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「壬生義士伝 下」感想

2016年12月10日 16時20分41秒 | 乱読本感想
「壬生義士伝 下」
浅田 次郎
文芸春秋2002 

2014年01月06日 15:46
★5
下巻まるごと泣いたような気がする。
泣けるからいい作品とは言えないかもしれないが、これはもう作品をどうこう言うより吉村寛一郎とその子供たち、その周りの人たちの生き方をどう感じたかだけの話だと思う。
それぞれに自分の最善を生きた彼らの生き方を否定できるものは何もない。
どんなに切ない結末でも彼らの思いを昇華させてあげるには肯定しかない気がするし、そうしなければ前に進めない気がする。
最後の吉村の娘や息子たちの生き方はそうしたことの体現だったのだろうなと思う。

新選組関係の本を読み漁っていた頃、吉村貫一郎の名前を見た記憶はある。
いままでそれは私にとっては人格を持たないただの名前だった。
今回、この作品を読んで、本書の吉村寛一郎はかなりの部分でフィクションの「人」であるだろうけれど、幕末の時代にそういう名前(本名はわからないが)の何らかの「思い」を持った「人」が確かに生きていたんだと実感した。
歴史の中に埋もれてしまった名もなき人たちの思いを浅田さんは吉村寛一郎という義士に託して伝えたかったんだなと思う。


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