孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  財政赤字削減協議が決裂 迫るデフォルトのタイムリミット

2011-07-23 21:00:07 | アメリカ

(国全体と1世帯当たりの債務負担を表す“national debt clock”  残高は今年5月に上限の14.3兆ドルに達しています。 “flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/5950103329/

【「我々が切羽詰まっていることは明らかだ」】
欧州でもギリシャ救済をめぐり、その対策に民間金融機関への負担を課す内容が含まれており、実質的な債務不履行(デフォルト)にあたると判断される可能性があることが話題になっていますが、アメリカも目下、デフォルト“騒動”のさなかにあります。

アメリカでは政府の借り入れ上限は議会が定めていますが、すでにこの限度額まで借り入れが膨らみ、限度額を引き上げないとアメリカ政府は新たな借り入れができなくなる恐れがあるというものです。
万一、そんな事態になれば米国債の利払いなどができず、アメリカは債務不履行(デフォルト)に陥ることになり、世界経済全体も大混乱に陥ることにもなります。

*****米債務上限問題、交渉大詰め 大統領権限で緊急策も****
「ボールは大統領側のコートにある。米国の債務不履行(デフォルト)を回避するには、歳出削減で我々と協力する必要がある」
米共和党のベイナー下院議長は21日の記者会見でオバマ大統領側の譲歩を求めた。一方で政権側は共和党に、富裕層の優遇税制の廃止などを通じた増収策に応じるよう呼びかける。政権と与野党が取り組む債務上限引き上げ問題は、出口の模索が続く。

米国では政府の借り入れ上限は議会が定めている。2001年以降でみても議会は10度の引き上げに応じたが、昨秋に状況が一変。野党・共和党が下院で多数を握ったからだ。残高は今年5月に上限の14.3兆ドルに達し、引き上げの前提となる財政赤字の削減を巡り、折り合えないままだ。

期限は8月2日。それまでに上限を引き上げないと米政府は新たな借り入れができなくなる。世界の金融市場で安全資産の代表格、米国債の利払いなどができず、デフォルトに陥る。
市場の混乱は必至だ。国債が売られて値段が下がり、金利は上昇。減速する米景気に冷や水となる。株は売られ、為替も乱高下しかねない。連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は「金融災難が起こる可能性がある」とし、リーマン・ショックのような事態になると警告する。

米株式市場は、この問題での対立が深まれば相場が下がり、解決に向かう観測が出れば値を上げる神経質な展開が続く。オバマ大統領は「政治的駆け引きばかり続ければ、市場はすぐに反対方向に動き始める」と警戒を強める。

米政府高官は21日夜、朝日新聞の取材に「(今後10年で)最大3兆ドルの(財政赤字を削減する)案を協議している」と、政権と議会側が最終調整に入っていることを明かした。だが、共和党の一部にはなお異論もあり、合意できない場合に備え、大統領の権限で債務上限を引き上げる緊急策の準備も続けているという。

時計の針は刻々と進む。
政権側は、8月2日までに上限を引き上げるには、法案作成と議会の通過手続きに1週間程度はかかると計算。7月22日が合意の「実質的な期限」との立場をとってきた。
21日のホワイトハウスでの会見では「すでにその期限は明日ではないか」との質問が記者から飛ぶと、カーニー大統領報道官は「(合意してから)対策をとるのに何日必要かは議会が決めること。22日は何の期限でもない」と打ち消しに躍起だった。
ただ、こう付け加えた。「我々が切羽詰まっていることは明らかだ」【7月23日 朝日】
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債務上限の引き上げに焦点を絞った緊急対策に移行
8月2日までに上限を引き上げるには“7月22日が合意の「実質的な期限」”と言われていましたが、すでにその期限を過ぎました。そして、大統領と共和党の間で行われていた、債務限度額引き上げの前提としての財政赤字を削減する交渉は決裂しました。

