孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・CIA  テロ容疑者をリビア等に移送して“尋問”を依頼

2011-09-04 21:33:09 | アメリカ

(人間に“火”を与えたプロメテウスに怒った主神ゼウスは、カウカソス山の頂にプロメテウスを縛りつけ、エトンという2羽の巨大な鷲に、プロメテウスの肝臓をついばませる、という刑を与えます。プロメテウスは不死の神ですから、腹を割かれ、肝臓をついばまれても、次の日には肝臓は元通りになり、またエトンに腹を割かれるという苦しみが永遠に続きます。(「琴座の青星」http://lyrasbluestar.web.fc2.com/aftertitano.htmより)
拷問の始まりでしょうか。 写真は“flickr”より By quapan http://www.flickr.com/photos/hinkelstone/2213683339/ )

遠のくグアンタナモ基地閉鎖
“チェンジ”を掲げて就任したオバマ大統領は、9.11関連のテロ容疑者などを収容している、キューバにある米軍グアンタナモ基地内の施設を閉鎖することを公約にしていましたが、収容されているテロ容疑者をアメリカ本土へ移送し、国内の通常裁判で裁くことへの批判が強く、行き詰まっています。

****同時テロ犯、グアンタナモで軍事裁判 オバマ大統領の閉鎖公約遠のく****
ホルダー米司法長官は4日、米中枢同時テロの起案者とされる国際テロ組織アルカーイダ幹部、ハリド・シェイク・モハメドら5被告を特別軍事法廷で裁くと発表した。米軍グアンタナモ基地(キューバ)で審理される。オバマ大統領は基地内にあるテロ容疑者収容施設の閉鎖を公約に掲げているが、公約実現はさらに遠のいた形だ。

ホルダー長官は記者会見で、同時テロ発生から9月で10年が経過する中、裁きを待つ遺族らの心情からも「これ以上、審理(開始)を遅らせられない」と決断に至った理由を語った。
グアンタナモはキューバからの租借地のため米国内法の適用外。一方で、米国は172人の収容者をジュネーブ条約に基づく捕虜ではなく犯罪者として扱っており、収容者は法の庇護(ひご)を受けられず、違法な拘束との見方も強い。

オバマ政権は「適正な法執行」を唱え、モハメド被告らの公判をテロ現場に近いニューヨーク連邦裁判所で開廷する方針を提示した。訴訟の透明性を確保でき、被告人の米国内移送でグアンタナモの収容施設を閉鎖する思惑もあった。

だが、ニューヨークでの裁判が新たなテロの呼び水となりかねないと共和党や民主党の一部からも批判が噴出。米上下両院が収容者の国内移送を不可能にする法案を可決させ、国内での裁判が困難になっていた。
ニューヨークのブルームバーグ市長は特別軍事法廷の開催を歓迎した。
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大体、どうしてアメリカの宿敵キューバに米軍基地が存在するのかが不思議でもありますが、“1898年の米西戦争で米軍が占領し、米国の援助でスペインから独立したキューバ新政府は1903年2月23日、グァンタナモ基地の永久租借を認めた。主権はキューバにあり、米国は租借料として毎年金貨2,000枚(今日の価格で約4,000ドル)を支払ってきた。”【ウィキペディア】と、キューバ革命以前の19世紀の米西戦争にさかのぼる経緯があります。

なお、“フィデル・カストロ政権は米国の基地租借を非合法と非難しており、租借料は1度受け取った以外は受け取りを拒否している”【同上】とのことで、基地周辺は地雷原になっているそうです。

【「きわめて攻撃的な」尋問
誰も近づけない“キューバ国内法でも米国内法でもなく軍法のみが適用される治外法権区域”でどういうことが行われてきたかについては、09年1月、グアンタナモ米海軍基地に設置された特別軍事法廷の訴追手続きを審査する立場のスーザン・J・クロフォードが「われわれは(9.11テロ容疑者の)カフタニを拷問した」と公言したことでも注目されました。

