孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州人権裁判所  フランスの「ブルカ禁止法」を支持

2014-07-10 23:17:35 | 女性問題

(2011年4月11日 ロンドンのフランス大使館前でフランスの「ブルカ禁止法」に抗議するイスラム女性 “flickr”より By sinister dexter https://www.flickr.com/photos/sinister-pictures/5617379810/in/photolist-9yoxj3-2Yr7pc-8MmVvH-aGjnLF-a23VZN-5hPwm5-byzp8e-f1t7Jv-nhFr6t-axYJRS-5dekCb-9VCNcm-dw4AR3-fhoDMS-ew19CV-7XsoLe-dZFB1k-dUqHQY-kUTNcM-bq7L3Y-diGfy4-5Sa4wu-cEBhsq-ek9E8b-anU5aZ-dpeMkP-e27fZb-e21D6F-3n9zJd-arNM1J-fhMB6G-bH4HjH-e1Yyfc-bBsGZD-S4oxd-73YWdH-m5ksfX-eYp6UF-8bqHNi-6YkXFM-dsh1Tp-6dccm6-nHQszc-dshbvm-dk3S45-fxjSiq-9hC3ND-bzGYqB-j6uFp7-a23Vfs)

【「まるでタリバンの女性のようにさせたがっている」】
イスラム女性の髪の毛を覆うスカーフ、目だけを出したニカブ、顔の部分のみを網状にして全身を覆うブルカといった衣装は、このブログでも再三取り上げるように、イスラムを象徴するものとしてしばしば問題になります。

イスラム国家にあっては、スカーフを着けないことが反イスラム的行為として罰せられます。

***スーダン当局、ヒジャブ着用拒否の女性を訴追 有罪ならむち打ち刑****
イスラム教徒が多数を占めるスーダンで、髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」の着用を拒否した女性が、「わいせつ」な格好をしたとして訴追された。女性は4日に出廷したが、同事案は今のところ「宙に浮いた」状態となっている。

被告のアミラ・オスマン・ハメドさんは、オマル・ハッサン・アハメド・バシル現大統領が1989年に無血クーデターで実権を掌握した後に施行された、道徳に関する法律に違反したとして訴追され、有罪が確定すれば、むち打ちの刑に処せられる可能性がある。

首都ハルツーム近郊ジュベルアウリヤの裁判所に4日出廷したハメドさんとその弁護人はAFPの取材に、被告側は9月に訴追の取り下げを求めたが、検察側はいまだ検討中だと明かした。

ハメドさんによると、裁判所は、検察側がさらなる審問のための書類を送付するか、起訴見送りとするか決定するのを待っている状況だという。次の出廷日も決められていない。ハメドさんは「(検察は)この件をしばらく終わらせず、都合の良い時に利用するつもりなんでしょう」と話している。

スーダンの法律は、全ての女性にヒジャブで髪を覆うことを義務付けている。だがハメドさんは、スーダン政府が女性たちを「まるでタリバン(Taliban)の女性のようにさせたがっている」として、これを拒否している。
ハメドさんの一件は海外メディアの注目を集め、人権団体や活動家らからは支援の申し出が寄せられている。

ハメドさんは8月、ジュベルアウリヤの政府庁舎を訪れた際、髪を覆うようにとの警察の命令を拒否して訴追されたという。

スーダンでは2009年、女性記者のルブナ・フセインさんがズボンをはいたために罰金を受け、その支払いを拒否した事件が、国際社会の批判を浴びた。

フセインさんは1日収監された後で釈放されたが、フセインさんと共にズボンをはいて飲食店を訪れ逮捕された女性たちは、むち打ち刑を受けている。【2013年11月5日 AFP】
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イランでも、スカーフを着用していない女性の取締りが、そのときどきの社会・政治情勢を反映して強まったり、緩んだりしているようです。

一方、同じイスラム国家でもトルコのように政治世界における世俗主義を掲げてきたような国では、公的な場でのスカーフ着用は以前は認められていませんでした。しかし、最近になってこれが認められるようになったことが、イスラム主義の台頭を象徴するものとして注目されています。

