしないだろうし、破壊するのは再建するよりも容易であるということであった。
……そして、事実、ペストは今日明日には終息しなかったが、しかし見たところ、妥当に考えて期待されたよりも、もっと早く衰退していくようであった。
……しかし総体において、感染はあらゆる方面で減退し、県の公報も、まず最初は遠慮がちのひそかな希望を芽生えさせたものであったが、ついには公衆の心に、勝利が確保され、病疫はその陣地を放棄したのだという確信を固めさせるに至った。実をいえば、これが勝利というものであるかどうか、きめてしまうことは困難であった。人々は単に、病疫が、やって来たときと同じようにして去って行くらしいことを、確認するより仕方なかったのである。……
(カミュ『ペスト』新潮文庫)
新型コロナ感染症の、日本での感染者数が激減しています。10月8日の感染者数は827人で、過去最高だった8月20日の25,851人の30分の1です。
10月1日には緊急事態宣言が解除され、各種の規制が無くなりました。
これが完全な終息なのか、次の波の前の一時的な収束なのかはわかりません。(収束と終息)
この急速な感染者の減少が何によるものか、専門家も不思議がっています。
ワクチンの接種が進んだこと、緊急事態宣言で人の移動が抑えられたこと、マスク着用など対策が定着したこと…。どれも感染者数減少の理由の一つではあっても、これだけ急速に感染者が減ることの理由としては弱い。
もう一つの仮説は、感染者はもっとずっと多いのだが、数字には表れていないこと。
感染者の多くは無症状で、それゆえ医療機関に行くことも、検査を受けることもなく、感染者数にカウントされることはない。そして、そのような人が増えたために、抗体を持つ人が増え、「集団免疫」を持つことになった……。
かつてのペストやスペイン風邪が、ワクチンがないなか、理由もわからずに「終息」したのと同様に、新型コロナも、「なんかよくわからないけど、収まっちゃった」ということになるのでしょうか。
韓国の中央日報が、10月8日付のコラムで、日本の感染者数急減について書いています(リンク、日本語)。
その中で、読者のメールの紹介という形で、「『ウィズコロナ』のために検査数を減らしたのではないか」、「日本ではPCR検査に1万8000円もかかるからだ」という意見を紹介しています。
しかし、東京特派員は、
「日本のPCR検査はたしかに1万8000円かかる(唾液PCRは3000円弱)が、それは無症状のときに検査を受ける場合であって、症状がある場合は無料である。無症状でも無料で検査が受けられる韓国より、無症状感染者が多い可能性はある。検査数は、8月中旬のピーク時に一日17万件まで増えたが、最近3~6万件程度で、検査数が減っている。だが陽性判定率は8月中旬に24%あったものが10月5日には1.8%である。陽性者の減少は、「検査をしないから」という理由では説明がつかない」
と、冷静に分析していますが、記事の最後で、
「ちょうどウイルスが消滅した時期と日本の政権交代期が怖いほど重なった」
と付け加えています。
一方、産経新聞が10月7日に伝えるところによれば、韓国では、「日本政府が数字を改竄しているのではないか」という疑いの声が上がっているとのことです(リンク)。
韓国で人気のある時事ラジオ番組で、金於俊(キム・オジュン)という時事評論家が、「自民党政権が10月31日の衆院選で勝利するため、PCR検査数を減らし感染者数を抑制している」と主張したそうです。
「1カ月で感染者が10分の1になるなんてことはない。そんなやり方があれば世界はとっくにコロナを撃退している」
「政府が詐欺行為を働いてはいけない」
「日本メディアも(日本政府の不正を)指摘できずにいる」
産経の記者は、
「日本に対する根拠のない「不正集計」などの主張が登場する背景には、事態が好転しない国内状況へのいらだちもあるとみられる」
と書いています。
日本で、「選挙対策のために数字を改竄」するなんて、それがバレたときのリスクを考えれば、絶対にないでしょう。
一方、韓国は8月に3271人のピークをつけたあとも、2000人前後に高止まりしています。
10月7日の検査件数は4万8225件。このほか、臨時検査所での検査件数が10万3113件とのことで、人口の違いを考えれば、日本の3~6万件に比べて、確かに多い。
一方、「検査中」に分類されている人が120万人もいるのが「謎」です。
K-防疫とかいって、PCR検査体制が世界最高のはずの国で、こんなに検査中の人が多いのは不思議といえば不思議。文大統領の支持率への悪影響を考えて、実際の陽性者数を隠蔽しているんじゃないかと疑いたくなります。
「日本政府が数字を改竄している」という主張の背景には、「自分たちがやっているから、当然日本もやっているはず」という潜在意識があるのではないでしょうか。