****オバマを悩ますグアンタナモの闇****
9.11容疑者に行った「攻撃的尋問」
カフタニが02年から03年にかけて受けた「きわめて攻撃的な」尋問は、米陸軍戦闘教範(フィールドマニュアル)では認められていないが、当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官が個人的に承認したものだった。具体的には、眠らせない、無理やり裸にする、低温下に放置する、番犬をけしかける、長時間隔離して孤立させるといった行為が含まれる。

国防総省が05年に公表した報告書によると、さらにカフタニは縄につながれて犬の「芸」を強制され、女性尋問担当者の前に裸で立たされ、ブラジャーの着用を強制され、女性用の下着を頭からかぶらされた。
この報告書はカフタニが「屈辱的なひどい」扱いを受けたことを認めたが、法律違反はなかったと結論づけた。報告書の作成責任者を務めたバンツ・クラドック将軍は、当時グアンタナモ基地の司令官だったジェフリー・ミラー少将への懲戒請求を却下している。(中略)

さらにクロフォードは、02年にカフタニは拷問を受けて心拍数が極端に下がり、命の危険にさらされた状態で入院治療を受けたとも話している。(中略)こ

最も過酷とされる「水責め」の手法
一方、国防総省のジェフ・モレル報道官は、カフタニの尋問は合法だったという従来の主張を繰り返した。「被拘束者の取り扱いについては、これまでに10数回の調査を実施した。20人目の乗っ取り犯とされるモハメド・アル・カフタニに対する尋問に焦点を絞った調査も行われた。その結果、グアンタナモで用いられた尋問手法は、02年にカフタニが受けた特殊な手法も含め、すべて合法という結論が出ている」

ただし、モレルはこうつけ加えることも忘れなかった。「その後、当省は尋問と拘束の方針や手続きをより自制的なものに変えた。カフタニが受けた攻撃的な尋問手法の一部は、当時は許容範囲内だったが、改訂版のフィールドマニュアルでは禁止されている」

ところでカフタニは、最も過酷とされる「水責め」は一度も受けていない。この尋問手法には、たとえば鼻と口から水を流し込み、呼吸が苦しくなった容疑者があえいだ瞬間、水が肺に入るようにすることなどが含まれる。
水責めの対象となったテロ容疑者は、いずれもCIA(米中央情報局)の拘束下にあったアブ・ズベイダ、ハリド・シェイク・モハメド、アブド・アルラヒム・アル・ナシリの3人だ。(後略)【09年1月28日号 Newsweek】
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「水責め」も合法的な尋問でしょうか。常識で判断すればわかる話です。
個人的な話ですが、昨日ペットボトルの水を飲んでいて、誤って気道に水が入ってしまい、胃液が口から出てくるほどむせかえるという非常にきつい思いをしました。

拷問の海外発注
それはともかく、さすがに“自由と人権の守護者”アメリカとしては、本格的“拷問”を行うには躊躇(明るみになった際のさし障り、あるいは“自分の手は汚したくない思い”)があったようで、そういう“拷問”を得意とする(気にかけない)国々へ外注することにしたようです。

****裁判文書が明るみに出したテロ容疑者秘密移送の闇****
米ニューヨークの連邦控訴裁判所に提訴されている民間企業間の不払いをめぐる訴訟で、2001年9月11日の米同時多発テロ後に米中央情報局(CIA)が行ったテロリスト容疑者の秘密移送の実態が浮かび上がった。

同時多発テロから間もない2002年、ロングアイランドにある個人事業の航空会社スポーツフライトは、米政府向けにフライトの提供を始めた。
スポーツフライトはプライベートジェットのチャーター会社リッチモア・エビエーションから航空機を確保したが、実際には使用しなかった時間の使用料110万ドル(約8400万円)の支払いを拒否したため、契約違反としてリッチモア社から訴えられた。

当初、飛行の目的は秘密にされていたが、裁判文書によると「キューバのグアンタナモ湾にあるグアンタナモ米海軍基地を発着する飛行であり、各種の移送作戦」であることが分かってきたという。911テロ後のCIAの秘密移送は、テロリスト容疑者を尋問のため第3国へ送るものだった。容疑者の多くが後に拷問されたと語っている。

