(昨年行われた霧社事件80周年祭典に出席した国民党・馬英九総統 “flickr”より By presidential office http://www.flickr.com/photos/presidentialoffice/5122327071/ )
【「霧社事件(むしゃじけん)」】
台湾における戦前日本の統治は、朝鮮や中国における統治と比べると、穏やかであったようなイメージがあります。
そのイメージがどれほど正確なものかはともかく、台湾においてもいろいろな事件・出来ごとがあったことも事実で、そのひとつが「霧社事件(むしゃじけん)」と呼ばれた、台湾先住民の蜂起でした。
“1930年10月27日、台湾南投県霧社で、先住民セデック族やタイヤル族の男たち約300人が武装蜂起。集落の頭目・モーナルダオ氏の指揮の下、日本の警察派出所を襲った後、運動会開催中の小学校に乱入し、日本人の子供や母親ら130人余りを殺害した。台湾総督府は砲撃や戦闘機による爆撃で対応し、先住民側の犠牲者は戦死と自殺、行方不明合わせて約800人に上った。”【9月26日 毎日】
事件の発端は、日本人巡査が原住民の若者を殴打したことにあったとのことです。
“巡査は同僚を伴って移動中に、村で行われていた結婚式の酒宴の場を通りかかった。巡査を宴に招き入れようとモーナ・ルダオ(霧社セデック族村落の一つマヘボ社のリーダー)の長男、タダオ・モーナが巡査の手を取ったところ、巡査は宴会の不潔を嫌うあまりステッキでタダオを叩いた。侮辱を受けたと感じたタダオは巡査を殴打した。この殴打事件について警察からの報復をおそれた人々が、特にモーナ・ルダオは警察の処罰によって地位を失うことを恐れ、暴動を画策したと言われている”【ウィキペディア】
なお、日本側は近代兵器での鎮圧と同時に、親日派先住民を動員し、蜂起部族の首級と引き換えに懸賞金を支給しました。この報奨金の対象には女性・子どもも含まれ、それまで禁じていた「首狩り」を許すものでもあり、また、同族間での凄惨な殺し合いを助長したとされます。
蜂起が鎮圧された翌年31年には、投降した霧社セデック族生存者を日本に協力した先住民が襲撃し、216人が殺される“第二霧社事件”も起きています。これについては、警察が襲撃を唆したとの証言もなされているそうです。【ウィキペディアより】
【「台湾の歴史を理解してもらうために撮った」】
きょう、この事件を取り上げたのは、事件を描いた映画「セデック・バレ」が台湾で非常な人気を得ていると同時に、様々な反応も出ているとの報道があったからです。
****抗日映画:中台の評価二分 先住民描写巡り****
日本の台湾統治(1895~1945年)時代の最大の先住民反乱「霧社事件」(1930年)を描いた台湾映画「セデック・バレ」の評価を巡り、中台間で熱い議論が起きている。
映画は、日本の高圧的統治に先住民のセデック族やタイヤル族が、民族の誇りをかけて戦った抗日実話を基に製作され台湾では好評。一方、中国のネット上では先住民の戦い方に、「野蛮」などと酷評する意見が多い。台湾側は「(中国人は)文化レベルが低いから理解できない」などと応酬している。
「セデック・バレ」は、台湾で記録的ヒット作となった日台の絆を描いた恋愛映画「海角七号」の魏徳聖監督が台湾史上最大の7億台湾ドル(約18億円)で製作した。前後編約4時間半の大作だ。台湾では今月9日から前編が上映されている。
映画では山中を自由自在に駆け回る先住民と日本側との戦闘場面がダイナミックに描かれている。中国の抗日映画にありがちな極悪非道な日本人は出てこない。魏監督は「台湾の歴史を理解してもらうために撮った」と政治的な意図を否定し、台湾人には、台湾の歴史を再認識する良い機会となっている。
一方、海外での試写の評判や映画広告を見た中国人がネット上で、先住民の「首狩りの文化」を「野蛮」とし、先住民が日本人を襲う場面について「虐殺だ」などと批判が上がっている。中国での上映で収益を上げたい魏監督にとっては厳しい状況だ。【9月26日 毎日】