【「この法律は、共生を推進するために作られたのであって、反宗教的な法律ではない」】
一方、イスラム移民が増加している欧州にあっては、イスラム住民との経済的・社会的摩擦を背景として、イスラム的な衣装を着用することを禁じる動きがあります。

「ブルカ」や「ニカブ」といった顔や全身を覆う衣装の公共の場での着用を禁じる法律がフランス、ベルギ、スイス、オランダ、イタリアなどで成立しています。

禁じる立場からは、公的な場に宗教を象徴するものを持ち込む宗教的中立性の問題、顔がわからないことに伴う治安上の問題なども指摘されます。

また、こうした衣装がイスラム世界における女性蔑視を表しているとみなされ、西欧的男女平等の価値観にそぐわないと思われることあります。

もっと素朴なところでは、排外的な風潮が強まるなかで、イスラムに対する嫌悪感の標的となっていることなどもあるようです。

イスラム女性からは、こうした禁止措置は宗教の自由を侵害するものだとの反発もあります。

****仏「ブルカ禁止法」は差別か、欧州人権裁判所で審理始まる****
顔全体を覆うベールの着用を禁じたフランスのいわゆる「ブルカ禁止法」について、信教の自由を侵害する差別的な法律かどうかを問う裁判が(2013年11月)27日、欧州人権裁判所で始まった。

一方この日、フランス首都パリでも偶然、頭を覆うスカーフの勤務中の着用をめぐって解雇されたイスラム教徒の女性に関する控訴審が開かれた。

いずれも、フランスが長年貫いてきた世俗主義の伝統と国内最大の少数派であるイスラム教徒の一部とが対立する、長引く法廷闘争の例だ。

■「共生推進が目的」とフランス政府
欧州人権裁判所での裁判は、英バーミンガムに家族がいるフランス人の大学院生の女性(23)が原告。

英国の弁護団とともに、フランス政府を相手取り、「ブルカ禁止法」は本質的に差別的な法律だとの判断を下すよう欧州人権裁判所に求めている。

女性は「ブルカ禁止法」によって信教の自由、表現の自由、集会の自由を侵害されたと訴え、同法は差別の禁止を定めた法律に反していると主張。

男性に強制されてブルカを着用しているわけではなく、治安上の理由で必要なときは脱いでも構わないと書面で証言し、仏当局がブルカ禁止の最大の理由としている2点に反論した。
告側弁護士の1人は、法廷で「ブルカ着用は過激派のしるしではない」と述べた。

一方、フランス政府側の主任弁護士は、禁止の対象はイスラム教のベールやブルカだけでなく、オートバイのヘルメットや目出し帽など顔面を覆う全ての手段にわたると指摘。「この法律は、共生を推進するために作られたのであって、反宗教的な法律ではない」と主張した。

欧州人権裁判所の判断は来年下される予定だ。

■ベール理由に解雇は不当?
パリでの裁判は、職場でスカーフを着用して働きたいと主張して解雇されたイスラム教徒の女性保育員をめぐる控訴審(第2審)。

この女性保育員は2008年、5年間の出産・育児休暇から職場復帰した際に、スカーフで頭を覆ったまま働きたいと保育所に申し出たが、「職員は価値観や政治的主張、宗教観において中立でなければならない」との規則があることを理由に拒否され、解雇につながった。

第1審では今年3月、女性の解雇は宗教的差別に当たるとの判決が下されたが、パリの控訴裁判所は27日、この判決を覆し、保育所には女性を解雇する権利があるとの判断を示した。

この判決に、世俗教育支持派からは画期的な判断だと歓迎する声が上がった。

しかし、フランスの世俗主義の原則を強調する傾向はイスラム教徒のコミュニティーをやり玉に挙げる手段だとみるイスラム教団体は判決を非難。原告側弁護団も控訴の意思を表明しており、裁判がこのまま決着する可能性は低い。