■複雑な支払いで実態を隠蔽
AFPは1日、グアンタナモに拘束された容疑者たちの権利擁護を訴える英ロンドンの人権団体「リプリーブ」から1775ページに上る裁判文書の写しを入手した。CIA宛ての請求書や数多くの飛行記録が含まれており、テロ容疑者の秘密移送の詳細を浮き彫りにしている。

テロ容疑者とされた人たちはブカレスト、バクー、カイロ、ジブチ、イスラマバード、トリポリなど世界各地に移送されていた。
リプリーブによると、米当局が「最終的に面倒なことになるのを避けるため」、飛行目的をあいまいにする複雑な支払いシステムを使っていたことも裁判文書から明らかになったという。

2003年1月31日付の文書の中で、チャーター飛行を手配した米国の民間軍事企業ダインコープ・インターナショナルは、ケータリング、搭乗員の日当、着陸料や手数料などを含む秘密移送の費用は、10か月間で340万ドル(約2億6000万円)に達したと記している。この出費は全体のごく一部であることから、CIAはテロ容疑者の秘密移送のために莫大な金額を民間企業に支払っていたとみられる。

AFPの取材に対し、CIAの報道官は「係争中の訴訟、特にCIAが当事者ではない訴訟については通常通りコメントしない」とだけ述べた。米国務省もコメントを拒んでいる。【9月2日  AFP】
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国家権力の闇
テロ容疑者がCIAによって送られた国のひとつとされているリビア(トリポリ)で、これを裏付けるような文書が見つかっています。
文書は、今年3月末、イギリスに亡命したムーサ・クーサ情報庁長官(後に外相)の執務室から発見されています。

****米CIAがカダフィ政権と協力関係、リビアで文書見つかる****
米中央情報局(CIA)がテロ容疑者を尋問のためにリビアに移送するなど、リビアのムアマル・カダフィ政権の情報機関とCIAとの緊密な協力関係を示す文書が、リビア政府施設から発見された。メディア各紙が報じた。
この文書は国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)の調査員らがリビアの情報機関本部から発見した。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2日、同文書を引用し、ジョージ・W・ブッシュ前政権下でCIAが、リビアにテロ容疑者を移送したうえ、リビアの尋問担当者が行うべき尋問内容についても提案を行っていたと報じた。

また、米紙ニューヨーク・タイムズは、リビアは拷問を行うことで知られているにもかかわらず、米情報当局は、テロ容疑者らを少なくとも8回、尋問のためにリビアに移送していたと報じた。
同紙によると、その見返りとしてリビア側は、反政府勢力幹部の身柄引き渡しを要請し、CIA高官は2004年3月に「双方の機関の利益のため、この関係が発展するようわれわれは尽力する」と述べ、幹部の居場所特定に全力を尽くすことを約束していたという。

また、英紙インディペンデントによれば、同文書には英秘密情報部(MI6)とリビア情報機関との関係を示す内容も書かれていた。【9月4日 AFP】
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“自由と人権の守護者”アメリカと“砂漠の狂犬”カダフィ大佐の間に、“自分の手は汚したくない者”と“手を汚すことを厭わない者”の間に、どれほどの差があるのか?
そこには小さくない差があるとは思います。ただ、国家権力というものの共通性も小さくないようです。

オバマ大統領のオスロ演説(ノーベル平和賞受賞演説 09年12月)より
「武力が必要な場合、私たちは一定の行動規範で自分たちを縛らなくてはなりません。それは道徳的な要請、かつ戦略的な要請です。何のルールにも従わない凶悪な敵と対決する時でさえ、アメリカ合衆国は、戦争遂行のふるまいにおいて世界の手本にならなくてはならないと考えます。それこそが自分たちと敵を分け隔てるものなのだと。それこそが私たちの力の源泉なのだと。だからこそ私は、グアンタナモ収容所の閉鎖を命令しました。だからこそ私は、アメリカはジュネーブ諸条約を遵守すると改めて確認したのです」

「自分たちの理想を守るために戦っているのに、その戦いにおいて自分たちの理想を曲げてしまっては、自分自身を失うことになります。理想を掲げるのが楽な時だけそうするのではなく、そうするのが辛い時に掲げてこそ、自分たちの理想を守ることになります」

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