孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス つい最近までタブーだった「EU残留」が公然と語られ始めた

2017-07-22 21:40:52 | 人権 児童

(ロンドンの国会議事堂前で行われた抗議活動に参加した配達員ら(2017年7月18日撮影)【7月19日 AFP】)

難航必至のブレグジット 政権内部に不協和音も
イギリスのEU離脱(ブレグジット)の交渉は行われてはいますが、難航は必至の情勢です。

****英は「明確な説明を」=離脱交渉でEU責任者****
ブリュッセルで開かれていた英国の欧州連合(EU)離脱に向けた第2回交渉の会合は20日、4日間の日程を終えた。

会合は互いの主張内容の確認にとどまり、EUのバルニエ首席交渉官は記者会見で、英国に対し次回8月の会合での「明確な説明」を要求した。
 
バルニエ氏は「今週の会合は(互いの主張を)提示しただけだ」と指摘。離脱交渉の優先分野の一つであるEU市民の権利保障の問題は、EU司法裁判所が管轄すべきだとの考えを改めて強調し、これを否定する英国との溝の深さをうかがわせた。
 
会見に同席した英国のデービスEU離脱担当相は「建設的な交渉だった」と評価する一方、「協議すべきことが多く残されている」と認めた。【7月20日 時事】 
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イギリスとしては離脱後の通商協定の交渉に早く入りたいところですが、それ以前に上記のEU市民の権利保障の問題とか、「手切れ金」問題など厄介な問題が山積しており、それらをクリアしないと通商協定の交渉も始まらない状況です。

先の総選挙で“大失敗”したメイ首相の求心力は弱まり、ブレグジットの方向をめぐるイギリス側内部の対立もあらわになっています。

****<EU離脱交渉>英、閣内に温度差「手切れ金」などでズレ****
英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、実質交渉が始まっているにもかかわらず、英国側の閣内で交渉方針を巡って意見の相違が解消されていない。EU側との溝も埋まっておらず、離脱交渉の長期化を懸念する声も上がっている。
 
「根本的な隔たりがある」。EU側のバルニエ首席交渉官は20日、第2回離脱交渉終了後の記者会見で、交渉の状況についてこう説明した。「手切れ金」と言われる離脱で生じる費用を英国がどこまで負担するかや、英国に住むEU出身者の権利などについて、議論が平行線をたどっているとみられる。
 
一方、英国の閣内でも、交渉方針などを巡り足並みが乱れている。1000億ユーロ(約13兆円)とも報じられている「手切れ金」について、バルニエ氏と一緒に会見を行ったデービス離脱担当相は「国際的な責任を認識している」と話し、妥協点を探る姿勢を示した。

だが、ジョンソン外相は今月11日の下院で「法外だ」と巨額の支払いを拒絶する姿勢を示していた。
 
交渉に臨む姿勢についても、温度差がある。EU以外の国との貿易・通商協定を管轄するフォックス国際貿易相は20日、「EUと離脱交渉が合意に達しなくとも英国は生き残れる」と妥協を望まない意向を示した。

一方、ハモンド財務相は先月18日、英BBCのインタビュー番組で「合意に達しなければ(英国にとって)非常に悪い結果をもたらす」と話し、一定程度、妥協してでも合意する必要性を示していた。
 
また、離脱交渉とは別の英国とEUとの通商協定に関する交渉期間について、フォックス氏は「2年間」との見方を示したのに対し、ハモンド氏は「3、4年」としており、意見の違いが表面化している。
 
地元メディアの記者によると、昨年7月に首相に就任したメイ氏は、6月の総選挙で少数与党になるまでは、閣僚らに対して、離脱交渉に関して勝手な発言をしないようにクギを刺していたという。

しかし、総選挙で大きく議席を減らしてメイ氏の求心力が弱まった結果、次期首相の座を巡る思惑も交錯して、政権内での不協和音が表面化しているという。【7月21日 毎日】
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EUとの交渉以外に、イギリス内部の法整備が必要になります。
1972年にEUの前身である欧州共同体(EC)に加盟するため設けたEC法を廃止するとともに、加盟後40年以上の間に導入されたEU関連法を自国法に置き換える措置で、関連法律は膨大な数になるようです。