■違反者には罰金2万円
「ブルカ禁止法」は、2010年にニコラ・サルコジ前大統領の中道右派政権が成立させ、翌11年に施行された法律。社会党の現フランソワ・オランド政権も同法を全面的に支持している。

同法では公共の場で顔を全て隠すベールを着用することを禁じており、違反者には最大150ユーロ(約2万円)の罰金が科される。

だが違反者の取り締まりや逮捕をめぐってもめる事例が相次いでおり、パリ郊外でも今年、取り締まりがきっかけで暴動が起きている。【2013年11月28日 AFP】
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先日、フランス政府の主張を認め、着用禁止は思想・良心・信教の自由を侵害していないとの欧州人権裁判所の判断が示されました。

****ブルカ禁止を支持する意外な判決****
ムスリム女性の顔や全身を覆うブルカを公共の場で着用することを、フランスが全面的に禁じたのは11年。

「女性隷属の象徴」であるブルカを禁じるのは当然で、フランスの政教分離の伝統にのっとった判断だとする賛成派と、ブルカ着用は女性の自発的な選択であり、着用禁止は信教の自由の侵害だと訴える反対派の論争は今も続いている。

そんななか、パキスタン系のフランス人女性が欧州人権裁判所に起こしていた注目の裁判に判決が下された。女性はブルカ禁止法は差別的な法律だと訴え、治安上の理由で必要な場合にのみブルカを脱ぐ用意があるとしていた。

だが同裁判所は先週、ブルカで顔を覆い隠す行為は治安維持や人々の共生を難しくする恐れがあるというフランス政府の主張を認め、着用禁止は思想・良心・信教の自由を侵害していないとの判断を示した。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「国家は人々に何を着るべきか指示すべきでなく、個人の選択の自由を認めるべきだ」と反発している。

欧州各国を悩ませる人権と治安維持をめぐるジレンマは、今後も続きそうだ。【7月10日 Newsweek】
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市民社会の理念にそぐわない「ブルカ」「ニカブ」】
髪を覆うスカーフと、顔が見えないニカブやブルカでは、個人的な印象は全く異なります。

イスラム住民が多い国を観光していて、スカーフ姿の女性には殆ど違和感は感じません。
暑いだろうに・・・と思うことはありますが、女性もファッションアイテムの一つとして着用を楽しんでいるようにも見えます。(着用を強制ということになれば、話はまた違ってきますが)

スカートが女性らしさ示す衣装であるのと同じような感じで、スカーフも女性をアピールする衣装となっているのでは・・・とも感じます。

ですから、中国がウイグル族対策で、女性のスカーフ着用を禁じるというのは、正当性を欠いた政治的・文化的横暴にも感じます。

しかし、全身を覆うニカブやブルカ(地域にもよるでしょうが、アジアのイスラム国では見かけることは空港以外では殆どありませんし、エジプトやドバイなどでもあまり見かける機会は多くはありませんでした。女性が表に出てこないせいでしょうか)となると、話は違います。

そもそも市民社会は、自分が何者であるかを明示したうえで発言・行動して互いのコミュニケーションをとることで成立するもので、自分を明示して社会との緊張感を持つなかで、その発言・行動の自由が権利として保障されるもののように思えます。

最近の日本でもマスクを常用する女性が多いように、顔を隠すということは、特に容姿が注目されやすい女性にとっては、気分的に楽にさせる効果があるのでは・・・と思います。

しかし、顔を隠して匿名性の後ろに隠れてしまっては、コミュニケーションをとって市民的つながりを形成することが非常に困難にもなります。(少なくとも、相手にとっては。誰だかわからない人間とは話もできません)

また、匿名性に隠れてしまうことは、社会との緊張関係のなかで保障されてきた発言・行動の自由が形骸化していくようにも思えます。(ネット上の匿名発言が、往々にして無責任で、こんなものは制限したほうがいいのでは・・・とも思わせるように)

女性蔑視云々、治安上の問題云々を別にしても、顔を隠す衣装というのは市民社会の基本的な理念と相いれないように思えます。

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