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日本の植民地政策や先住民蜂起をどのようにとらえるかという本来の視点とは全く異なりますが、いつも日本に対して厳しい対応を見せる中国ネット世論が“先住民が日本人を襲う場面について「虐殺だ」などと批判が上がっている”といった反応を示していることが、個人的には一番興味深く思えた点です。
中国ネット世論も、台湾問題が絡むと、いつもとは違った反応も出てくるようです。
【「台湾と日本の歴史は理解され難い」】
台湾では、次期総統を争う国民党・馬英九総統や民進党・蔡英文主席も、映画に寄せたコメントを出しています。
また、先住民同士の争いという視点からの批判もあるようです。
****「映画は映画」とクギをさすのだが…【外信コラム】台湾有情****
日本人として「霧社事件」を直視するのはつらい。
日本統治時代の1930年、台湾中部の先住民セデック族による大規模な武装抗日暴動で、山間部の霧社の日本人を男女、児童を問わず約140人を殺害。総督府は警察と軍で武力鎮圧し、セデック族も約700人が死亡した。侮蔑や労役への不満が背景とされるが、日本教育を受け模範的先住民と目された警察官兄弟も決起、自殺したことは深刻さを象徴している。
その重い歴史を描いた台湾映画「セデック・バレ」(真の人)が9日から一般公開され、連日満員だ。
議論も百出し、「事件を知らなかった。感動した」という若者から、「殺戮(さつりく)と戦闘場面が冗長」という年配者、また主人公の頭目モーナ・ルダオに関し「事件前には近隣部族民も多数殺害した。英雄視は誤り」とする別の先住民も。
一方、馬英九総統が「国や部族間の平和には、対等な関係や理性が必要」と自らの対中関係改善の努力をにおわせれば、来年の総統選で馬氏に挑む野党・民主進歩党の蔡英文主席は、先住民のアイデンティティーを守る姿に共感を示す。
ベネチア映画祭で金獅子賞を逃し、「台湾と日本の歴史は理解され難い」とこぼした魏徳聖監督は「映画は映画」とクギをさすのだが。【9月16日 産経】
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【抗日英雄から先住民族アイデンティティーへ】
事件によって日本は統治政策の改革を迫られました。
台湾における事件の位置付けは、日本への抵抗運動の「英雄」という評価から、先住民の“アイデンティティーを賭けた戦い”という評価に変化してきているとか。
“当時の日本社会においては台湾原住民の存在自体が熟知されておらず、雑誌等に興味本位にその風俗などが描かれる程度であった。霧社事件は台湾総督府に対しては強い衝撃を与え、原住民統治の抜本的な改革を迫るものであった。
第二次世界大戦後、日本にかわって中国国民党が台湾を統治するようになると抗日教育が行われるようになった。そのため、霧社事件は日本の圧政に対する英雄的な抵抗運動として高く評価されるようになり、蜂起の指導者たちは「抗日英雄」と称されるようになる。霧社にあった日本人の殉難記念碑は破壊され、蜂起の参加者らを讃える石碑が建てられた。霧社では毎年、霧社事件被害者の遺族らが参加して、犠牲者を追悼する「追思祭典」が開催されている。
1990年代以降、民主化の過程の中で台湾史への再認識がブームとなり原住民文化への再評価が行われるようになると、今度は霧社事件は原住民族のアイデンティティーを賭けた戦いとして位置づけられるようになった。この文脈の中で日本による統治は台湾の近代化に対して一定の役割を果たしたと捉えられるようになった関係か、霧社事件に関しても抗日教育時代ほどには日本人は悪者として描かれない傾向がある。”【ウィキペディア】
