孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アラブ首長国連邦 ラクダレース騎手の拉致・幼児虐待集団訴訟

2007-08-05 11:26:46 | 世相

(写真は“flickr”より By mlockeridge)

数日前のニュースになりますが、先月31日、「アラブ首長国連邦(UAE)のマクトム副大統領兼首相(ドバイ首長)と弟の財務・工業相及びその他500名が未成年の少年らを拉致しラクダレースの騎手として働かせたとして、少年らの親たちが米フロリダ州マイアミの連邦地方裁判所に提訴していた裁判で、同裁判所は30日、司法管轄権がないとして訴えを退ける判断を下した。」(AFP)という記事がありました。
原告側については、騎手として使われた子供の6人の親と数千人の不特定の子供たちを代理して弁護士団が告訴したとのことです。

ペルシャ湾岸諸国では、日本の競馬のようにラクダによるレースが盛んで、伝統文化のひとつになっています。
その騎手は体重が軽いほうがいいということで、従来からパキスタン、バングラデシュ、スーダン、モーリタニアなど近隣の貧しい国から誘拐・人身売買など非合法な手段で騎手に使う幼児が集められ、中には成長を遅らせるため食事も満足に与えられずに騎手として育てられる子供もいたそうです。

UAEでは法律上は93年から子供を騎手に使うことは違法とされていましたが、事実上黙認される状態が続いていました。
さすがに、人身売買・幼児虐待の国際的な批判があって、05年に新たに厳しく法規制がなされて16歳未満の騎手が禁止されました。
また、既に16歳未満の子供を騎手として雇っているラクダのブリーダーには、該当者を帰国させるよう要請がなされたそうです。

子供の騎手が禁じられたことによって代わりに登場したのがムチをふるうロボットで、ラクダ主らがコースに沿ってラクダを自動車で追いかけながらロボットを操縦するそうです。

この裁判について被告側は、国連児童基金(ユニセフ)策定プログラムに従い、少年騎手らを母国に帰還させ補償も行っていると反論していました。
「裁判が何故アメリカで?」という点については、原告側はマクトム首相らが所有する複数の企業がフロリダ州で事業を行っていることを根拠にフロリダ州の裁判所に提訴することができるとの立場を取っていましたが、判事は“一般に認められた企業法の原則に反する”として訴えを退けました。

ラクダレースとは無関係ですが、翌日1日UAEに関するもので、「イランの国営カーペット企業が、UAEのアブダビのモスクで使われる世界最大の手織りカーッペト(サッカー場より広く、約7億円)を公開した」とのニュースがありました。

確かに、裁判自体は訴訟社会アメリカで行われたお金の匂いのするものではあり、また、すでに状況は改善しているとは言いますが、なんだかザラついた感じがあとに残ります。
“ラクダ主”がどのような階層の人達かよくわかりませんが、王族を含みやはりそれなりに資力がある人達でしょう。

一方で、パレスチナでは相変わらず混迷が続き、イラクでは自爆テロで多くの市民の血が流れ、百万単位の国民が難民としてさまよっている世界があります。レバノンのパレスチナ難民キャンプを舞台にした紛争も続いているようです。
他方で、石油から得た膨大な利益で、周辺イスラム諸国の子供を買ってきて(あるいは誘拐してきて)騎手に育てラクダレースを楽しむ世界があります。

“アラブの大義”とか“同じイスラム国家として”といいつつ、現実には絶望的な格差があります。
自爆テロは向けられる相手が違うのではないか・・・と不謹慎にも思ってしまいます。

ドバイの新しい象徴である世界一の高層ホテル(高さ321m)「ブルジュ・アル・アラブ」は、全室スイートで1人最低でも15万円とか・・・。
また、UAEの石油の最大の輸出国が日本です。


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