……みんな考えることが一致していたのは、過去の生活の便利さは一挙に回復されはしないだろうし、破壊するのは再建するよりも容易であるということであった。
……そして、事実、ペストは今日明日には終息しなかったが、しかし見たところ、妥当に考えて期待されたよりも、もっと早く衰退していくようであった。
……しかし総体において、感染はあらゆる方面で減退し、県の公報も、まず最初は遠慮がちのひそかな希望を芽生えさせたものであったが、ついには公衆の心に、勝利が確保され、病疫はその陣地を放棄したのだという確信を固めさせるに至った。実をいえば、これが勝利というものであるかどうか、きめてしまうことは困難であった。人々は単に、病疫が、やって来たときと同じようにして去って行くらしいことを、確認するより仕方なかったのである。……
(カミュ『ペスト』新潮文庫)
新型コロナ感染症の、日本での感染者数が激減しています。10月8日の感染者数は827人で、過去最高だった8月20日の25,851人の30分の1です。
10月1日には緊急事態宣言が解除され、各種の規制が無くなりました。
これが完全な終息なのか、次の波の前の一時的な収束なのかはわかりません。(収束と終息)
この急速な感染者の減少が何によるものか、専門家も不思議がっています。
ワクチンの接種が進んだこと、緊急事態宣言で人の移動が抑えられたこと、マスク着用など対策が定着したこと…。どれも感染者数減少の理由の一つではあっても、これだけ急速に感染者が減ることの理由としては弱い。
もう一つの仮説は、感染者はもっとずっと多いのだが、数字には表れていないこと。
感染者の多くは無症状で、それゆえ医療機関に行くことも、検査を受けることもなく、感染者数にカウントされることはない。そして、そのような人が増えたために、抗体を持つ人が増え、「集団免疫」を持つことになった……。
かつてのペストやスペイン風邪が、ワクチンがないなか、理由もわからずに「終息」したのと同様に、新型コロナも、「なんかよくわからないけど、収まっちゃった」ということになるのでしょうか。
韓国の中央日報が、10月8日付のコラムで、日本の感染者数急減について書いています(リンク、日本語)。
その中で、読者のメールの紹介という形で、「『ウィズコロナ』のために検査数を減らしたのではないか」、「日本ではPCR検査に1万8000円もかかるからだ」という意見を紹介しています。
しかし、東京特派員は、
「日本のPCR検査はたしかに1万8000円かかる(唾液PCRは3000円弱)が、それは無症状のときに検査を受ける場合であって、症状がある場合は無料である。無症状でも無料で検査が受けられる韓国より、無症状感染者が多い可能性はある。検査数は、8月中旬のピーク時に一日17万件まで増えたが、最近3~6万件程度で、検査数が減っている。だが陽性判定率は8月中旬に24%あったものが10月5日には1.8%である。陽性者の減少は、「検査をしないから」という理由では説明がつかない」
と、冷静に分析していますが、記事の最後で、
「ちょうどウイルスが消滅した時期と日本の政権交代期が怖いほど重なった」
と付け加えています。
一方、産経新聞が10月7日に伝えるところによれば、韓国では、「日本政府が数字を改竄しているのではないか」という疑いの声が上がっているとのことです(リンク)。
韓国で人気のある時事ラジオ番組で、金於俊(キム・オジュン)という時事評論家が、「自民党政権が10月31日の衆院選で勝利するため、PCR検査数を減らし感染者数を抑制している」と主張したそうです。
「1カ月で感染者が10分の1になるなんてことはない。そんなやり方があれば世界はとっくにコロナを撃退している」
「政府が詐欺行為を働いてはいけない」
「日本メディアも(日本政府の不正を)指摘できずにいる」
産経の記者は、
「日本に対する根拠のない「不正集計」などの主張が登場する背景には、事態が好転しない国内状況へのいらだちもあるとみられる」
と書いています。
日本で、「選挙対策のために数字を改竄」するなんて、それがバレたときのリスクを考えれば、絶対にないでしょう。
一方、韓国は8月に3271人のピークをつけたあとも、2000人前後に高止まりしています。
10月7日の検査件数は4万8225件。このほか、臨時検査所での検査件数が10万3113件とのことで、人口の違いを考えれば、日本の3~6万件に比べて、確かに多い。
一方、「検査中」に分類されている人が120万人もいるのが「謎」です。
K-防疫とかいって、PCR検査体制が世界最高のはずの国で、こんなに検査中の人が多いのは不思議といえば不思議。文大統領の支持率への悪影響を考えて、実際の陽性者数を隠蔽しているんじゃないかと疑いたくなります。
「日本政府が数字を改竄している」という主張の背景には、「自分たちがやっているから、当然日本もやっているはず」という潜在意識があるのではないでしょうか。