****英議会、EU法「廃止法案」を9月7日に審議へ=下院議長****
英下院のアンドレア・レッドサム議長は20日、欧州連合(EU)離脱に絡むEU関連法「廃止法案」の初の議会審議が9月7日に実施されると明らかにした。

英政府は今月、同法案を公表。レッドサム氏によると、議会は9月7、11の両日に審議を行ったうえで次の段階に進むことを認めるかどうかについて採決する。【7月21日 ロイター】
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先は長く、残された時間はあまりにも少ない・・・状況ですが、合意ができないまま離脱した場合、その後のイギリスはどうなるのか?という根本的疑問も。

もちろん、EUとの関係がどうなろうが“世界の終わりではない”という強気の見方もあります。

****英EU離脱、貿易協定なしでも世界の終わりではない=英貿易相****
7月英国のフォックス国際貿易相は20日、インタビューに応じ、新たな貿易協定を結ばないまま英国が欧州連合(EU)を離脱したとしても世界の終わりではないとしつつ、現在の開かれた関係を維持できなければ世界的に大きな影響を及ぼすだろうと述べた。

20日の外国為替市場でポンドが下落。英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る交渉が協定なしに終了すれば、世界貿易機関(WTO)ルールに基づいて貿易を行うことになるとの懸念が広がった。優遇アクセスがなくなることになり、多くのエコノミストは企業活動が損なわれると警告している。

フォックス氏は「人々はWTOシナリオを世界の終わりのように話しているが、WTOルールに基づいて米国や中国、日本、インド、湾岸諸国と現在貿易を行っていることを忘れており、われわれの通商関係は強固で健全だ」と指摘。「どんな後ろ向きのシナリオ、最悪のシナリオでも描くことは可能だ。われわれはそれよりもはるかに良い結末を目指している」と述べた。

その上で「欧州での貿易や投資に現在はない障壁を設ければ、欧州が開放的な貿易の案内役になることはなく、欧州大陸を越えて世界経済に影響を及ぼすだろう」と述べた。【7月21日 ロイター】
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まあ、それはそうかもしれませんが、何を好き好んで多くの難題に立ち向かい、不透明な未来に突き進む必要があるのか?・・・という素朴な疑問を改めて感じます。

国民の間にはブレグジットに対する疑いも
そうした“疑問”はイギリス内部でも改めて表面化しつつあるようです。

****ブレグジットを撤回したくなってきたイギリス人。果たして可能****
<つい最近までタブーだった「EU残留」が、イギリスで公然と語られ始めた。EU離脱に伴う痛みが明らかになるにつれて国民の間にはブレグジットに対する疑いが広がっている>

イギリスのテリーザ・メイ政権は今週、ブレグジット(イギリスのEU離脱)に向けた本格交渉を開始した。もっとも、交渉によってどんな結果を求めているのか、イギリスで知る者は誰一人としていない。

ブレグジットをめぐってメイ政権が混乱に陥り、閣僚たちの内紛が勃発する中、結局イギリスはEUに残留すべきだし、きっと可能だ、と信じる声が一部で高まっている。

残留に言及することは、つい最近まで政治的社会的タブーだったのが嘘のようだ。昨年6月の国民投票で52%対48%の僅差でEU離脱派が勝利した後、離脱はイギリス全体が従うべき「国民の意思」で、反対や逸脱は一切許されないと国全体が信じ込まされた。

それが今では、一部の政治家たちがブレグジットをやめる、つまりEUに残留する可能性を公然と語り始めている。親EUの少数野党、自由民主党の新党首で人気の高いビンス・ケーブル下院議員や、非常に人気のないトニー・ブレア元首相などがその例だ。

EU離脱「間違い」が初めて上回る
そもそも今更イギリスがEUに残留することは可能なのかを問いかける記事も出始めた。「ブレグジットを阻止する運動が加速している」と、英紙フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、ゴードン・ラックマンはと書く。