【「殺りく場面が多すぎて、日本人を過度に敵視している」】
映画「セデック・バレ」では女優ビビアン・スーが熱演していますが、彼女の祖母が台湾原住民タイヤル族出身ということで、映画製作の資金に自腹を切り、多くのオファーを断って出演したそうです。【6月24日 Record Chinaより】
日本での活動も多いビビアン・スーですので、いろいろ思うところがあるのかも。
映画の海外での評価については、ハリウッドの著名映画雑誌「Variety」は同作を高く評価していますが、ベネチア国際映画祭での評価は厳しいものがあったとの報道もあります。
****抗日映画「セデックバレ」に各国メディア酷評!「残酷」「過度の民族主義」―ベネチア映画祭****
2011年9月2日、ベネチア国際映画祭で初上映された台湾映画「セデックバレ(賽徳克・巴莱)」に各国メディアから不評の声が多くあがっている。醒報が伝えた。(中略)
香港のニュースサイト・鳳凰網は、ビビアン・スーらメインキャストの演技に称賛を送ったものの、「殺りく場面が多すぎて、日本人を過度に敵視している」と残虐性を指摘。「民族主義への偏りが、平凡な作品にしている」と酷評している。
イタリアの映画サイト「my movie」は、歴史を再現した監督の勇敢さを称えつつも、「特殊効果の多用が作品テーマをぶれさせている」と批評。「Cine blog」も残虐な戦闘シーンの多さを「疲れる」と記している。
その他のメディアも、戦いのシーンの残虐さと長さを指摘する声が多く、そのため霧社事件を率いたモーナ・ルダオについても「英雄か否か、判断をつけかねる」という声があがっている。
地元台湾では、残酷な歴史を正面から描いたリアルな作品として、上映前にもかかわらずメディアが大絶賛。映画「レッドクリフ」などで知られ、「セデックバレ」ではプロデューサーに名を列ねるジョン・ウー(呉宇森)監督も、同作に99.5点の高得点をつけている。【9月3日 Record China】
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モナール・ダオというセデック族のリーダーが日本人の警察官とのトラブルで自暴自棄になり勝ち目のない戦いに臨み、罪のない女子供まで巻き込み、挙句の果てには自分たちの種族の女子供まで道ずれにしてしまったというものではないでしょうか。
他のセデック族の者は知らなくても、モナール・ダオという人は以前に日本に行ったことがあり、彼我の力の差を十分に知っていた。以前から他の部族との関係が悪く、自分たちに組することのないこともわかっていた。勇敢というよりも無謀と言うほうが正しいのではないかと感じました。
これに対し日本側の対応も鎮圧というよりも、復讐というほうが正しい野蛮なものだと感じました。
これは日本人にとっても、台湾の人にとっても誇れる歴史ではありません。歴史を正当に評価しないことは危険なことです。
今回の映画は見ていませんが、ストーリーを面白くするために脚色されてないことを期待しています。
招待して共同制作にしたのか?彼は台湾出身でもないから映画の宣伝利用に価値をみいだしたのか?
あまりにも残虐シーンが多すぎて学生、子供には見せられない程度の映画である。馬英九氏が既に選挙宣伝にしようしている。高金素梅議員は直ぐ飛びついて
宣伝映画として利用する憂い十分である。過剰反応はあったが、日本軍が派遣されないと平定できない蜂起で全国に拡散するのを直ぐに止めたいのは行政の当然のうごきであった。初めには、134名の内地人が婦女子を含めて切り殺された側は内地人であって原告はタイヤル族であったことを確認して鑑賞してほしい。
製作途中で資金難で苦しんでいた魏徳聖に多くの資金がつぎ込まれたようだ。
尖閣でチョッカイを仕掛けている支那人には今回の日本公開は絶好の反日行動と思われる。多くの興行会社が出だししなかった作品を日本公開する勇気を売国行為として讃えよう。