「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

奈良からの土産

2006年11月01日 | 絵とやきもの
  
 毎日通う病院への道の途中、川沿いに続く銀杏並木が日を追って色づいてきます。病人の回復につれて、季節が進んでいるのを感じるゆとりも出てきました。

 先週末には、奈良に住む妹が見舞いに来てくれました。
 私への土産は、欲しがっていた「美し 乾山 四季彩菜」でした。(うまし うるはしとルビがふってあります)

 宇治の伊藤久右衛門の愛らしいお菓子と、式部卿の”源氏歌あわせ”が添えられていました。

 MIHOミュージアムに秋の特別展「青山二郎の眼」を観に出かけた折に、私のために求めてきてくれた心づくしです。
 この本は書店の店頭には出ていなくて、MIHO MUSEUMでしか入手できません。2005年のグルマン・ワールド・クックブック・アワード写真部門で、最優秀賞を獲得しました。世界一の折り紙付きの本です。

 傾倒してやまない尾形乾山のやきものに、料理を盛り付けたものを主体に、写真と文章が絶妙のバランスで配置されています。MIHOのコレクションの乾山焼きは、どれも見事なのですが、ひとつだけと言われれば、魯山人の木の葉皿の原点、乃至は本歌と思われる皿に、おにぎりが盛られているのに強く惹かれました。日本料理は目で食べる要素を持ち、よく言われる「うつわ半分」という文化を維持してきました。
 改めて料理を盛る器としてみると、乾山のものは、現代の感覚では、やや、描きすぎで、絵が邪魔になっているとも見えるものもありますが、料理を食べ終わった後まで、存在感を示して、その器は余韻を味わうに役割を果たしたことでしょう。

 当分は、この本で、贅沢を目で食し、文字通りの眼福至福の垂涎で眺めることにします。

  

表紙は、色絵竜田川図向付に盛られた真鯛

よみがえる乾山 雪月花さんのブログに詳細な考察があります。ご一読をお勧めします。