イギリス世論が残留に傾いたとする決定的な世論調査はまだないが、世論の風向きが変化してきたのは確かだ。英世論調査会社YouGovが6月に実施した世論調査では、イギリスのEU離脱が間違いだと回答した割合が、45%対44%という僅差とはいえ、初めて正しいという回答を上回った。

ほんの1年前、メイは「ブレグジットはブレグジットだ」と宣言し、英首相に就任した。そのスローガンは、何があっても国民投票の結果を実行するという確固たる決意を表していた。

今年1月には「悪いディールを結ぶくらいならノーディール(合意なし)の方がいい」と言ってEU単一市場へのアクセスも断念する「ハードブレグジット」路線を打ち出し、3月にはEUに対し2年後の離脱を正式に通告した。

その後、すべてがくるい出した。メイはやらなくてもよかった解散・総選挙を6月9日に前倒しして実施すると発表。ブレグジット交渉を始めるにあたり政権基盤を盤石にしようと狙ったからだが、賭けは裏目に出た。与党・保守党は過半数割れの惨敗となり、メイはたった10議席のために北アイルランドの保守政党「民主統一党(DUP)」と連立を組まざるを得なくなった。

メイは求心力を強めるどころか、ほぼすべての権威を失った。それでも首相の座に留まるのは、与党・保守党が後任争いで分裂しかねないのと、さらなる総選挙を何としても避けたいからだ。

政権内の対立は激しさを増すばかりだ。フィリップ・ハモンド財務相は、EUの27カ国と親密な関係を維持しようと企て、「ブレグジットを妨害」しようとしていると非難されている。

こうした衝突や混乱には3つの理由がある。

第1に、昨年の国民投票は、EU離脱という選択で将来のイギリスとEUの関係がどう変わるのかを一切示さなかった。

国民投票で残留か離脱かの議論は一旦収まったが、ハードブレグジットかソフトブレグジットか、ノルウェー型かスイス型か、という議論はそこから始まった。

第2に、残留派の一部が離脱派の勝利後すぐにも起きると予測した経済の崩壊は現実にならなかったものの、離脱の影響は少しずつ目に見え始めた。

法律上はおそらく可能
英通貨ポンドは下落し、成長率は鈍り、投資は減速、物価も上昇し始めた。EUからの移民が大挙して本国に戻るにつれ、熟練労働者も不足する。

第3に、メイが総選挙で大敗を喫したことで、国民はもはやハードブレグジットを求めていないことがはっきりした。そこに、他の様々な離脱の選択肢が出てくる余地ができた。

しかし、多様な選択肢とそれに伴う困難を知れば知るほど、ブレグジットそのものへの疑問も強まっている。

保守党ほどではないが、最大野党の労働党も党内の意見が分裂している。ブレグジットに必要な膨大な数の法律を通過させるのは、途方もない悪夢になることが明白になってきた。

ブレグジットの撤回は、少なくともイギリスがEUを離脱する期限とされる2019年3月までなら、恐らく手続き上も法律的にも可能と思われる。

だが、現時点では撤回を訴える政治家はわずか数人。問題は、ブレグジットがもたらす試練が、離脱の期限までに世論を残留へと心変わりさせるのに十分な影響力を持つかどうかだ。【7月21日 Newsweek】
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“YouGovが6月に実施した世論調査では、イギリスのEU離脱が間違いだと回答した割合が、45%対44%という僅差とはいえ、初めて正しいという回答を上回った。”とのことですが、4月末〜5月上旬の調査については以下のようにも。

*****深まる分断と格差 「英国病」再燃も 離脱意識に変化****
・・・・世論調査会社ユーガブが4月末〜5月上旬に実施した調査によると、「EU離脱に賛成。政府は離脱実行に力を入れるべき」が45%、「離脱に投票しなかったが、政府は実行すべき」が23%となった。

「離脱に反対。政府は投票結果を無視するか覆すべき」は22%。68%の国民が「離脱を実行してほしい」と望んでいることになる。
 
一方、キングス・カレッジ・ロンドンのアナン・メノン教授の最近の調査では離脱支持が38%、残留希望も35%と拮抗(きっこう)している。

メノン教授は「2大政党という英国の伝統から、離脱と残留という対立軸が政治的アイデンティティーとして生まれている」と分析する。(後略)【6月22日 産経】
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どのように判断すべきかは迷うところですが、賛否が拮抗しているのは間違いないようです。