****米、3兆ドル規模の赤字削減協議が決裂 大統領が会見*****
米債務上限引き上げ問題を巡り、オバマ米大統領は22日夕、ホワイトハウスで緊急会見し、米財政赤字削減を巡る与野党協議で、10年で3兆ドルの削減を目指していた大規模対策協議が決裂したと発表した。米政権は今後、債務上限の引き上げに焦点を絞った緊急対策に移行することになりそうだ。【7月23日 朝日】
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今後検討されている“債務上限の引き上げに焦点を絞った緊急対策”については、“ロイター通信は20日、包括合意に時間を要する場合、共和党の一部が提案していた債務上限を短期間引き上げる措置を「大統領が受け入れる方針」と報じた。これまで大統領は短期の引き上げには拒否権を行使する考えを示していたが、「時間切れになりつつあることを認め、数日間の引き上げを受け入れる構え」としている。”【7月22日 産経】ということで、時間稼ぎの緊急避難策のようです。

【“ティーパーティー”議員の抵抗
これまでの展開は大統領と共和党の8月2日を睨んだ“チキンレース”の様相ですが、「どうせ、どこかで手を打つのだろう。まさか、このままデフォルトに突入するなんて馬鹿なことはないだろう」「死刑執行は直前で回避されるだろう」・・・というのが大方の見方でした。実際、どこかで折り合うのでしょうが、予想以上にもつれています。

交渉がここまでもつれているのは、財政赤字削減策について、大統領が求める高額所得者と企業への増税を共和党側が認めないことにあり、その背景には、共和党内に“小さな政府”原理主義者とも言える“ティーパーティー”議員が多く存在し、共和党側が身動きができない状況があります。

更に言えば、世論の“受け”を狙ったパフォーマンスと政治的駆け引きが良識に先行する、政治の機能低下現象とも。日本だけではないようだ・・・と、変に安心する面もありますが。
次期大統領選挙に向けて、共和党の統治能力には疑問の声も強くなっています。
混乱が拡大すれば、大統領の責任も問われます。

米国債、格下げの動きも
****米連邦債務上限引き上げ、期限迫る 大統領は緊急交渉求める****
米下院共和党が、14兆3000億ドル(約1120兆円)の米連邦債務の上限引き上げをめぐるバラク・オバマ大統領との交渉のドアを閉じたことを受け、ある米政府高官は、米国が債務削減に本気に取り組まなければ、米国債の格下げも現実味を帯びると語った。

米連邦債務を3兆~3兆5000億ドル(約236兆~275兆円)削減する10年計画が交渉の焦点になっていたが、共和党のジョン・ベイナー下院議長は下院議員に宛てた書簡の中で、オバマ大統領が高額所得者と企業への増税を主張を変えなかったため、交渉から離脱すると述べた。

ある米政府高官は匿名を条件に、巨額の米連邦債務は大きな問題だと指摘し、債務上限の引き上げの失敗ではなく、米国が債務削減に向けた本格的な行動をとらないことを理由として、米国債が格下げされるという現実的な見通しがある、と語った。
格付け会社のスタンダード&プアーズとムーディーズ・インベスターズ・サービスは、8月2日までに連邦債務の上限を引き上げることで与野党が合意に達しなければ、米国債を格下げする可能性があると発表している。

オバマ大統領はベイナー氏の交渉離脱の決断を批判し、8月2日の期限までに残された時間は少ないとして、23日午前11時(日本時間24日午前零時)にホワイトハウスで緊急交渉を行うよう有力議員らに求めた。【7月23日 AFP】
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「ぎりぎりのタイミングで『死刑執行』を免れると高をくくるのは危険だ」「合意が実現しても、アメリカの評判に付いた傷は取り返しがつかないかもしれない。誰もが現状を注視しており、信用がすべての今の時代に(米国債を大量保有する)中国の信用を失いかねない」(大ワシントン圏商工会議所のジェームズ・ディネガー所長兼CEO)との発言もあります。

最大の債権者中国も、アメリカのデフォルト“騒動”を苦々しく注視しているところですが、米国債を大量に抱えている点では日本も同様です。
馬鹿げた“チキンレース”は早く止めて、良識を示してもらいたいものです。

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