“国民投票の結果に従って進むべき”というのはわかりますが、“間違ったかも・・・・”という思いがあるようなら、離脱に関する理解が深まったところでもう1回民意を確認することも必要でしょう。

白紙に戻すことはいつでも可能でしょう。ことは自国の将来にとって重大なだけに“引き返す勇気”も状況次第では必要です。

イギリスで“酸攻撃” その背景は?】
ブレグジットの話題を離れて、最近のイギリスの話題で意外な感を持ったのは、下記の“酸攻撃”のニュース。

****デリバリー配達員への酸攻撃相次ぐ、国会前で抗議活動 英ロンドン****
英ロンドンで料理の宅配サービスの配達員らに対する、酸を使った襲撃事件がここ数年相次いでいる。こうした状況を受け、英国の国会議事堂前で18日、配達員200人余りが政府に対策を講じるよう要求する抗議活動を行った。
 
料理の配達サービス「ウーバーイーツ(UberEATS)」の配達員の1人はAFPに対し、「襲撃されたり、バイクを盗まれたりすることが大半だ。働いている時は安全だと感じない。昨日は複数の少年が自分に攻撃を加えようとして危険を感じた」と述べた。
 
13日夜にはわずか90分の間に5人の配達員が酸で攻撃され、その後、15歳と16歳の容疑者2人が逮捕されている。
 
英BBCは3月、警察がまとめたデータとして2010年以降にロンドンで腐食性の液体を使った攻撃が1800件以上報告されていると報じた。腐食性の液体を使った犯罪は2016年に454件に上り、2015年の261件から急増している。
 
一部専門家は、犯罪グループがナイフの代わりに酸を所持するようになったのは、訴追リスクが軽減される可能性があるためだと指摘している。
 
国会では17日、この問題への対応策が議論され、厳罰化と特定の物品を購入できる最低年齢制限の導入について多くの議員が支持を示した。【7月19日 AFP】
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卑劣な酸攻撃は、パキスタンやアフガニスタン、あるいはアフリカなどではよく目にする話題です。
しかし、イギリスのような国でも・・・・ということで驚いた次第です。

更に、政府に抗議する人々の写真を見て、先のロンドン高住宅火災のときと同じような、“イギリスのイメージ”とは異なるものを感じました。

数枚の写真を見ての憶測にすぎませんが、酸攻撃を受けいる宅配サービスの配達員らというのは、いわゆる白人よりは移民が多いのではないでしょうか。

酸攻撃をしかけている側の情報はまったくありませんが、もし、移民に対するいやがらせみたいな側面があるとしたら、イギリス社会の分断も深刻です。

そうした“どす黒いもの”がブレグジットの議論の底流にもあるとしたら・・・慎重に考えるべき問題です。
憶測の上に憶測を重ねた話にすぎませんが。

イランに行ってきます
明日からイラン観光に出発するということで、現在鹿児島から羽田に向かう飛行機の中です。
最近はフライト中でも無料WiFiが使えるということで、便利になりました。

深夜0時過ぎのフライトでバンコク経由でテヘランに向かいますが、バンコクで10時間ほどの乗り継ぎ時間があります。

バンコクも久しぶりなので、市内に出て、水上マーケットとか王宮といったベタな観光でもしてみようか・・・とも考えています。(時間が限られていますので、空港のトランジットツアーサービスが使えれば助かるのですが・・・・)

イランのネット状況は分かりませんが、海外レンタルWiFiもイランは対象外ということなどもあって、厳しい条件が予想されます。旅行中どれだけブログ更新できるかわかりません。
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-08-13 09:37:02
僅かの差で離脱に賛成した方が勝利したのは、記憶に残る。高齢者が多いのは知ってる。イギリス連邦への回帰をしたいのだろうと思う。逆に若者は残留に賛成した。EUのおかげでなんでもできると思うからだろう。2518
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